67.王家の秘密
「リビア。会いたかったわ。」
「おばあ様私もです。」
二人は王太子妃の私室で抱き合った。
しばらく抱き締め合った後彼女はおばあ様に生まれた子供を見せた。
「まあすてきな黒髪に綺麗な瞳ね。」
なんでか生まれた子供は銀色ではなく今の私と同じ黒髪で生まれた。
そのせいか魔力が通常の子供よりかなり強く今も部屋に魔力制御用の結界を張ってお腹が空いて泣いた時などに部屋が壊れないようにしていた。
そんな規格外の赤ん坊を抱いておばあ様はご満悦だ。
「まあまあ顔はダン王太子に似てるけど口元や髪はあなた似ね。」
「はい、ありがとうございます。」
「そう言えばおばあ様。養子縁組をしたと聞いたのですが?」
「まあ、さすがに耳が早いわね。戦争孤児なのよ。それで引き取ったの。」
おばあ様はそれだけだと言うが少し気になった。
とは言え今はそれ以上何を聞いても答えてくれなさそうな雰囲気なのでその話はそこで終えた。
しばらく二人で話していると王妃様がやってきた。
私は慌てて上座の席を空けた。
王妃様は頷くとそのままおばあ様に手を差し出した。
「シルビア様。お久しぶりです。」
「まあ、本当に久しぶりね。」
二人はお互いの手を取り合って昔を懐かしんでいる。
どうやら昔からの知り合いだったようだ。
王妃様に私付けの侍女になったばかりの一花がすぐにお茶を出した。
王妃様はそのお茶を飲みながらいきなり”王家の秘密”について話し出した。
おいおい人払いしてないのにいいのか?
心の中でだけ突っ込んでそっと一花に目配せした。
一花はサッとお茶菓子をその場に置くと他の侍女を連れてそこからいなくなった。
さすが一花。
侍女になったばかりなのにもう他の侍女たちを掌握している。
私は一応三人がいる部屋の周囲に防音結界を張った。
王妃様はそれに気がついて満足そうに頷いている。
どうやら私は試されていたようだ。
おばあ様をみると彼女も満足そうに微笑んでいた。
本当ある意味怖い人たちだ。
私はそんな二人の態度にホッと息を吐いてやっと王妃様の話に耳を傾けた。
彼女の話によるとストロング国の王家には強い獣人の血が混じっているらしい。
そのためストロング国の王家につらなるものはもふもふ病いや違う同じ獣人に強く惹かれるようだ。
それを回避する為に王妃様は日頃から色々試し見ているという苦労話をされた。
そこまで話を聞いた所で彼女はいきなり私の手を強く握ると私が所持している黒いバニーガールの服を譲ってほしいと言い出した。
「あれをですか?」
「ええ、もう息子から聞いてあれしかないと思ったの。」
「あれ?」
なんでかおばあ様まで興味を持たれた。
そう言えば銀獅子様も王家の血に連なるかただったっけ。
でも譲ると言っても二人とも私と体型が違いけっこう胸が・・・。
あれかなりぴったりしているし、さすがに私のものでは胸が窮屈すぎるだろう。
そう思った私は彼女たちに同じものを作って贈ると話した。
「まあ本当。それならなるべく早くお願いね。」
王妃様はそう言うとすぐに部屋から出て行ってしまった。
どうやらここにはバニーガールの服だけが必要で来たらしい。
まあお忙しい方だから仕方ないんだろうけど。
私はそれから少しおばあ様とお話して彼女たちが帰った後戻って来た一花に市井に行って例のバニーガールの洋服を二着大至急作って貰うように言付けた。
それにしてもあの二人のバニー姿か。
ある意味違う悩殺力がある気がしたが私は何も言わなかった。
数日後出来上がった例のものをさっそく二人に贈った。
なぜか贈ったおばあ様と王妃様からは数日間なんの音沙汰もなかった。
やっぱり気に入らなかったのだろうか?
そう不安に思っていたらなぜかアレン様と王様から直々に金貨がぎっしり詰まった袋が届けられた。
袋についていたカードには”いい仕事だ。これからも頼む。”と書かれていた。
はて私は彼らに何かしただろうか?
首を傾げてカードを見ていたが何をよろしく頼まれたのか皆目見当がつかなかった。
横からそのカードを見たダンはニヤつきながらフムフムと頷いていた。
おい一人で頷いてないで教えなさい。
ダンの話によるとあのバニーガール服がよかったらしい。
とは言え他のものといきなり言われても思いつかなかったので耳と尻尾を猫と犬にしたものを作って後日二人に贈ってみた。
それも良かったようでその後はそれを聞きつけた宮廷のご婦人方から同じものを頼まれ、それはストロング国の裏舞台で大流行を見せた。
はぁーこんなものが流行るなんて平和になった証拠よね。
私がそう言うと一花が笑ってお茶を追加してくれた。
でもお陰でまた儲かっちゃったからある意味よかったのかなぁ。
それから一年後ストロング国で空前絶後のベビーブームが巻き起こった。
バニー服、恐るべし。
でも今後はベビー服で儲かるわね。
私は心の中でほくそ笑んだ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。




