4話
次の日の朝、学校に着くと既に亜希が教室で待っていた。
「それで、昨日の電話のことだけど、徳重さんのことを聞いたことに大きな理由は無いわ。ただ、徳重さんは男子に大人気だし、諒が好きでもおかしくないと思っただけよ。」
「俺が徳重さんのことが好きだと、なんかあるのか?」
この質問で、亜希が本当に徳重さんのことが好きなのかを探ろうとした。
「それは、その、い、今は上手く言えないけど、いつかちゃんと言うわ。」
亜希の顔が赤くなる。亜希のこの顔、そしてこの言いづらいような言い方。どう考えても恋する乙女に違いない。まさか、自分の恋敵に幼馴染がなるとは思ってもいなかった。
「そ、そうなんだ。いやー亜希に他の女子のことをどう思ってるか聞かれるのは初めてだったから、気になったんだよね。」
「私もこんな話は、みっちゃん以外には言ったこと無いわよ。」
みっちゃんというのは、亜希の友人の岩塚美咲のことだろう。
「そ、そうか。もうすぐ、ホームルームも始まるし、席戻るわ。」
なんか、気まずい空気になってしまったので、そそくさと自分の席に戻った。ちょうど良いタイミングで担任の羽黒先生が来る。
「はい、座ってー。ホームルーム始めるよ。今日の連絡事項は、皆さんお待ちかねの中間テストの結果を返しまーす。それじゃあ、番号順に並んでー。」
「じゃあ次、上社。」
名前を呼ばれ、席を立つ。
「文系科目の成績はもう少し、どうにかならなかったの?」
「ならないです。」
それだけ答えて、テスト結果を貰った。成績を見ると、数Ⅱ、数Bはどちらも2位で、化学は1位だった。しかし、国語、英語系は補修を受けないギリギリの点数だった。
「次、徳重さん。」
「はい!」
「今回もよく頑張ったね。この調子でこれからも頑張って。」
「分かりました。」
すぐに徳重さんの周りに友人が集まってくる。
「玲奈、今回はどうだった。」
「3位だったー。次はもっと頑張ろうかな。」
「十分すぎでしょ!」
徳重さんは、顔や性格だけでなく、頭も良い。運動もできるし、欠点らしい欠点が無い。
それに比べて・・・
「原。」
「はいはい。」
「あなたは何科目補修を受けるつもりなの?」
「完全制覇しようと思ったんですけど、俺の実力では5つが限界でした。ははは。」
「笑いごとじゃないの!もっと勉強しなさい!」
アニメを見るのに忙しいという理由で、全く勉強しない将大は、案の定、酷いテスト結果だったようだ。
「伏見さん。」
「はい。」
「伏見さんの陸上の成績が優秀なのは私も知ってるけど、勉強もある程度はやらないといけないからね。」
「頑張ります。」
亜希は走幅跳で県有数の実力を誇っていて、今年のインターハイ予選のために日々練習をしている。だが、その反動か成績は芳しくないようだ。
「諒は成績どうだった?」
将大が聞きにきた。
「いつも通りだよ。言語というものがこの世に無かったら、1位だったかも。」
「極論すぎだろ。今回こそ、古典で諒に勝つつもりだったのになぁ。」
そんな軽口を叩いていると、1限目の授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。1限目は古典で、俺が今回最低点だった科目だ。とは言え、全く好きになれないので話を聞こうとは思えない。
先生は今日から梅雨入りだからか五月雨の和歌の話をしている。梅雨と言えば、雨が降っている場合、ストーカーはどうするのだろう?傘をさすと見つかってしまうだろうから、雨合羽を使うのだろうか?
そんな無駄なことを考えているうちに授業は終わった。その後の授業も適当に話を聞き流し、放課後となった。
母が仕事で帰りが遅いことから、夕食も大体俺が用意することになっている。そのため、帰宅部だ。家に帰る前に夕飯の買い出しに向かうこととした。
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