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アルーンの養子

アルーンが道を歩いていると、

「貴方がアルーン大公殿下ですか?」

小さな子供に尋ねられた。

「大公殿下などというほどのものではないが、私がアルーンだが?」

「これを…」

そう言われ手紙らしきものを渡されたアルーンは、その手紙を読んだ。

「何々、アルーン大公殿下、この子をどうかよろしくお願いします…、えっ!? どういうこと!?」

呆気にとられたアルーン。

「君…、両親は?」

手紙を渡してきた子に聞くと、頭を横に振って何も言おうとしない…。

「そうか…、まぁ言いたくないんじゃ仕方がない、しかしよろしくお願いしますと言われても…」

ジッーっとアルーンを見ている子供。

「名前はなんというのかね?」

「ユーハンです」

「ユーハンか、ところでお腹は空いてないか? 私はご飯がまだだったものでね、食べにいくところだったんだ」

ご飯の誘いに頷くユーハン。


ご飯を食べにきた二人は飯店に入っていった。

「おや! 殿下! きていただけて光栄です!」

「いやいや、ここは美味しいからね、つい足を運んでしまうのだよ」

飯店の主人と話しながら席につく二人。

「さぁ、なんでも頼むといい、幸い食べるお金には困っていないからね」

そうユーハンに言うと一緒に料理を注文するアルーン。

しばらくして料理が運ばれてきて、料理を食べはじめる二人。

「しかしどうして手紙の人は私に君を託すなどと言ったのだろうか?」

疑問を口に出すアルーン。

「わかりません、でも僕を堂々たる英雄に預けるべきだといつも両親は言ってました…」

「というとこの手紙の主は両親なのかい?」

「…はい、もう両親はこの世にいませんが…」

暗い顔をしているユーハン、

「そうか…、両親には何があったのか聞いてもいいかな?」

「殺されました、誰にかはわかりません、僕が家に帰ってきた時には二人とももう死んでいたんです…、机にはあの手紙があるだけで…」

涙を流すユーハン、

「警察や役人はなんと?」

「手は尽くすと言われたけど、証拠が何もないみたいで…」

「傷などに特徴はなかったのかい?」

「なかったみたいです…、あれば下手人の追跡に使えたみたいですが」

そうか、とアルーンはつぶやいて下を向いた。

「とにかく私の家に来るといい、君の面倒を見るくらいはできるよ」

「はい、ご厚意に感謝します」

ユーハンはそう言って頭を下げた。


食事を済ませて、大公府についた二人。

「ただいまぁ! ソフィー、延瑛、いるかい?」

「「あなた、おかえりなさい」」

ソフィアと延瑛はアルーンの妻達である、二人ともアルーンの王国軍人時代からついてきていた。

「あら? その可愛い子は誰?」

ソフィアが聞いてきた。

「あぁ、道を歩いていたらちょっとね」

そう言うと、延瑛が、

「何か犯罪を犯してきたのでは!?」

疑ってきたが、頭を振ったアルーン。

「違うよ、この子の両親からこの子を託されたのだ、本当だよ」

「大公殿下、このお二人は奥方様ですか」

「あぁ、そうだ、私の妻のソフィアと延瑛だ」

「大公殿下の奥方様はカルディナ陛下ではないのですか?」

