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番外編 a Mage

 番外編だからサブタイトルが英語です。

 次回からは本編。サブタイトルは漢字です。

 ガシャン。


「まぁ、せいぜい変な気を起こさない事だな。」


 衛兵は、わたしにそう吐き捨てるように告げ、静かに去って行きました。


 堅牢な鉄格子、同じく堅固な石造りの壁。窓は無く、明かりは燭台に灯るロウソクのみ。あとは固いベッドがあるだけの、殺風景な部屋。


 いわゆる、牢獄です。


 でもわたしは、牢に入れられる覚えなんてありません。ましてや、悪いことなんてしてません。


 一体何故、捕まってしまったのでしょうか。




━━

━━━━


「貴様っ、何者だっ!」


「……ちがっ…違いますよっ!! 魔導師なんかじゃありませんよっ!」


「…………。」


「…………?」


「捕らえろっ!!」


「ひいぃぃっ!」


━━━━

━━




 思い当たる節がありません。まったく。


 ……しかし困りました。こんな所にいつまでも囚われていたら、わたしは使命を果たせません。




━━

━━━━


 故郷の名は、『魔導師の隠れ里』。歴史の表舞台から姿を消した『魔法』。それを操る『魔導師』達の住まう里です。


 一説によると『魔法』は、大賢者ホー……なんでしたっけ…? とにかく、大賢者様とその一番弟子の血で血を洗う闘争の末に、別の弟子が、二度とこのような事が起こらぬようにと『魔法』を封印。人類から『魔法』という概念そのものを消失させ、あらゆる歴史から『魔法』の存在を隠蔽したそうです。

 ただし、その際に一部の者達には『魔法』を受け継がせました。決して、他の人々の目に触れぬように。その一部の者達こそ、わたし達『魔導師』という訳です。


「お主のその力は、いずれ現れる悪と戦うための力。それを倒すべく訪れる勇者様を助けるための力じゃ。」


「はい。」


 幼い頃から魔力の高かったわたしは、おばあ様にそう言い聞かされて育ちました。


 なんでも、わたしが生まれる前日に、おばあ様はこんな内容のお告げを聞いたとか。


『数年後、魔王が現れる。それを倒すべく、異界より勇者が現れる。これから生まれる子供に私の魔力のほんの一部を与えた。その子供を育て、勇者の旅の力とせよ。』


 おばあ様によると、その言葉を告げた人は、どこか悲しげで冷たい、張り付けたような笑みを浮かべていたそうです。


 とまれかくまれ、翌日。お告げの通りにわたしが生まれます。他の魔導師の数倍の魔力と、人並みの才能を持って。


 そのまま、物心ついた時には、おばあ様との修行に明け暮れていました。朝起きては、修行。魔力が尽きたら眠り、回復と共に目覚め、修行。延々とその繰り返し。


 その甲斐あってか、多少のムラがあるものの、十年足らずで魔導師としての能力を得る事が出来ました。



 一言に『魔法』と言っても、その性質は多種多様で、この世界に存在する精霊を呼び出し、それを使役する『精霊魔法』や、清らかなる力で傷を癒す『回復魔法』、世界の法則を変えかねない、あまりの強大さ故に、唯一完全に封印され、後世の魔導師達にも存在しか口伝されていない『古代魔法』など、様々な形態に派生しています。


 わたしが得意とするのは『基礎魔法』。この世界に存在する原素を組み換え、火、水、風、氷、雷……といったあらゆる自然現象を魔力によって構築する。というものです。

 それと、回復魔法もかじる程度に。これでも魔導師の端くれですから。


 ……とまぁ、わたしが一人前の魔導師として、一通りの魔法を扱えるようになった頃。お告げの通り魔王が現れました。あまりのタイミングの良さ……何者かの陰謀を感じます。


 それはまぁ置いといて、お告げの流れからして、わたしは『勇者』様を探し出さなければなりません。したがって『魔導師の隠れ里』唯一の例外として里を出て、『勇者』捜索の旅に出ることになりました。





 里をでて丸1日。ここで、ある一つの疑問が浮上します。


「……『勇者』って…どんな人なんですかね…?」


 容姿、性別、年齢、その他諸々の身体的特徴。一切情報がありません。


「……大丈夫ですよ、きっと見つかります。」



 わたしは、自分にそう言い聞かせ、視界の端に入った大きなお城を目指すことにしました。大きな城下町ならば、きっと勇者様の情報も手に入るでしょう。と考えて。





 底の見えない深い堀と、等間隔に見張り台の並んだ石の城壁。対外防備の整ったその外観は、ある種の要塞を彷彿とさせます。きっとこのお城なら、外から魔物が攻めて来ても安心でしょう。


