第16話 出発
何だかんだで、無銭飲食娘ことリエルを仲間に加え、目指すは魔王の居城!
…と、言いたい所だが、ここで一つの疑問が急浮上してきた。
「なぁ、そういえば……魔王は何処にいるんだ?」
セネカに問い掛ける。
リエルとの会話で思い出したのだが、『魔王を倒す!』という目的はあれど、肝心の魔王の居場所は未だ話題に挙げられた事が無い。
「……さぁ?」
「店主、おかわり!」
よーしお前ら、一発殴らせろ。
「確かに、魔王が何処に居るか、そして、どれ程の力を持っているのか……。全く情報がありませんね。」
セネカはそう言うと、再び紅茶に口をつける。
「呆れた。…計画性の無い行動は生存確率の低下に繋がりかねない。」
スプーンを指先で弄びながら指摘して来たのはリエル。聞けばコイツは、ずっと一人で旅をしてきたらしい。
旅がてら金になる話を見つけては、ある時は魔物を討伐。またある時は稀少な薬草の採取。…本人曰く『ある程度の金さえ貰えれば、それなりの仕事をする』との事だ。
…俺達からは、一体どの位搾り取るつもりだろうか……。
「魔王と言えば…」
カレーのおかわりを持って来た店主が、思い出したように呟く。
「今朝こんなチラシが王宮から届いたのだが…。」
そう言って差し出したチラシの見出しにはこう書かれていた。
『勇者募集中!! さぁ、みんな、魔王を倒して英雄になろうゼ!』
「………………。」
…沈黙。約1名はそれを気にする事無く、黙々と、且つモグモグとカレーを食い続ける。
よって、辺りは、スプーンと食器の衝突音が聞こえるのみ。
「…イタズラだろうか?」
怪訝な顔で店主が沈黙を破る。
確かに、『英雄』と書いて『ヒーロー』等と読ませていたり、語尾の『ゼ』だけカタカナ表記になっていたり…なんとも安上がりなキャッチコピーではある。
だが、よく読んでみると日時、場所、内容から報酬に至るまで、イタズラとは思えない程事細かに指定してある。
「いやぁ、王宮の方々は、なかなかユニークですね。」
それは冗談なのか、それとも皮肉なのか?
つーか、これが本物だと断定出来たのか……。
チラシのキャッチコピーに負けず劣らずの、安上がりで無感情なセネカの笑み。その裏は全く読めない。コイツは何処まで本気なんだ…。
「どうしますか、勇者様?」
何時なんどきも寸分違わぬ、貼り付けた笑みがこっちを向く。お前の顔は、形状記憶合金か何かで出来てんのか? ……硬度からして合金では無いな。
「仮に嘘なら、確実に罠。恐らく豚の騒動の影で、仲間がそのチラシを配布していた。と、考えるのが妥当。」
口に物含んだまま言うな。説得力に欠ける。
……と言いたい所だが、この両の頬を膨らませた小娘の発言は非常に理に敵っていた。
要するにあの豚は囮。魔王の配下はその裏で暗躍。
そう考えても違和感は無い。……だとしたらあの豚は本当に哀れだ。
「つまり、上手く転べば国王がスポンサーに、悪く転べば魔王の思う壺。という事か。」
「そう。それでも行く?」
カレーを平らげ、コップの水を飲み干した後、無機質に語る。
考えること数分。
「……まぁ、別に急ぐ旅でも無いし、他にあても無いからな。行ってみるか。」
もし罠であろうと、魔王の手下なら、いつかは戦う事になる訳だしな。
場合によっちゃ、魔王の情報を聞き出せるかもしれん。
運良く罠じゃなければ好都合だ。小躍りして喜んでやればいい。
「それでは、そろそろ出発しましょう。王宮は海の向こうにあるので。」
そう言って立ち上がるセネカ。例によって、爽やかなスマイル。
俺も続いて立ち上がり、出口へと足を運ぶ。……あ、
「そういえば、お前もそれで良いか?」
一応聞いておこうと思い、リエルの方を向く。
「……チラシが本物なら国王から援助を…。…偽物なら敵をのして謝礼を……」
はい、回れー右っ。
…小声で金を得るための算段を立てる小娘なんて見てないぞ。きっと気のせいだ。…俺ぁあれだ、疲れてんだ…。
額に滲み出た冷や汗を拭い、再び歩を進める。
「それでは店主、ごちそうさまでした。」
セネカのあとに続き、店主に一礼して、飯屋を後にした。
「……行ったか。さて、私もそろそろ準備といこう。」
そう呟き、店の奥へと入っていく店主。勇者一行を見送ったほんの数分後の事だった。
秋田犬ですm(__)m
あぁ、文章力が欲しいなぁ。
さて、やっとこさ旅に出れました。随分と町に留まってましたね(…リアルタイムで)。
作者の脳内では、あと一人仲間になる予定です。が、いつにになるやら…。
一話当たりの文字数が少ない故に、進行がとても遅いのですが…、作者の技量ではこれが限界です。
このペースだと最終話まで、相当時間が……OTL
あぁ、やっぱり、文章力が欲しいなぁ。
それではまた次回m(__)m