ズバリと聞いてくるユーハン。

「あ、あぁ! 確かにカルディナ陛下でもあるよ、ただこの二人はそれより前から私の妻だったものたちだ」

急いで取り繕うアルーン。

「……こんなに奥方様がいて、殿下は大変ではないのですか?」

「大変というと?」

「話し相手とか…、私の両親はお互い大変だったみたいですから…」

「うーん、そうだね、大変じゃないといったら嘘になるが、私は妻たちといれて楽しいよ」

お互い顔を見合わせているアルーンとソフィア達。

「そうですか、失礼いたしました」

「あらためて初めまして、おちびちゃん、お名前はなんていうの?」

ソフィアが聞くと、

「ユーハンと申します、よろしくお願いします」

しっかり礼をして返したのでアルーンは驚いた。

礼儀正しい子だったのだなと認識を改めた。

「それでよければしばらく二人に面倒を見てもらいたいのだが、いいかな?」

そう二人に言ったアルーン。

「わかったわ、そういうことであれば私たちが面倒を見ます、不憫な子ですもんね」

状況を把握したソフィアが言った。

「ありがとう、助かるよ」

そうしてユーハンはソフィアと延瑛が主に面倒を見ることになった。


面倒を見てもらって数日すると、ソフィアがアルーンに話しかけてきた。

「貴方が拾ってきたユーハンだけど、あの子勉強凄いわよ、まだ小学生なのに高校生レベルの問題を解いてるわ…」

え!?とアルーンが驚く、そこへ続いて延瑛が、

「勉強も凄いの!? 私は今日武芸が凄いって話をするつもりだったのに…」

「どういうことだい?」

アルーンが焦って聞くと、

「楊家槍法だけど、一度見ただけで真似したのよ、流石に真髄までは真似できてはいないけど、形を真似する力は大したものだったわ」

武芸の才まであることになおも驚くアルーン。

話を聞いていると、その当事者のユーハンが入ってきた。

「失礼します、ソフィア様はおりますか?」

「えぇ、ここにいるわ」

ユーハンは本をソフィアに渡して、

「これも全部解き終わりましたので、お渡しにきました、採点をお願いいたします」

「わかったわ、貴方は本当に勉強ができるのね、びっくりしたわ」

「いえいえ、これくらい大したことありません」

謙虚なユーハンだが、それを見ていたアルーンは

「ユーハン、あとで延瑛と中庭にきてくれるかい? 見たいものがあるんだ」

そう言ってユーハンを下がらせた。

そして中庭に行くとユーハンと延瑛が待っていた。

「二人ともきていたか、延瑛が言ったことが本当かどうか知りたくてね、ユーハン、楊家槍法を見せてくれるかい?」

そう言われ驚いたユーハンだったが、

「わかりました、見様見真似ですがやってみます」

第一手から繰り出し始めると、はたして延瑛が覚えている槍法にそっくりだった。

「よし、やめていい、本当に一度見ただけでここまで覚えたのかい?」

聞くと、ユーハンは、

「はい、一度だけ見せていただきました、どこか違う部分があったでしょうか?」

「いや、完璧だったよ」

よかったと胸を撫で下ろしているユーハンだが、アルーンは戦慄していた、勉強はともかく武芸において型を覚えるというのは大変な作業だ、それをただ一度見ただけで全て覚えてしまうとは、末恐ろしい子だと認識を改めたアルーン。