 見物はこれくらいにして城内へ入ろうと、唯一の入り口である跳ね橋に目をやると、


 ガラガラ…ガラガラ…


 荷車を牽く筋骨隆々の逞しいおじさまを視認しました。その荷車には、大量の荷物が落ちそうなほど……


 ガッシャン


 あ、落ちました。しかし、おじさまはそれに気付かず、歩を止める気配がありません。


「…あのっ! 落としましたよ!」


 わたしはおじさまにそう呼び掛けました。どうやら聞こえたらしく、おじさまはくるりと振り向くと、


「すまないね。」


 その見た目とは裏腹に物腰柔らかな声でお礼を述べてくれました。




 聞くところによるとこのおじさま、城下に飯屋を開きに来たそうです。

 なんでも、いつかは城下に店を構えたいと思っていた矢先、お店が半壊してしまったので、これを機に、と荷物をまとめて引っ越して来たとのことです。


「でも、どうしてお店が壊れちゃったんですか?」


「あぁ、それはね、悪い豚が来てね。」


 悪い豚…? 豚にも良い悪いがあったんですか?


「だが、その豚を追い払ってくれた子達がいたんだ。なにやら生き別れた兄妹らしくてね。……確か、一緒にいた二枚目の優男に『勇者様』と呼ばれていたな。ちなみにこのモーニングスターはその時手に入れたんだ。」


 おじさまはしみじみと、感慨深げにそう語りました。


「へぇ〜、そんなことが━━って、あれ? おじさま、今なんて言いましたか?」


「え? このモーニングスターは━━」

「その前です!」


「悪い豚が━━」

「戻りすぎです!」


「豚にも良い悪いが━━」

「しれっと心読まないで下さい! そうじゃなくて『勇者』って言いましたよね!」


 興奮の余り早口に、かつ問い詰めるように聞いてしまいました。


「……た…確かに言ったが……それが何だね?」


「実は!」


 かくかくしかじか


「…と言う訳なんです!」


 まさか、こんなに速く勇者様の手がかりが手に入るとは…。わたしは人目もはばからず狂喜乱舞してしまいました。


「そうだったのか。彼にはこのチラシを渡しておいたから、きっと城に行けば会えるよ。」


 おじさまはそう言って、わたしに安っぽいキャッチの書かれたチラシを差し出しました。


「あ、ありがとうございます!!」


 わたしはおじさまに謝辞を述べ、お城へ向かって駆け出しました。





 お城では、たくさんの半裸のマッチョ達が、『我こそは! 我こそは!』と、自分の筋肉を見せつけ合っていました。……ある意味で地獄絵図です。


 少し頭が痛くなってきたわたしは、外の風を浴びに出たのですが……


「あれ…?」


 迷子になりました。広すぎます、このお城。


 なんとかホールに戻ろうと右往左往していると、何やら誰かが密談をしている現場に遭遇してしまいました。


「王様! 今日もたくさんのマッチョが集まりましたね! やはりマッチョ達にチラシを配ったのは正解でした。」


「馬鹿者! 誰がマッチョを集めろと言った! まぁ、この城の統治下にある小国の豪傑達を始末出来るという点では評価してやろう。」


 ……始末? もしかしてこれは罠ですか? …確かに、チラシをくれたあのおじさまもマッチョでした。飲食店経営者なのに。


 でも大変です。このままではマッチョが絶滅……じゃなくて、あのチラシを見た勇者様の身が━━勇者様もマッチョなんでしょうか…?


「まぁ、きっといつかは本物の勇者も来るとして、後はネロ様の言っていた『魔導師』とやらを捕らえれば褒美がもらえる。実にうまい話だ。」


 ネロ様? 確か、魔王はめんどくさいカタカナの長ったらしい名前だったような……。

 それ以前に、何故、魔導師の存在を知っているのでしょうか…。


「誰だ!」


「ひっ!!」


 会話を聞くことに集中し過ぎて、周囲への注意が散漫になっていたようです。




「その魔導師は殺すなよ。あの方はその魔力を欲しがっていたからな。」


「はっ! 地下牢にでも入れておきます。」


 必死で逃げたのにも関わらず、ものの数分で捕らえられてしまいました。

 でもなんで『魔導師』であることがバレたのでしょう? わたしはちゃんと『魔導師じゃありません。』と言ったのに…。


━━━━

━━


 かくして、回想を終わります。


 とにかく、じっとしていては何も始まりません。どうにかしてここを出なくては……。


 と、わたしが脱出する方法を思案し始めた時の事でした。


 ズザァァァ


「うぉぉぁぁぁ!!!」


 天井から、なんと、人が降ってきたんです!






秋田犬ですm(__)m


 今回、語りがいつもの『彼』では無かったので、書きにくかったです。修行がたりませんね…orz


 次回から、本編。ちなみに次の番外編は気が遠くなるほど先です。はい。


 作者の投稿の遅さも相まって、それはそれはずっと先になるかと……。


 でも、近々夏休み。これを利用してなんとか……、はい。


 でも、途中で投げたりはしませんので、絶対に。鈍亀更新ながら完結を目指しています。


それではまた次回m(__)m

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