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ファウスト〜哲学放浪の幻視〜  作者: 語り部ファウスト


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14/18

第十四幕:正義の問い再び

哲学者が人間の世界にいた時、

師からもらったテーマで敗北した。

いま、まさに同じ質問が繰り返された。

哲学者はどう動く?

やあ、君。女神は、長い間の沈黙の後で、ボクらを眺めていたよ。

そして、何度も問い直していた。

女神は、何者なのかってね。

この神は性格に難ありで、無計画に突っ込んでいく神だったけど、自分の違和感に気づけた。神だからね。

「私は地上にいて、汝らと会ってた?」と繰り返し呟く。

「どうでも良いことだ。ーー人と神々の関係とは終わりを迎える。」

哲学者が左手をさらに突き出す。

「その手は......なんだ?」と女神は怪訝な顔をする。

「ここまで来たんだ。土産をもらおうと思ってる」と哲学者。

「土産を?ふん。哲学者と名乗っているなら、問いでもくれてやろう。」

「正義とはですかな?」と哲学者は笑う。

「そうだ。それを贈ろう。正義とは?」

女神は微笑む。だが、すぐに自分の微笑みに疑問に思う。

「正義とは、まだ俺には決められない。そもそも、俺には本当に正しい答えが、見つかるものとは思えない。

きっと、何を言っても間違いと言われる」

一瞬だった。

ほんの一瞬、彼女は口を開きかけた。

そして唇が閉じられた。

女神は、彼女は一筋の涙を頬に伝わせていた。

「弟子よ。それが、無知の知なのだ」

女神の目が見開かれる。

ああ、女神は狼狽えた。

彼女の中にある記憶に。

「や、やめろ!!私に!触らないでくれ!!」と、後ずさる。だけど、彼女が後ずさるたびに、哲学者の方へと行く。

哲学者は動かない。

彼女が近づくのを黙って見ていた。

彼は左手を彼女の方へ向けている。

その手に吸い寄せられるように、

彼女は、階段を一段、

一段と降りていく。


そして、彼は女神を抱いた。

優しく?

せつなげに、さ。

苦しくてたまらないと言うように。

これが、最後とでもいうように。

左手で、彼女の手首を掴み、

彼の腕の中に引き寄せた。


女神は、二、三度、痙攣してから、

彼の肩に頬を寄せた。

哲学者は、彼女に聞くんだ。

「二人きりに、貴女は俺をなんと呼ぶ」と。

すると、どうだろう。彼女は彼の肩から頬を離すと、愛しげに彼の目を見つめた。

彼女の表情は、慈愛に満ちた者になる。

「ジュッシュ。貴方に会いたかった」

哲学者は微笑む。

もう、満足とでもいうように。

彼は女神から腕を離し、下がる。

女神はしゃがみ込む。


これから、何が起こるか分からなかった。


「俺は人の身でありながら、貴女を愛した。これは神々の法では死だ。

俺の死は、ここで決まった。

俺はこれから死ぬ。人として死ぬ。

愛を知って死ぬんだ。」

彼は女神に説明したんだ。

自分の末路ってやつをさ。


女神は、硬直した。

「待て!生きてほしいだけだ!君はーー」彼女の言葉が続かない。

彼女の口は、神々のもつ不死性により、囚われた。

神もまた法に縛られるんだ。

そんな囚われた彼女を彼は、微笑みながら見てた。

「君は俺を見つける。

ーー俺も君を見つける。」と哲学者は女神に微笑む。


雷の音がゴロゴロと近づいてくる。

慈悲深い雷神が、

彼の終わりを持ってきた。


轟音と稲光が神殿の中にぶつかった。

白と音が交互に揺れて、鳴く。

ボクは君を庇う。

ボクの肩越しで君は、哲学者だった灰の山を見た。

一陣の風が彼を虚空へと連れ去る。

女神は動かない。


「彼を見つけなきゃ。

ーー星の海を越えて」


しばらくして、彼女が立ち上がると、呆然と立ち尽くす黄金の女を、そのまま通り過ぎる。


女神は舟に乗り、漕ぎ出した。

どこか遠く。

彼を探しに。


(こうして、第十四幕は女神を乗せた舟と共に閉じる)



そして、物語は女神による愛する者を求める旅が始まったんだ。

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