それから数日アルーンは注意してユーハンを見ていたが、とにかく手がかからない子のようだった、どの相手にも礼儀正しく、召使いにさえ礼儀正しく応対するほどだった。

おかげで誰に聞いてもユーハンの評判は上々であった。

「ユーハンのことだけど、私あの子を養子にしようと思うの」

そう言ったのはソフィアであった。

「あぁ、いいんじゃないか? 君らしいけど、どうしたんだい? 改めて私に言うなんて」

ソフィアは自分が子供ができない体が故に、子供に憧れを抱いていた。

そして恵まれない子を集めて自分の養子にして、孤児院のようなことをしていたので、アルーンからすると自分が養父のような存在になるというのはよくあることであった。

「あの子はちょっと他の子達より特別だから、貴方の意見が聞きたかったの」

今まで養子にしてきた子たちに比べて確かに特別であることは明白であった。

「そうだなぁ、私たちにできることといえば名士にユーハンをお願いすることぐらいだろう、それがあの子の才能を一番伸ばしてやれるんじゃないかな?」

「そうかもしれないけど…、どこか当てはあるの?」

ソフィアに言われ、悩むアルーン。

「う〜ん、当てかぁ…、恐れ多いことだが、チョモランマ大師はどうかな?」

「えぇっ!? 大丈夫なの!?」

自分が想像してる以上の名士を出されびっくりしているソフィア。

「大師には命を救われたご恩があるし、そのせいで恐らく修行を邪魔してしまった、賢いユーハンならよく仕えるだろうし、ご恩返しにも適任じゃないかな?」

「それはそうだけど…、でも肝心の許可はとれるのかしら?」

怪しい目で見られるアルーン。

「頼んでみなければわからないなぁ…、もしダメなら他の方を探そう、それに養子のことだってまだユーハンに聞いてないからわからないしな」

「そうね、まずは折を見てユーハンに聞いてみるわ」

翌日、ソフィアはユーハンに会いにいった。


「ねぇユーハン、貴方私の子供にならない?」

ユーハンは驚いていたが、あっけらかんとしているソフィア。

「あら? 嫌かしら?」

「嫌じゃないですが…」

そう言うとソフィアは良かったというような顔をして、

「じゃあ決まりね、これからは私とアルーンが貴方の両親よ」

ユーハンにウインクしてみせるソフィア。

「意外と強引なんですね」

「そうよ、それに貴方には面白い未来が待っているわよ」

「面白い未来ってなんですか?」

聞いても秘密とだけ言われて答えてくれないソフィア。

「あとでアルーンが教えてくれるわ」

そう最後に言ったソフィア。



「父上、これからどこにいくのですか?」

養子であるユーハンは養父であるアルーンに聞いた。

「ユーハン、お前は本当に賢いし、武芸の才能もあり、徳もある」

「私が養父としてできることはひとつだけだ、お前をチョモランマ大師に弟子入りさせることだ」

ユーハンはええっ!?と驚いていた。

「あのチョモランマ大師に会いに行くのですか!?」

「あぁ、そうだ、ボクロン寺まで行って、チョモランマ大師にお目にかかりにいく」

アルーンはそういうと、ユーハンの手を引いてボクロン寺へ向かった。

道中、アルーンはユーハンに様々な昔話を言って聞かせた、自分は共和国人であり、共和国軍人として帝国と戦ったこと、親友との約束を守り王国の軍人になり、帝国と戦ったこと、そして今は帝国の大公になっていること、旅路は険しいものであったが、ユーハンは興味津々で聞いていた。

