3話
-side 徳重玲奈-
私、徳重玲奈はストーカーだ。今は学校一の美少女などと周りにもてはやされているが、実際は好きな人のことを知るためにストーカーまがいのことをしているので、こんなことが校内の生徒にバレたら私の評価は地の底に落ちるだろう。
そんなリスクを背負ってもなお、私は彼-上社諒くんのことが好きだ。
私が上社くんに初めて会ったのは、植大高校の入試試験の日だ。筆記試験を終え、面接試験が始まった。ただ、面接官を務める先生の顔が怖く、私はいつもよりもさらに緊張していた。
「では、徳重さん。あなたを食べ物に例えると何ですか?」
部活のことや高校でしたいことなどを聞かれると思っていた私は、全く想定していない質問に頭が真っ白になった。
何か答えないといけない。しかし、何を喋ればいいのかも分からない。私はパニックになりかけていたそんな時だった。
「あの、先に私から発言しても良いでしょうか?」
隣の席に座っていた男子がその無言の空間を切り開いたのだ。
「じゃあ、上社くんからお願いしようかな。」
「はい、ありがとうございます。私を食べものに例えると豆腐です。豆腐と聞くと地味に感じるかもしれませんが、調理法によって主役にも脇役にもなる食材です。私は周囲の人たちに上手く合わせて行動を起こすのが得意だと考えており、その点から自分自身は豆腐に似ていると思います。」
その男子は話し終えると、私に一瞬、視線を送ってきたような気がした。自身の合格が掛かっているこの状況で、人を助けようとするこの人はなんて良い人なんだろう。助けてくれたこの人の為にも頑張りたい。私はその一心で、その後の面接を乗り切った。
そして入学式で、私は上社くんに再会した。残念ながら同じクラスになることはできなかったが、入学式の間、ずっと彼のことを見つめていたら、目が合った気がした。向こうも私のことを覚えていてくれたのかもしれない。
それからというもの、私は彼に夢中だった。彼のことを知る為に、ストーカー行為までするようになった。2年になり、念願の同じクラスになることができたのだが、まだちゃんと話すには至ってない。なんとかしてもっと仲良くなれればよいのだけど。
今日は部屋に置く新しいリードディフューザーを買うつもりだったのだけど、誰かが追ってきているような気がする。怖くなった私はスマートフォンのカメラを使って、自分の後ろを撮影する。
撮った写真を確認してみると、そこには同じクラスの伏見さんが映っていた。私が面識の無い知らないおじさんが映っていないことには安心した。伏見さんと帰り道がたまたま同じという可能性もあるので、安易にストーカーと疑うのは良くない。私は歩き出し、雑貨屋へと向かうことにした。
伏見さんの動きは明らかに私の歩く速度に合わせているようで、付かず離れずの距離を維持している。もしかしたら目的地は一緒ではあるが、あまり学校では話したことの無い私と、学外で出会うのが気まずいという可能性もある。
その後、雑貨屋に辿り着くと、私の予想通り、伏見さんも入店してきた。私はお目当てのリードディフューザーを買いつつ、他にも良さそうなものは無いか店内を物色していた。あまり広い店では無いのに、伏見さんは上手く私を避けるようにしているようだった。もしかしたら、嫌われているのかもしれない。伏見さんは上社くんの幼馴染らしいし、彼女に嫌われているとしたら、彼女経由で上社くんに勝手に悪口を言われているのかもしれない。そうなっては困るので、伏見さんに私のことをどう思っているのかを聞こう。そう思った直後、雑貨屋の扉が再び開かれる音がした。ちょうど、そのタイミングで彼女は出ていってしまったのだろうか?
すぐに、選んだものを買って外に出たが、彼女の姿は既に無かった。まぁ私のことをどう思っているかは、明日聞いてみることにしよう。




