第6話 異世界
「…ちょっと待ってくれ。脳がマトモに働きそうに無い……。」
「構いませんよ。ごゆっくりどうぞ。」
そう言うとそいつは、ティーセットからおもむろに角砂糖を取り出した……。
こいつは甘党なのか?
…いや、そんな余計なことを考えている場合ではない。
とりあえずここは異世界で、こいつは妖精だそうだ……。前者はなんとなく理解できる……と言うか、そうでもないと砂漠にたたずむマイベッドやら、寝起きに飛びかかってきたミミズ以下略の説明がつかん。
……だが、
「…お前は本当に妖精なのか?全然そうは見えないんだが……。」
俺が知っている「妖精」とは、━━まぁフィクションの世界のヤツしか知らんが━━確か、体は人間よりも小さく、その背中には羽が生えていた…。気がする。
だが、俺の目の前にいる自称「妖精」は、どう見ても俺と同じくらいの身長がある。背中には羽も無く、容姿は人間と全く変わらないといっても過言ではない。
「まぁ、妖精と言ってもあなたの想像しているものとはまた違う存在です。」
某ハンバーガーショップの店員になれそうな0円スマイルを浮かべながら、そいつは続ける…
「この世界での妖精とは、異世界の存在を観測できる異能者の集団。そして僕は、その内の一人です。」
「…なるほど。」
よし。分からん。
…なんて言える空気ではない。とりあえず、今は聞くことに集中しよう。
「2、3日前、この世界に小さな歪みが起こりました。しかしその歪みはすぐに消えたので、我々は特に問題視していませんでした…」
…そう言えば、あの声が聞こえ始めたのもその頃だ…。
「しかし、我々の予想とは裏腹に歪みは再び現れ、拡大していきました。これは予期せぬ事態で、何か手をうちたかったのですが、観測者である我々はただ傍観することしか出来ませんでした…」
妖精(仮)は肩をすくめて、小さく溜め息をついた…
おい、なぜスマイルをくずさないんだ?
二枚目なだけに絵になっていて腹が立つ。…一応いっておくがひがみじゃないぞ…。
ほらそこ!何だその目は!!
「…さらにその上からまた予想外の事態が起こりました。」
……どうして俺の脳は、余計なことばかり考えるんだ?おい俺っ、雑念を捨てろ。
「一体何が起きたんだ?」
真面目に話を聞くために、とりあえず質問を投げ掛けてみた。
「…あなたです」
「…………俺?」
「えぇ」
…スマイルを1ミリたりとも崩さすに頷きやがった。
「どういう意味だ?」
「数時間前、歪みの拡大が止まりました。しかし、歪みの観測された地域の一部にこの世界とは異質の空間が形成されたのです」
「…まさかそこに俺が?」
「えぇ。あの広い砂漠の中であなたを見つけるのは、なかなか骨が折れましたよ」
苦笑する妖精(仮)。お前は笑顔しか出さないな…。
「で、俺は何のためにこの世界に呼ばれたんだ?」
「……さぁ?」
え?今なんて?
ものすごく無責任な返事が聞こえた気がする……。
「先程も言った通り、我々はあくまで観測者なので…干渉することは出来ません…」
「…そうか…」
……じゃあ一体誰がこの世界に?
……あの声の正体は?
「…1つ聞いてもいいか?」
「何でしょう?」
「何やってんだ?」
今まで気づかなかったが、テーブルの上には、大量の角砂糖が円形に並んでいた。
なぜ?
あぁ、妖精(仮)が並べてるからか…
いやいや、食べ物で遊ぶなよ!
あぁ…砂糖は調味料だな…じゃねぇっ
「すぐ分かりますよ」
そう言うと妖精(仮)は、角砂糖に何やら呟き出した。…よく見ると円形の内側に何やら図形らしきものが…
「あなたには会っていただきたい人がいます。」
「だからその角砂糖………」
その先は声が出せなかった…
異世界って何でもありなんだね…。俺はもうビックリだよ。 え?なにがって?
…突然角砂糖から人が出てきたんだよ…。
…つづく
秋田犬ですm(__)m
前々回から登場している妖精(仮)について紹介します。
前回の後書きでも言った通り、彼は解説役です。
体型は主人公とほぼ同じです。『物腰柔らかな爽やか君』と言うイメージです。
とある事情で、年齢は言えません。名前は次回出る予定です。本当は今回出すつもりでしたが、構成力の乏しい作者には不可能でした…orz
それではまた次回m(__)m