「ユーハン、チョモランマ大師には私は縁に恵まれて一度だけ拝謁したことがある、それに命まで救ってもらったのだ、粗相のないようにな」

「わかりました父上、気をつけます!」

「まぁ、尋ねたところで大師が会ってくれるかどうかすら実はわからんのだがな」

はっはっはと、笑っているアルーンに、チョモランマ大師に会うのは見切り発車だと気づいたユーハンはジト目でアルーンを見ていた。

「父上、本当に大丈夫なんですか?」

「きっと大丈夫さ! いざとなったら会ってくれるまで座り込むぞ!ユーハン!」

そうしてボクロン寺についたところ、入り口には見張りの者がいたのでアルーンは話しかけた。

「もしもし、ここがあのボクロン寺ですかな? チョモランマ大師にお会いしたいのですが」

「大師は修行中ですのでお会いになれません」

その一点張りで、見張りのものにあっさり追い払われるアルーンである。

着ている服が悪いのもあるが、アルーン自身はどこぞの農夫にしか見えないのであり、見張りのものも特に取り合わないのであった。

ボクロン寺を下りて、近所の飯店で作戦会議をするアルーンとユーハン。

「うーむ、どうしたものか…」

「父上、身分を証明するものなどはないのですか?」

そうユーハンが聞くと、アルーンはそうだそうだと

「確か私が大公だとわかる印章があったはずだ、どれどれ、おぉあったあった」

荷物を漁っているとようやっと見つけたアルーン、先に見せておけばいいのにと思ったがそれはあくまで言わないユーハンであった。

「これを見せればおそらく会ってくれるだろう! よし、もう一度ボクロン寺へ行くぞ!」

ボクロン寺へ再度向かったアルーンとユーハン。

そして見張りのものがいたのだが呆れているのか、

「ですから大師は修行中ですのでお会いになれません!」

語気が強くなっている見張り。

しかしアルーンが、

「ちょっと待ってくれ、これを大師に見せて欲しい」

と、印章を見張りのものに預けた。

そこでやっと見張りも目の前にいる人物が、人角の人物だということに気づき、取り合うことにしたのであった。

そうして待っていると見張りのものがバタバタと帰ってきて、

「大師がお会いになるそうです、お通りください」

そう言って通してくれることになった。

アルーンはどこかユーハンに自慢げな顔をしたが、特に取り合わないユーハンであった。

ちょっと進んでいくと広間があり、そこでアルーンはユーハンを立ち止まらせた、

「下がれ! ユーハン!」

急に二人の僧侶がアルーンとユーハンに対し、手を出してきた。

咄嗟のことでユーハンを下がらせ、二人の僧侶に手を合わせた。

「むむっ!」

手を合わせたことで、お互いの力量がわかった両者達は一旦手を収め、一人の僧侶が声を出した。

「その内功、真に玄武功ですな、本物のアルーン大公でしたか」

二人の僧侶は非礼を詫び、アルーンに挨拶をした。

「いやはや、お二方とも強い内力をお持ちだ、さすがはボクロン寺、天下一のお寺なだけある」

パンパンと手を払ったアルーンは下がらせたユーハンに手招きし、敵ではないことを伝えた。

「父上、大丈夫ですか?」

そう聞くユーハンだが、

「あぁ、お二方とも手加減をしてくれたのでね、助かったよ」

アルーンは軽く言ったが、

「ご謙遜を、あのままやっていれば我々などお相手になりますまい」

二人の僧侶も謙遜していた。

「それはそうとチョモランマ大師にはお会いできるのかな?」

二人の僧侶に尋ねると頷き、

「偽物ではないと分かった以上、お通しするよう仰せ使っております」

そう言われたのでさらに奥に進むことを許可された二人であった。

奥に進んでいくと、また広間がありそこに一人の僧侶が座禅を組んでいたが、二人がくると立ち上がり二人を迎えた。

「アルーン殿、お久しぶりですね」

柔らかい笑みを湛え、チョモランマ大師がそこにはいた。

「おぉ、チョモランマ大師、この度は急に訪ねて申し訳ない」

アルーンは拝礼をするが、すっとその手をとったチョモランマ大師。

「礼は無用です、この度はどうかしましたか?」

単刀直入に尋ねてきた大師に対して、アルーンは、

「実は大師にお願いがあって参りました」

改まったアルーン。

「どうかこの子を弟子にしてやってくれませんか?」

アルーンの後ろにすっといたユーハンを前にだした。

「初めまして、お初にお目にかかります、ユーハンと申します」

アルーンの拝礼より綺麗に美しく拝礼するユーハン。

「ほうほう、これは、お立ちなさい」

大師は何かを感じ取ったようにユーハンに対して言った。

「アルーン殿とはどういったご関係かな?」

そう聞くと、

「私の養父です、私は両親を何者かに殺され、一人になったところを父上に拾われました」

「南無阿弥陀仏、可哀想に」

「アルーン殿は、なぜ私にこの子を託そうと?」

アルーンに尋ねるチョモランマ大師。

「この子は見ればわかりますが、勉学武芸共に秀でております、そこで大師にみてもらえればと思いやってまいりました」

チョモランマ大師は、

「武芸は何かできますか?」

ユーハンに尋ねると、

「父上から青龍一六掌の型だけ学びました」

そう言ったので、チョモランマ大師は見せてみなさいと促した。

ユーハンは一手目から型をみせ始めたところ、

チョモランマ大師は笑っていた。

「型は美しい、素晴らしい才能を持っている」

武芸はもう良いと言い、今度は大師から質問が投げかけられた。

「この世には数多の英雄がいるとはおもいますが、誰が英雄と言えるであろうか?」

ユーハンは少しも考えず、

「共和国ではカーズオ元帥、帝国ではグリゴリー皇帝、カルディナ皇帝、それと私の養父です、ここまでの旅路にて過去の話を聞かせていただきましたが、成してきたことは全て英雄たるに相応しいものであったと思います」

ユーハンはアルーンから聞いた話を取り出し、軍においては軍紀を厳しく律していたこと、内政においては民を慈しんでいたことなどを、本人は俗っぽいことを置いておいて話していた。

