15話
「そういえばさっき隊長からもらった封筒何が入ってるんだろうな?」
土下座したままで九十九 正義が言う。
「私はまだ許してない!」
月のように白く透き通った肌を持つサキュバスが睨みつける。
「うんうんわかるよその気持ち」
「わかるよ、じゃねーよ!」
「けど周りをよく見てくれよ、ものすごい真っ暗だぞ」
「だから何よ!」
「夜と言ったら魔物が強くなる時間だぞ。小袖もゲームが好きなんだったらわかるだろ?今の俺たちってもしかしたら結構危険かもしれないと思うんだ。結構お声も出しちゃってるしな」
「えっ!?ヤバっ!」
「もしかしたら何か役に立つことが書いてあるかもしれないじゃないか。隊長は俺たちよりはいろいろと知ってるだろうからさ。だから怒る気持ちもわかるけどいったん異世界に集中したほうがいいんじゃないか?」
九十九が柔らかく言った。
「たしかにそうかも………」
急に不安になったようで小袖が辺りをキョロキョロ見渡す。
「魔物に喰われるって痛いだろうなー」
「その時はちゃんと守ってくれるんでしょ?約束したよね?」
「もちろんだ」
「っていうかめっちゃオークじゃない?」
「ほへ?」
「緑だしデカいし顔もめっちゃモンスターだし」
「そうだった、俺はもう顔が変わってるんだよな。鏡が欲しいな、どんな風になってるのか見て見たい」
「確かに鏡欲しいね、ねぇ私って今どんな顔になってるの?」
期待に目がキラキラしている。
「もうとんでもなく可愛くなってる」
「ほんと!?」
「なんか薬局の壁から吊られてる化粧品のポスターの女優くらいにピッカピカの肌だな。毛穴なんか存在しないみたいに輝いてるぞ」
「うわー鏡がメッチャ欲しい!せっかく可愛くなりたくてサキュバスになったのに見れないなんて最悪。あー今すぐ見たい、どれくらい可愛いんだろう」
「もう前とは全然別次元だぞ」
「ふーん………けどなんかそれってディスってなくない?」
最高に上機嫌だった小袖の様子が一変。
「どういうこと?」
「だってなんか前は全然ブスだったけど、って言ってるように聞こえるんだけど」
「そんなつもりは全然ないよ。ただ前よりも更に最高になってるなっていう意味で言っただけ」
「ふーん」
「もう前の小袖じゃないんだからどうでもいいだろ?」
「どうでもよくないけど。というか九十九のその黒い前髪はオークになってもあるんだ。鬱陶しくない?」
「馴れたから全然うっとうしくないよ。むしろこれがないと不安だ」
オークの太い指が前髪を撫でる。
「それよりほら、隊長の封筒」
「あっ、そうだった」
パジャマのポケットから取り出したのは中身が透けて見えそうなくらいに薄い茶色の封筒。
「なんでこんな事務的な封筒なんだろ?」
そう言いながら封筒の上を破っていく小袖。
「ガッガッガッ!ウェルカムトゥー異世界!ガッーーーガッガッ!」
「何も入ってないよこの中、からっぽ」
封筒の中を見ながら言う。
「どうだ九十九、小袖。俺がいなくて寂しい思いをしてるんじゃないか?」
封筒から声だけが出てくる。
「ガッガッガッ!そんなお前たちに俺からとっておきのプレゼントを用意したぜ」
「プレゼント?!」
「これはお前たちだけに特別のやつだ。お前らは俺のことを仲間に誘ってくれたからな。あの時は言えなかったけど実はけっこう嬉しかったんだよ、もし一緒に行けるなら行きたいって思ったくらいだ」
「喜んでたんだ………」
「その礼っていうわけでもないけどな。最初にその世界に降り立った場所の地面の下を掘ってみな。それが俺の感謝の気持ちってやつだ、せいぜい有効利用してくれよな。それじゃーな簡単に死ぬなよ!」
小刻みに震えていた封筒の動きが止まった。
「これで終わり?」
「そうかもな」
隊長の言葉を聞いてなんだか切ない気持ちになった。
「ねぇ、とりあえず掘ってみようよ、どのへんだっけ最初にいた場所って。結構動いちゃったかもしれないけどその辺りだっけ?」
「俺もそこくらいの気がするな。けど掘るにしてもスコップとか持ってないぞ、どうやって掘るんだよ」
「そんなの手で掘ればいいじゃん。それだけ頑丈そうな指と太い腕があるんだからさ」
「結構固そうだぞ、しばらく雨が降ってないみたいな地面だぞ」
「たらたら文句言ってないでやる!」
「ちっ、わかったよ」
しゃがみこんでしぶしぶ地面に指を突き立てる。
「あら?」
「めっちゃ掘れてるじゃん!」
「ちょっとしか力入れてないのに簡単に掘れた」
ひと掻きで30㎝くらいは掘れている。
「いけるよ、九十九やっぱりいけるじゃん!これって絶対に私がボーナスポイント分けてあげて力のポイントを伸ばしておいたおかげでしょ?ほら、私のキャラメイク大正解じゃん!感謝してよね」
大喜びで緑色の背中をバシバシ叩く。
「よし掘りまくるぞ!」




