飛び回る妖精たち
ミアやメリルを始めとする、11人のエルフ達との訓練が始まった。
カイルにしてもエミリアにしても、まだ飛ぶ事に付いてそれほどの技術がある訳でも無かったので、その都度みんなで研究し、相談しあいながらの訓練となった。
水平移動から後退、全速力から停止まで試してみると、飛ぶと言う事行為も奥が深かった。
鳥や蝶とは違い前方にだけ進む訳では無く、後方へも全速力で飛べる『お守り』の力には、様々な可能性が秘められていた。
『安産のお守り』を用いての青い光の攻撃は、元々反射神経の良いエルフ達だったから、飲み込みは早かった。
指先から撃つ事から始めて掌から大きい光の玉を撃ってみたり、指先から10発を同時撃ちする事までと、カイルやエミリア自身も学ぶ事が多かった。
「何で十字が出るお守りを使って練習しないんですか?」
と、銀髪のツインテールの似合うジェシカと言う娘が聞いて来た。
「ジェシカ、それなら競争してみようか?」 と、カイルは車から視界に自動照準の十字が現れる『合格のお守り』を取りだして、彼女に渡した。
的にしていた10個の石の塊を、同時に撃ち始めてどちらが早いかを競う事にした。
「メリル、スタートの合図をしてくれないか?」
カイルは彼女にそう言った。
二人とも並んだ的に背を向けて、合図と同時に振り向いて撃つ事にした。
「構えて、、始めっ!」
他の皆が見守る前で、その速さの違いは歴然だった。
ジェシカが6つ目に当てる前に、カイルは全てを撃ち終えていた。
「遠くから狙うなら『合格のお守り』には敵わないけどね。 十字を合わせる迄の微妙な時間の遅れは、近い距離だとこんなに差が出るんだよ。」
カイルは微笑みながら、見ているエルフ達にそう言った。
「まずはお守りに頼らないで当てる練習ね。」
エミリアがジェシカの肩を抱きながら、そう囁いた。
「うん。わかった。」
彼女は素直にそう言うとお守りを返し、素早く狙う練習をまた始めた。
「負けたらどうしようかと思いましたよ。」 と、カイルは笑いながら小声でエミリアに呟いた。
「彼女達飲み込みが早いから、私達もうかうかしてられないわね。」
エミリアはそう言って微笑んだ。
草地を飛び回り光を放つ彼女達を見ながら、カイルは昔話に出てきた妖精を重ね合わせて見ていた。
ただ目の前を飛び回る妖精は、お話の妖精とは違い恐い牙を持っていた。
魔獣をさえ一撃で倒す、恐い妖精達だった。




