表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/62

文章の最高到達点

 書き手のレベルが上がってくると、情報量や読みやすさはそのままに、より深みと味わいのある文章を書くことが文章力上の目標になってきます。

 すなわち「情報を伝えるための文章」から、「物語を演出する文章」へと段階が変化します。

 しかし演出とは、深みと味わいとは具体的に何か。ここでその例文を挙げるのは非常に難しい。


 というのも本当に良い文章とは、たった数行だけ抜き出して語れるようなものではないと私は思うのです。

 どんなに見事な比喩を用いて情景描写をしたとしても、その文章が物語を追うために邪魔にならないとも限りません。「ストーリーが山場に差し掛かっているのに、そんな悠長に青い空について見事な表現で語ってる場合じゃねぇだろ!?」という感想を読者さんが抱いては、元も子もないです。

 この場合、物語の結末を知りたくてハラハラドキドキしている読者さんのために、あらかじめプロットで用意していた結末を最高級の演出と表現をもって伝えること。それが文章に求められている役割の、最高到達点だと思います。

 人によっては、これを感覚的にやってのける。

 それが「才能」と呼ばれるものだと、ある方から聞いたことがあります。


 導入部なら導入部の文章。日常シーンなら日常シーンの文章。クライマックスにはクライマックスにふさわしい文章があります。さらには登場するキャラクターによって、ストーリーによって、作品の雰囲気によって、それは一つ一つ違ってきます。

 あなたはそれを、どれだけ意識できていますか?

 地の文を単なる情報伝達の媒介として考えるなら、地の文なんてあらすじやプロットそのままで充分なんです。でも小説の面白さは、それだけでは決して実現できない――なんて当然のことは、このエッセイをここまで読み進めてくれた皆さんでしたら、とっくの昔に魂へ刻み込んでいるはずですよね。


 結局のところ、あなたが書きたいのはどんな小説でしょうか。

 いえ、そんな質問でも不十分です。「どんな小説」ではなく、ずばり「何」ですか?

 世界中を探しても、あなたの書こうとする小説はどこにもありません。

 あなたの創る物語にふさわしい文章の究極の書き方は、まだ存在していないのです。だってそれも、これからあなたが創るんですから。


 我々が学んでいる文章の書き方とは、結局すべて『読者を物語に引きこみ、その魅力を心ゆくまで味わえる手助けをしている文章』という目標に行き着くのではないでしょうか。


 そしてそれは、理論的に一般化することのできない感性の働きによって創られるもののはず。

 したがってその書き方を教えてくれる小説指南書はどこにもありません。


 でもきっと、参考書になるものくらいならあなたは既に知っていると思います。

 あなたを小説の世界に誘った一冊。あなたに小説を書きたいと思わせた一冊。

 見本にするんじゃありません。彼ら以上のものを書くには、どうしたらいいか考えるのです。

 宇宙に一つしかないあなたの「才能」を、最大限に引き出した文章を書いてください。 M

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