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ストーカーとらいあんぐる!  作者: 高畠莞爾
2/10

2話

「徳重さん?まぁ可愛いとは思うよ。」


「好きなの?好きじゃないの?どっち!?」


 僕のあいまいな答えに納得しなかった亜希が問い詰めてくる。


「同じクラスだけど、ほとんど喋ったこと無いし、雲の上の存在って感じだから、好きとかは無いかな。」


 同じクラスになって2ヶ月くらい経つが、授業のグループワークで少し話したくらいの記憶しか無い。


「じゃあなんで、あの女は・・・。まぁいいわ、それじゃあ。」


 そう言って亜希は走って教室に戻っていった。よく分からないが、話は終わったようだ。チャイムの音が聞こえ、俺も教室へと向かった。


「中学校までだともしかしたら、この原子の周りに電子が惑星のように存在するというラザフォードの原子模型で習っているかも知れないが、実際にはそうでは無くて、このボーアの原子模型こそが正しいということだな。」


 化学は嫌いではないが、この先生の話し方はわざと難しく感じさせるように喋っているような気がしてくる。あまりに退屈な授業に寝ているクラスメイトもちらちら見受けられるが、徳重さんは難しい顔をしながらも何とか理解しようと真面目に授業を受けていた。


 なぜ、俺がそんなに彼女を気にしているかというと、さっき、亜希の前では何とも思っていないようなことを言ったが、本当は徳重さんのことが気になっているからだ。というよりはむしろ、入学式の日に一目惚れをしてから、ずっと彼女のことを目で追っている。


 ただ、俺なんかが告白しても振られることは目に見えているため、もう少し仲良くなってからにしよう。そんな言い訳をもう一年も続けている。


 授業が終わり、掃除をして、ホームルームで担任が諸連絡を済ませ、生徒たちは解散する。部活がある生徒は活動場所に、そうでない生徒は教室で屯したり、そのまま帰宅したりとそれぞれ散って行く。俺はすぐには帰らず、亜希の動きを伺っていた。


 俺が亜希を追うようになったのは、つい最近のことだ。亜希とは家も近く、子どもの頃から遊んでいたので、当然家の場所も知っている。明らかに自分の家とは違う方角に帰っていく彼女を見て、声をかけようとしたのだが、そこで彼女の挙動がおかしいことに気づいた。


 あまりにも周りの目を気にしているのだ。


 まるで不審者のように見えた俺は、気になって亜希の視線の先を探した。なんと、そこには学校一の美少女、徳重さんがいたのだ。亜希の動きはどう考えてもストーカーとしか思えない。だが、亜希がどうして徳重さんのことをストーカーしているのだろうか?そんなもの理由は一つしか無いだろう。



 亜希は徳重さんのことが好きなのかもしれない。



 よく考えてみれば、亜希が俺以外の男子と仲良くしているところを見たことが無いし、女の子が好きなのかもしれない。だが、いくら好きだとは言え、ストーカー行為は許されるものではない。亜希が徳重さんに迷惑をかけることのないように、幼馴染として、見張ることにしたのだ。


 それ以来、俺は徳重さんのストーカーをしている亜希をストーキングしている。亜希が徳重さんをストーキングするのは、亜希の部活が休みの月曜日と決まっている。それゆえ、毎週月曜日は亜希にバレないように、亜希のことを追っている。

 

 徳重さんは帰り道にある雑貨屋に寄っていくようだが、個人経営のあまり大きくはない店なので、中まで付いていくとなると、バレてしまう危険性が高い。女子の買い物は長いと言うし、買い物がいつ終わるかも分からないから、亜希も今日のところは引き返すかと思われたが、亜希は見つかるリスクを恐れず、雑貨屋へと向かって行ったのだ。


 それならば俺も、とは流石にならなかった。亜希は徳重さんに見つからなければいいだけだが、俺は亜希と徳重さんの両方に見つかってはいけない為、難易度が二倍になっている。しかし、俺の目の届かない店内で亜希が徳重さんに良からぬことをしているかもしれない。どうにかして、中の様子を覗けないだろうか?


 いや、待て。まるで考えがガチのストーカーじゃないか。俺は徳重さんが危険な目に会わないようにすればよいのだ。つまり、亜希を店外へと誘導させればよい。


 そこで俺は、亜希に電話を掛ける。店内で通話には出ないだろうし、出たとしたら、徳重さんにバレるだろう。俺の目論見通り、亜希は店から出てきた。


「もしもし、諒?あんたから電話掛けてくるなんて珍しいわね。何かあったの?」


 今現在、亜希が何をしていたかを聞きたいが、まだその時ではないだろう。


「なんか今日、いきなり徳重さんのこと聞いてきたじゃん?なんで聞いたのか気になったんだよ。」


 亜希が徳重さんのことをどれくらい好きなのか確かめることにした。


「別に今じゃなくてもいいでしょ!」

「なんで、今じゃ駄目なんだ?今日は部活休みだろ?」


 あくまでしらを切って聞いてみた。


「部活は休みでも、色々やることはあるの!とにかく、私は忙しいからまた明日ね!」


 電話は切られてしまったが、俺との電話に気を取られて、店内から徳重さんが出てくるのに亜希は気付かなかったようだ。亜希は俺との通話が終わり、再び店内に入っていくが、しばらくしてもう徳重さんはいないことに気付き、来た道を折り返していく。俺も亜希に続いて、自分の家に帰ることにした。


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