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ストーリーの内部構造

 ストーリーの構造を、イメージで簡単にご説明するコーナー。

 まず、考え方のご紹介から。

 エンタメ小説のストーリーは細かく分解して、3種類に分けることができます。


①メインストーリー(メインプロット)

②サブストーリー(サブプロット)

③バックストーリー


 おすすめのイメージは「大地に根を張る一本の樹」を想像することです。

 樹全体の見た目がストーリーの全体像を表すと考えてください。

 以下からは、そのイメージに従って説明をしていきます。


①メインストーリー

 物語の縦軸です。一本の樹の「幹」となる部分にあたります。

 エンターテイメント作品において最低限必要な部分であり、具体的には物語のスタート・進行上の障害・その解決方法と結果のことを指します。すなわちメインストーリーとは、「起承転結」や「序破急」の流れそのものです。

 メインストーリーは単純に、太くまっすぐ伸ばすことが鉄則です。

 なぜかと言うと、それが読者さんの期待しているものだから。わかりやすく、単純で、面白さに安定感のあるものが好まれます。

 具体的な例では「成長物語」や「恋物語」、「勧善懲悪」など。どれも今となっては物語のパターンとして、お決まりになっているものばかり。しかしそこはそのままで構いません。むしろそうでなくてはいけません。ストーリーの中核は単純でありきたりなものであるべき、というのがエンタメストーリーの基本です。


 ここで文学性、あるいは複雑なテーマ性を重視したオリジナリティあふれるストーリーを中核に据えることも一応できます。しかし幹の部分からそんな調子だと、最終的な樹の形は確実にヘンテコなものになるでしょう。「オリジナリティー論」のカテゴリでNさんが言及しておられますが、それではやりすぎな場合が多いわけです。

 それは個性的で芸術性のあるものかもしれませんが、読者さんが期待していたものは太くまっすぐな大樹。読者さんの期待を真っ向から裏切る形で勝負するのですから、自然と面白さのハードルが高くなるのが道理です。個人的にも期待できる面白さに比べてリスクが高すぎるため、避けるべきだと考えています。



②サブストーリー

 物語の横軸です。一本の樹の「枝葉」となる部分にあたります。

 なぜ枝葉かというと、それが樹の幹から派生して伸びたものであり、樹全体を飾りつける役割を果たしているからです。

 サブストーリーは枝葉。つまりストーリー全体のうち、取り除いても幹であるメインストーリーの構造を破綻させない部分にあたります。メインストーリーが「成長物語」なら、「キャラ同士の恋愛模様」なんかがサブストーリーです。そんなものなくても成長物語としては成立するので、恋愛話は飾りに過ぎないというわけですね。


 しかし、実際はサブストーリーが一番重要だったりします。

 だって枝葉のない樹なんて、どう考えても見ててつまんない!

 どんなふうに伸びた枝に、どんな色の葉っぱがついているのか。どんな花を咲かせるのか。読み手が一番に気にするのはそこです。もちろん興味の中心はメインストーリーの結末なのですが、いわば幹の部分がまっすぐに伸びていることは、読者さんにとって当たり前。そこが期待通りだったからといって、幹を評価する人はまずいません。枝葉の部分で読者さんの予想を良い意味で裏切るような、オンリーワンの花を魅せる必要があるのです。(飾りが全部個性的である必要はないですよ? 花だけです)

 幹の部分で封印を推奨したオリジナリティは、ここで発揮するのが一番でしょう。逆にここで発揮しておかないと、他の樹がたくさん生えている森の中で、ありきたりな樹は目立たずに埋もれてしまいます。

 よって複雑に絡み合う枝葉に含まれる情報量は、単純にできている樹の幹とは比較になりません。ストーリーの本質は「10%の王道物語を、90%の飾りで埋め尽くすもの」と考えていいかと思います。


