発砲
転移した瞬間、僕は落ちて行った。
運良く骨は折らなかったが、瓦礫と化した家の残骸で手を切り、足を切り、無傷とはいかなかった。
マスコミの取材陣がカメラを回し、激しくストロボを光らせて居た。
空にも何台ものヘリが飛び、地上だけでは飽きたらずに、取材合戦を繰り広げていた。
群がる様に駆け寄って来たのは、警察でも救急隊員でも無く、何故か自衛隊だった。
白鳥さん、大丈夫ですか!」 と、『衛生科』の表示を着けた隊員達が僕を担架に乗せようとした。
「一体何が起こったのか、教えて貰えませんか?」
僕は担架に乗るのを拒否し、隊員にそう訊ねた。
「自分達はそういう許可がありませんので。」 と、言うばかりだった、
警察の管轄では無いようで、野次馬やマスコミの整理はしていたが、バラバラに崩壊した僕の家を調査しているのは皆自衛隊だった。
見るからに衛生科とは違う隊員が走って来て、「こちらに来てください。」と、張られたテントに連れていかれた。
中には数人の上官らしき自衛官が待っていた。
「どこから現れたのか。」とか「何故あの車は動かないのか」と、矢継ぎ早に身分も名乗らず問い詰められた。
「まず、一体何が起こったのか、何で僕の家が壊れているのか説明して貰えませんか?」
僕は質問を無視し、そう言った。
「我々は指示に従って動いており、説明する許可をもらってはおりませんので。」 と、同じ事を繰り返すだけだった。
「あの車が何とか言ってましたが、何の事ですか?」
彼らの質問に答える振りをして、質問を返した。
「あそこに依然浮かんでいる、あなたの車の事です。」 僕はそう言われ、テントから出てフィットの惨状も見ておこうとした。
「どこへ行くか!」 と隊員に制止され、テントから出るのを拒まれた。
「手を離して下さいよ。」 僕の肘と肩を極めて制止する隊員に、そう言った。
「まあまあ落ち着いて、白鳥さん。」 年配の上官とおぼしき自衛官が、僕に話し掛けてきた。
「なら、手を離すようにこいつに言って貰えませんか?」
僕は自衛隊のルールで僕を縛ろうとする彼らに、少し苛立って居た。
「僕は逮捕とか拘束されている訳ですか? 今。」
テントから出る事さえ制止される今、自分の置かれた状況を知りたかった。
「そういう訳ではありませんが、保護と考えてもらっても良いかと思います。」
そうか、保護と言う形の拘束だと言いたいんだな、この人は。
僕は何気ない振りをして、「で、何から僕を保護してくれるんですか?」と言いながら、尻のポケットに手を入れて魔魂を潰した。
『結界』を自分の周りに張るイメージをしながら。
「それは、私には話す許可がありませんので」 ニヤニヤ笑いながら彼は言った。
「ちょっと弁護士に電話させてもらうよ。」 僕はあえて横柄な態度でそう言いながらスマホを取り出した、
「おいっ! 田中っ」 と先ほど僕の腕を極めた自衛官に、上官らしき男が目配せした。
僕をまた押さえつけようと近づくが、電話を掛け続ける僕に近付けないでた。
「早く、電話を取り上げろ!」 上官は保護する振りを止め、大声で下士官に命じていた。
「あ、白鳥ですが、」 僕は顧問弁護士の携帯に繋がると、現在の状況を話始めた。
取りあえず向かうと言うので、僕は電話を切り、なに食わぬ顔をして、気づかれぬよう録画を始めた。
もうその頃には10人を越える下士官がテントに詰めかけて、僕を取り巻いていた。誰も結界に入れず、ジリジリとしている。
「おい!抵抗は止めろ。」
僕は近くにあった折り畳み椅子に座り、スマホを玩ぶ振りをして動画を撮り続けた。
「別に抵抗なんてしてないじゃないですか。」
僕は怒らせて情報を引き出そうと、これ見よがしにニヤニヤと笑いを浮かべた。
「きさま、ふざけるな!」 上官は顔を赤らめて怒鳴った。
「もう一度確認するが、あんたらは民間人であるこの僕を、逮捕とか拘束する権限がある訳ですかね?」
言質を撮る為に僕はそう聞いた。
「そんなものは無い。しかしここからは出さん。 これは、保護だ。 お前とあの車の技術を保護するのだ。」
僕は怒鳴る彼の顔と言葉を動画で撮り終えると、取り囲む自衛官達の前で再生を始めた。
僕が何を隠し撮っていたのかを知った上官は、「手足の一本位折っても良い、絶対に逃がすな。」 彼は若い自衛官達に命令した。
「僕はこれからこのテントを歩いて出て行く、あそこに居るマスコミの方たちに話を聞きにね。」
僕はそう告げると、また動画を撮りながら、テントの出口へと向かった。
魔魂で張った結界が、人々を避けさせる。
「許可する。やれ。」 上官が自衛官の一人に命令した。
スマホで動画を撮られて居るのに、自動拳銃を抜いた。
「小隊長、本当に撃って良いんですか?」 僕に銃を向けながら、田中と呼ばれた下士官は確認した。
「命令だ撃て。足だぞ、足を撃て。」
それを聞きながらも焦りはなかった。銀魂でも車を浮かす程の魔力があるのだ。 弾がどう結界で防がれるかを見たい、そんな余裕さえあった。
「パンッ」 と、かなり大きな音がして、耳がキーンと遠くなった。
弾は、探したら地面に落ちていた。
「撃ったな。」 僕は動画を撮りながら、小隊長と呼ばれた上官を振り向き、そう言った。
「田中、しっかり狙わんか! 撃て!」
上官は僕の目を睨みながら、そう命令した。
「パンッパンッパンッパンッパンッパンッ」 6発の甲高い銃声がなり、耳が馬鹿になりそうだった。
僕は睨み付ける小隊長と呼ばれる男に、
「保護するだの言いながら僕を撃たせたんだ。 覚悟しとけよ、小隊長。」
そう言い捨てて、出口へと向かった。
取材していたろうマスコミに、何が起こったのかを聞きに行くために。




