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地の文の役割

 地の文の基本的な役割は、大雑把に考えると以下の3つです。

 (言葉の意味は便宜上のもので、一般的な定義ではありません)


①情景描写

 物語の進行している場面において、見えるもの、聞こえるもの、感じるものについてのリアルタイムな描写

②心理描写

 登場人物の心情そのものや、心情を感じさせる行動や風景の描写

③説明文

 物語の進行している場面を見てもわからない事実や、過去の出来事についての説明


【例文】

1  それは夏休みに入って、妹と初めてデートに行った日。

2  僕らの家からそう遠くない場所にある、町で唯一の映画館からの帰り道のことだった。

3  歩道と車道の区別すらないアスファルトの上。誰もいない、車さえ通らない住宅街の裏道。

4  真夏だと言うのに空はどんよりと曇り、二人の間を通り抜ける風は寒々しい。

5 「ねぇ。さっきの映画、どう思った?」

6  それまで目の前を歩いていた妹は突然振り返り、僕にそう尋ねてきた。

7  普段僕といるときは無条件でニコニコしている彼女だが、今は唇をとがらせるようにして僕を睨んでいる。

8  きっと映画の内容がかなりご不満だったのだろうな、と僕は直感的に察した。


 1行目と2行目は③説明文。これから始まる場面についての事前説明をしています。

 3行目は①情景描写。現在進行中の場面にて、目で見たことを読み手に伝える役割です。

 4行目は①情景描写と②心理描写の合わせ技。目で見たことや肌で感じたことを通じて、「僕」と「妹」の心理状態が陰鬱であることを表現しています。

 6行目は「それまで目の前を歩いていた」という③説明文と、「妹は突然振り返り~」という①情景描写を一文にした合わせ技。

 7行目は「普段僕といるときは~」という③説明文に、「今は唇をとがらせるようにして~」という①情景描写を加えつつ、同時に現在の妹の機嫌が悪いことを感じさせるという②心理描写の役割を担っています。

 8行目は単純な②心理描写ですが、妹が優位であるという兄妹の関係をほのめかす③説明文的な作用も働かせてあります。


 いかがでしょうか?

 こうやって分解してみると小説の地の文は手当たり次第に見たこと聞いたことを書けばいいわけではなく、あらゆる情報が自然な流れで読み手に伝わるように工夫されていることがわかると思います。

 「あっさりと読める文章の流れを維持しつつ、読み手に伝えておきたい情報をちりばめる」と言い換えるとわかりやすいかも。物語を伝えるために不必要な、脈絡の無い文章は徹底排除。残った文章に必要な情報を敷き詰めることで洗練された文章は完成します。

 何を書けばいいかわからない最初のうちは、先述した三種類の地の文の役割を踏まえつつ、物語を進めるために必要な情報を一つずつ書いていけば大丈夫です。慣れてくるとこれを感覚的にやってのけることができるようになります。


 それから、①情景描写と②心理描写と③説明文を、どれか一種類に偏って使い続けると基本的に悪文になってしまいます。延々と情景描写だけをしたり、長々と心理描写を繰り返したり、ずぅーーっと説明ばかりで物語が進行しない小説なんて誰も読みたくありませんし、どんなシーンなのか多角的に読み手に伝えることもできないというのがその理由です。わざと情景描写しか書かない「完全客観方式」というテクニックもありますが、難易度はかなり高めです。ご注意ください。


 同様に、「地の文ばかり」「会話文ばかり」の文章にも同じことが言えます。

 会話文と地の文のバランスは作風によって様々ですが、上手い人の小説は必ず読みやすさに気を使い、きちんと考えたうえで各要素のバランスを決定されているものです。

 地の文をある程度書いた後は一旦筆を止め、読み手の立場として読みやすく、状況がわかりやすいように書けているかを確認するようにしてみてください。 M

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― 新着の感想 ―
[一言] とても良かったです。これからなろう作家として作品を投稿しようと考えているのですが、地の文についてとてもよく分かりました。 感謝です。
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