 息抜きのような形で挿まれる小話や、作中の会話劇、魅力的な世界観設定に基づくイベントなどは、全部サブストーリー。飾りです。これらを全部とっぱらってしまえば「主人公がヒロインを助ける話」のように、極めてありきたりな物語構造が見えてくるはず。だからこそ、枝葉が重要になってくるのです。

 サブストーリーはもったいぶらず、ガンガン気前よく盛りつけましょう。ただしあくまで樹の枝葉なので、樹の幹から派生した飾り付けでなければ全体のまとまりがなくなります。サブストーリーに組み込めるのはメインストーリーと一体化し、相互作用の期待できるものだけです。そこだけ注意してください。



③バックストーリー

 これは作中で、ストーリーとして描写しない物語です。一本の樹の「根っこ」の部分にあたります。

 土壌の下にある部分なので外からは見えませんが、樹は根があって初めてしっかりと立つことができます。

 スポットライトを当てられている登場人物は限られていますが、その他の登場人物や時間軸にも、ちゃんと描写されない物語が存在している、というものがバックストーリの考え方です。

 それからメインキャラクターにも、最後までスポットライトを浴びない部分が存在しています。各キャラクターの「行動原理」となるのはこの見えない部分なので、ここをしっかり決めておくとキャラクターの行動に一貫性と説得力を持たせることができます。


 わかりやすい例は「悪役の過去」。主人公と対立する悪役の心理は、物語の終盤まで深く語られることがないのが普通です。(これは序盤に悪役のバックストーリーを深く知ってしまうと読者さんが感情移入してしまい、主人公の逆転が起きてしまうためです。主人公側のシナリオが充分に進み、主人公への感情移入が定着したあとであれば問題ないと思います)

 しかし悪役が主人公の敵にまわるようになった動機は必ず必要です。それは「ただの気まぐれ」でも「偶然立場が違っただけ」でも構いません。一番いけないのは作者が具体的に決めていないことです。悪役のセリフや行動に説得力がなくなり、人間としての面白味が欠けて見えてしまいます。悪役の胸中を作中でどこまで明らかにするかは別として、作者の頭の中にはしっかりと物語を作っておきましょう。


 バックストーリーの例として、他には「サブキャラクターの行動原理」なんかもあります。主人公とは関係がないところで、サブキャラクターはどういう価値観を持ち、どう行動していたか。そういった設定部分をあらかじめ考えておくとキャラクターに深みが増し、物語にも破綻がなくなります。

 また、土の中に隠されているサブキャラクターの物語をチラ見せすることで、物語の奥行きを感じさせることもできるようになります。くどいようですが、作中で特に必要無いからといって作者が何も考えていないのが一番いけません。主軸がごっちゃになるから見せないだけで、サブキャラの物語もちゃんと存在していることを意識しましょう。



☆ストーリーのレシピ

材料(1作分)

メインストーリー  1本

サブストーリー   500g

バックストーリー  少々


1.メインストーリーをパターン袋から取り出し、大まかな流れにそって起承転結の切り込みを入れます。これは一言で説明できるほど単純なものでかまいません。ただし最後まで型崩れが起きないように、しっかりとしたものを選びましょう。

2.連想ゲームさながらに妄想を働かせ、1の飾りとして、サブストーリーを手当たり次第にぶっかけます。ここが一番時間のかかるところですが、一番自由な作業です。根気強く楽しんで。「面白くなるにはどんな飾りが必要か」を常に意識して行います。

3.2の作業後、メインストーリーにどうしても絡まない飾り付けも出てきます。そこは廃棄してお掃除。

4.1~3と並行してその理由付けである、過去話や裏設定などのバックストーリーも考えていきます。

5.全体をよく混ぜ合わせ、レンジでチンしてできあがり。


 さあ、レッツ創作クッキン!! M

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミッドポイントと併せてとてもわかりやすかったです! 今書いてるやつはこれで良いんだと、少し自信になりました。 [気になる点] 連投して申し訳ない。 [一言] サブストーリーも書くのですが…
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