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誰のために書くのか

 小説って、誰のために書くのでしょう。読者さんのため? 作者のため? 単純な問いかけですが、あっさりと答えられる方は少ないのではないでしょうか。

 かくいう私自身、これに対して歯切れよく答えられない人間の一人です。

 でもこの部分がどっちに転ぶかによって、色々なものが大きく変化します。


 ここまで読んで

「なんだーまた精神論かよ―、しょぼくてもいいから具体的な技術論よこせー」

 と即座に感じた勘の鋭いあなた!

 ち、違うんですよ!(汗) これから技術論の話になるんです! マジです!!

 内容的には基礎編『対象読者の決定』の発展系だと思ってください。


 最近になって強く感じたのですが、やはり書き手には少なくとも3タイプいます。

①自分が面白いと思うものを書き、それが読み手の好みと合致しているタイプと

②書く目的が読み手に喜んでもらうことなので、そのことだけ考えて書くタイプと

③自分の信じる面白さを一部だけ残し、残りを読み手の好みに合わせるタイプです。

(※Nさんの『方法論としての順応する技術』に関係性の深い話。というかカブった)


 このうち自分の作品がどのタイプに当て嵌まるかによって、目指すべき技術の方向性もまるで変わってくる、と私は考えています。

 とりわけストーリー作りと文体作りにおいては、影響が大きいのではないでしょうか。


 上に挙げた①のタイプの人は、自分のこだわりをできるだけ強く残すことがそのまま武器になると思います。もちろん他人に読ませる以上は一般大衆性も要求されますが、天秤にかけたときに優先するのはこちらの方です。

 私がそう考える理由は、その作品の魅力の核が大衆性ではなくこちらの方にあるからに他なりません。ストーリー展開や文体も「安定して人気のある傷の少ないもの」ではなく「とにかくグイグイ読み手を引っ張れるもの」を目標にします。

 過去に『文体は作品の持ち味になる』の記事でもふれていますが、このタイプであれば癖の強い文体でも魅力になり得ます。奇抜なストーリーや設定も同様。問題は、果たしてそれを読み手が魅力と感じてくれるのか……。ある意味博打ですね。



 ②のタイプの人は、かえって単純な印象です。

 自分の作品を読んでくれる読者さんがいることを意識して、その人を喜ばせるためにはどんなストーリー・文体であればいいかを考えます。たとえば原稿を、自分の友達に読ませるとします。作者は友達の好みを知っているので、どんなものを書けば一番喜ぶのかもわかります。あとはそれを書けばいい。

 このタイプの人はそれを、友達ではなく「まだ見ぬ誰か」について行っているだけです。対象が不特定多数なので難しいことは難しいのですが、ピントさえ合えば小説を書くうえで他に考えることは何もないので、二律背反する問題についてすり合わせる必要もなく、こんなに単純な話はないと思います。

 といっても簡単にピントを合わせてしまえる人は、それはそれで天才なのですが……。



 そして、残る③のタイプが、おそらく最大多数派だと思います。

 書く目的として「自分の面白い」は譲れないけれど、それだけでは読者さんに興味を持ってもらえないので、可能な範囲で「読者さんの面白い」を追求する形ですね。

 まず「読者さんが面白い」と思える部分で作品自体に興味を持ってもらって、本文を読んでみたら「作者の面白い」が伝わってくる、というシステムです。最終的には実際に読んだ読者さんの好みそのものを、作者の好みに近付けることができると思います。

 この場合、小説技術としては自分のこだわり(エゴ)を残すことは残すのですが、それ以上に読者さんの好みや、読みやすさを重視した作りにするのがベターでしょう。その塩梅が難しいところ。



 以上、タイプによって技術を駆使して目指す方向性も結構違う、というお話でした。

 自分の才能が①、②、③のどれで最も発揮されるかについては、

 ――自分で思っていたのと違った!

 ということもあるはずなので、いろいろと試してみるといいかもです。 M

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