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第13話 疑心

「おい、そこの豚。今すぐ山に帰れよ」


 状況を説明しよう。

 宿屋を出て町の中央にある広場へと出てきた俺達。そこには…


「ふん! 下等な人間め! 勇者を倒すのが我が使命。それを果たせぬまま山に帰れるものかぁ!」


 豚がいました。喋るタイプの。


「じゃあ、さっさとかかってこいよ。朝から騒々しい…」


 さっさと終わらせたいので、戦闘を促す俺。…一応言っておくが、別に好戦的な訳ではないぞ。ただ、面倒なことはさっさと終わらせてゆっくりしたいだけなんだ。


 しかし、豚は戦闘を仕掛て来ない。それどころか…


「いや、お前は何を聞いていたんだ? 私が戦うのは勇者であって、お前のような一般ピープルには興味がないんだよ!」


 俺が勇者であることに気付いてすらいなかった………。 


「…あー、1つ聞きたい。お前は勇者を倒しに来たんじゃないのか?」


「そうだとも! 何回言わせる気だ! 下等な人間め!」


 いちいちうるさいぞ、面倒な豚め。


「じゃあその、倒すべき勇者の顔は知ってんのか?」


「知らん!」


 堂々と言い切りやがった。その顔からはなんとも言えない清々しさが……って、


「じゃあお前は、顔も知らない勇者とやらをどうやって見つける気だよ?」


「ふっ、愚問だな…。私の目をもってすれば、勇者と一般ピープルを見分ける事ぐらいわけないんだよ!」


 出来てねぇよバカ野郎! そのセリフと相まって、お前大スベリしてるよ!


 …まぁ、俺の心の声が聞こえる筈もなく。豚は再び『勇者を出せ〜!』と、わめき散らす。


「…はぁ」


 どうしたものか…とセネカに視線を送る。悪いが俺にはコイツの相手は無理だ。何とかしてくれ。


「…まぁ、町の人々にも悪いですし、アレに勇者であることを伝えるのが先決でしょうね」


 と、小声で俺に言った後、肩をすくめて苦笑い。

 …ったく。いちいちめんどくさい豚である。そもそも豚なんだから、おとなしくトリュフでも探してればいいんだ。

 訳のわからん怒りが込み上げてきたが、とりあえず俺が勇者である旨を伝えるべく、再び豚の方へ目をやると……


「そうか! 勇者が出て来ないなら、人質をとって脅せばいいんだ!」


 わ〜お! とても物騒な考え!


「お前らに恨みは無いが、勇者が出て来ないから人質になってくれ。いや、なれ!」


 だから勇者は目の前にいるんだよ! 俺が(不本意ながら)勇者なんだよ!

 

豚は手にしたモーニングスターを高々と振り上げる。そして…いや、待て!


ドゴッ!


「うわっ! あぶねっ!」


思いっきり、振り降ろしてきた。


「ちっ! 外したか…」


 豚よ、1つ言っておく。

 『人質』とは、生きてる人間を後ろ楯にして、交渉、ならびにそれに準ずる行為を円滑にするものだ。

 しかし、今のお前は、明らかに俺達を殺す気だよな? 人はそれを『見せしめ』と━━


「ぬおっ!」


バゴッ!


「お前、意外とすばしっこいな」


 コイツ、殺る気満々みたいです。


「ふんっ! 次は外さんぞ!」


 豚が頭上で、モーニングスターを振り回し始めた。…おそらく、言うなら今しかない。


「おい豚! お前に言わなければならん事がある。よく聞け!」


「なんだと! じゃあなるべく早く言え! そろそろ腕が限界だ…」


 なら回すなよ……。


「実は俺、勇者なんだっ!」


「…………え?」


スポンッ


 豚の間抜けな声と共に、モーニングスターは手からすっぽ抜けて…


パリーン!

「何だ何だ!? …うおっ!」

ドカンッ! バキッ! ガコッ!

「ちょっとあんた! あんた!」


 民家に…あ、あれは昨日の飯屋だ。飯屋に飛んでった。

 中からは悲鳴(まさか店主に奥さんがいたとは…)が聞こえてきた。


 …いかんいかん。店主達には悪いが、話を戻さねば。


「だから、俺が勇者だ。色々あって、事の成り行き上、なんだかんだで勇者だ!」


「…全く説明になってませんよ」


 うん。俺も思った。


「……いやいや、嘘だろ? お前が勇者とか…いや、無い無い無い無い無い」


「うるせぇよ! 俺だって、半強制的に勇者にされたわけで、未だに実感湧いてないんだよ」


「だいたい、お前みたいな気だるそうな顔したヤツが世界を救うなんて、あり得ないだろ?」


「人を見かけで判断するなよ! 後悔するぞ!」


 まぁ、俺は見た目通りの無気力高校生なのだが…。

 そんな不毛な舌戦を、豚相手に繰り広げていた。その刹那!


ドゴーン!!


 俺達の間に、先刻のモーニングスターが割って入った。


「「「…え?」」」


 俺、豚、セネカの奇跡のシンクロ。3人(2人と1匹?)の視線の先には煙を上げながら地面に半分程埋まったモーニングスター。…一体どんな速度で投げればそうなるんだ?


 その視線を飛んできた方向へ移すとそこには……


「おい小僧ども! 危ねぇじゃねぇか!」


 頭にマンガみたいなデカいタンコブを乗っけた店主が立っていた。…いや待て、おかしいぞ! 何故にタンコブ1つで済んだんだ、店主!?




秋田犬ですm(__)m


…このたびは更新に1ヶ月も費やしてしまい、本当に申し訳ありません。


しかも、毎回引っ張るような締め方なので、続きが気になっていた方も多々いたと思います…orz。


これからは、週1…もしくは隔週……でなんとかやっていきます。


それではまた次回m(__)m

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