112:王都ミナカタ-18
翌朝。というか、起きたのが遅くて昼になる少し前の時間帯。
俺は全ての防具とクエレブレの素材を外装が変わったアイテムポーチに納めると王都にポータルで移動し、そこからガントレットのオッサンの店である『イッシキ』へと向かった。
「これはまた見事に壊したであるな。」
「これを直すには随分と手がかかるわねぇ。」
「すみません。」
で、店に入って防具の修復を頼み、現物を見せた所で言われた言葉がこれである。
「ウルグルプの素材は残っていたかしら?」
「ただ修復するだけなら問題ない量は残っているである。が、この先の事を考えたら強化をするべきだと吾輩は考えるである。」
壊れた防具の状態を確認しながらガントレットのオッサンとアーマさんは修復計画を立てていく。
あー、これは話があれに流れてくるかな?
「ねえ。ヤタ君。確か貴方はクエレブレを討伐した結果としてここまで防具を壊したのよね。」
「あっ、はい。そうです。」
アーマさんがにっこりとした笑顔のまま俺に質問を投げかけてくる。
それに対して俺は事実なので頷くしかない。
「ふむ。ではヤタ。吾輩たちにクエレブレの素材を見せてもらえるであるか?」
うん。やっぱり来た。
ただ、ガントレットのオッサンたちから言われなければ自分から提案したことだし問題は無いな。
「良いですよ。こんな感じです。」
俺はアイテムポーチの中に入っていたクエレブレの素材を取り出して二人に見せる。
「ふぅむ。これは面白いであるなぁ……」
「あら、これなんて良さそうね……あっ、ヤタ君は適当にしてて。時間がかかるから。」
そして二人はまたあーでもないこーでもないと話し合いを始める。
とりあえずやる事の無い俺としては適当に昨日の帰り道で回収し、アイテムポーチの中に入れっぱなしだった食料を取り出して食べるぐらいしかない。
ああ、うん。フロズンリザードの肉はいい感じに冷えて、シャキシャキとした食感が美味いな。そこに飲むと体が温まるレッドスライムの体液を飲み物として合わせるとミスマッチ具合が逆に旨味を引き出してくれるなぁ。
「修復計画が立ったであるよ。」
「モグモグ……うん。分かった。」
俺は残った肉を飲みこみ、体液を飲み干すと二人の話を聞く体勢になる。
「まず結論として防具の修復は問題なく夜までに出来るである。」
「で、修復の際にヤタ君の許可さえもらえれば頭、腰、脚には新たにクエレブレの素材を使いたいと思っているわ。」
なるほど。やっぱりそうなったか。
さて、クエレブレの素材利用か……正直な話、クエレブレの素材で武器に向いているのは毒袋と牙ぐらいで、肉は別としても後は防具向けな気がする。あれだけ硬かったわけだしさ。
となれば、最悪肉と毒袋だけ残して後は全部二人に渡しても多分問題ないと思う。
俺が了承の意を伝えると二人は言葉を続ける。
「では実際に貰う素材の量と手数料の話に入るである。」
「まず素材としてはクエレブレの鱗2種を各2枚ずつに甲殻2枚、それと牙も1本貰うわ。」
ふむ。他の部分はどう使うのか分からないが、牙は多分頭防具だな。
「で、手数料として残った鱗と私からのちょっとした依頼を受けてもらうわ。」
「依頼?」
俺はここで首を傾げる。
いやまあ、俺個人としては金欠極まりないからクエレブレの鱗全部にアーマさんからの依頼だけで済むならそれに越したことは無いんだけどさ。
「別に大したことじゃないわ。後払いの形式にさせてもらうし。私のちょっとした仮説を証明するために……」
そこでアーマさんは一度言葉を区切ってこちらを見つめる。
うん。アーマさんは美人だが、この目はあの決闘に俺を巻き込んできた時のミカヅキと同じ目だ。確実にヤバい。
「血赤のウルグルプを倒してきてほしいだけだから。」
そして爆弾が投下された。
ああうん。血赤のウルグルプ。血赤かぁ……いや、倒せないことは無いけどね。以前倒した時はもっとレベルも装備もランクが低かったころだったし。後払いってことは防具も修復済みだし。
多分今なら夜が明ける前には終わると思う。
ただ、訊いておきたいことがある。
「えーと、仮説と言うのは?」
「実はヤタ君が倒した後、血赤のウルグルプって何組か倒しているプレイヤーがいるのよ。」
まあ、それは別におかしい事ではないな。
俺がソロで倒せたならパーティを組んだならもっと確実に倒せる。これは間違えようのない事だ。
だが、続くアーマさんの説明に俺は驚く。
「でもね。その中でウルグルプの珠を手に入れる事の出来たプレイヤーは一人もいないのよ。」
「へっ?」
ありえない事だと思う。
確かにHASOがMMOである以上は異様にドロップ率が低いアイテム と言うのも存在しているだろう。が、ウルグルプの珠に関しては何となくだがそうではないと俺は感じている。
「だからね。私はちょっと考えたのよ。もしかしたら珠系の素材を手に入れるためには何かしらの条件があるんじゃないかってね。それで現状全プレイヤーの中で珠系の素材を入手したことのある二人の内の片方であるヤタ君にもう一回倒してもらおうと思ったの。」
なお、もう一人は言うまでも無くマンティドレイクの珠を持つ軍曹である。
「えーと、ちなみにアーマさんの考える条件てのは?」
ただまあ、実際に挑む前にこれは聞いておくべきだろう。
ああ、既に挑む気は満々である。今は昼頃なので、これから深夜までに準備を整えれば問題なく必要なものは揃う。
「私が考える条件。それは……」
「それは?」
俺は思わず息を呑む。
そしてアーマさんは、
「ソロ討伐よ!」
そう言いきった。