アルーンはまたも赤面していたが、チョモランマ大師はそれをニコニコと聞きながら、

「ユーハンといいましたね、そなたの見識は素晴らしいものです」

そう褒められてユーハンも嬉しくなって顔が緩みそうになったが、引き締め直して大師にしっかりと向いた。

「アルーン殿、素晴らしい子を養子にお持ちになった、自分の側においておかなくてよいのですか?」

大師に言われると、

「この子の才は帝国や共和国など国などにとらわれるべきものではありません、天下一と名高い大師の下で修行すれば将来大成すると信じております」

アルーンはここ一番でキリッとした顔を見せ、チョモランマ大師に言った。

「それとこれは私の大師への罪滅ぼしでもあります、私の治療で大師は修行を中断せざるを得なかったでしょう、そのせいで寿命もその分縮んでしまったはず、大変申し訳なく思っております」

アルーンは悲しい顔で言うと、大師は、

「いえいえ、ちょうどよかったのです修行を中断したことで、こうしてまたアルーン殿とお会いでき、ユーハン殿との縁もできた、全ては縁なのです」

「ユーハン殿、これからこのボクロン寺に入門することになるがよろしいか?」

ユーハンはアルーンを見て、

「入門させていただけるのは光栄ですが、父上とはもう会えないのでしょうか?」

心配そうなユーハンであるが、

「心配ですか、そうでしょうね、今生の別れになるかどうかはまたそれも縁でしょう、ボクロン派の修行は辛く険しいものです、情を捨てるのもまた修行の一つです」

諭すチョモランマ大師。

「大師、私は父上のように衆生を助ける存在になりたいのです、それができないのであれば、名誉あるボクロン派に入門しても私にとっては意味がないのです」

そう訴えるユーハン。

「その年で衆生を重んじるとは…、南無阿弥陀仏、いいでしょう、そなたがここで学び、それを衆生に生かすのであれば、我がボクロン派も名誉なことです」

その言葉を聞いて安心したユーハン。

「そなたの才を見込んで、拙僧の弟子になりなさい」

直弟子の誘いに歓喜しているアルーン。

「よかったな! ユーハン! 師匠に挨拶しなさい!」

「はい! ユーハンが師匠に挨拶いたします」

叩頭するユーハン、それを受けるチョモランマ大師。

「ユーハン、しっかりやれよ」

そう言ってユーハンの肩を軽く叩いたアルーン。

「ありがとうございます、父上」

「まぁ、お前のことだ、私などいなくてもきっと大師の弟子になれただろう、そんな気がするよ」

はっはと笑うアルーン。

「じゃあ私は行くよ、修行頑張れよ」

大師と二人で見送るユーハン。

「父上、お元気で」

養父に対して叩頭して見送るユーハン。


そうして帰っていったアルーンの後で、

「早速ですが、ユーハン、拙僧と旅に出ましょうか」

ボクロン寺について、弟子入りしたと思いきや、また旅にでると聞いてびっくりしたユーハン。

「実は元々旅に出る予定だったのです、アルーン殿を治療したのを機会に修行を中断し、世を見て回る用意をしておりました、これも仏の導きでしょう」

そういうことであればとユーハン。

「必要なことは旅をしながら教えます、どうですか? ついてきますか?」

「願ってもないことです、師匠に直接教えていただけるのであればついていきます」

そういってまた旅支度を整えるユーハン。

チョモランマ大師はアルーンの治療により修行を中断したが、そのことにより数十歳の寿命が縮んでしまった。

そんなことは噯にも出さないチョモランマ大師であるが、ユーハンと出会えたことにより、元々無駄ではなかったと思っていたチョモランマ大師であったが、何よりこの縁が収穫であったと悟った大師である。


「準備は出来ましたか?」

大師が尋ねると、ユーハンは、

「はい! 師匠、出来ました!」

元気よく返事をしたユーハン。

「それでは、行きましょうか、あとはお願いしますね」

そう残りのもの達に言い伝えたチョモランマ大師。

「いってらっしゃいませ」

残りのものは皆見送りにきていた。

「いってきまーす!」

ユーハンは見送りに挨拶し、チョモランマ大師のあとをトコトコとついていった。

そうして一人の僧侶と小坊主の旅が始まった。


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