第13話
南ニールの海岸近くに一人で住んでいると言うリューン大叔父さん、ユーリーン婆が言っていた所へ向かった憶えたばかりの瞬間移動で、ここら辺だろうと思った所に到着した。すると、セーンを待ち構えていて、大歓迎で迎えてくれたのだから、彼はリューン大叔父さんで間違いないだろう。
セーンは思いついて何気なく瞬間移動してきたのだが、いくら強い能力者でも初めて行くところに瞬間移動など出来ないはずなのだが、セーン本人はそういう事に思い至ってはいない。何気なくやっている事である。
しかし、リューンは只ならぬセーンの能力を恐れ入って見ていた。しかしその事はおくびにも出さない。
「セーンだな、よく来たな。ユーリーンによく似ている。あ、古の王女に似ていると言うべきだな」
「初めましてリューン大叔父さん。相談したいことが色々あって、押しかけてきました。ニキ爺さんたちがレンだと思っている奴、本物じゃない気がしていてじじばばが心配なんです」
「そうだろうな。その事だが話は色々あるが、まあ外で話す事じゃないから、とりあえず中に入れ。年寄りの料理で口に合うかどうか分からんが、晩飯を一緒に食べようと思ってな。作ってみたが、不味かったら、酒でも飲んでおくんだな。酒は良いのを買ったんだ。あ、酒は飲めるよな」
「はい、まあそこそこの量は飲めます。最近、何があるか分からないって思って控えていたんですが、大叔父さんは今日は飲んでいい日だって思っているんでしょ」
「俺は予知能力は持っていないよ。だけど人よりテレパシー能力が強いからね、今日は攻めてきそうな気配はないって所だな。だから飲める」
自信無さそうなリューンの言い様の料理だが、セーン好みの味付けで、酒の肴にもピッタリで、セーンは久しぶりに満足できる夕食を食べさせてもらった。
「リューン大叔父さんって、料理すごく上手なんですね。こんなにおいしい晩飯は久しぶりです。ごちそうさまでした。夢中で食べていて、今日の訪問の目的を忘れそうでした」
「あはは、そんな感じだな。リューンと呼んでくれ。大叔父さんと言われると、歳を感じて力が湧かんよ」
「そうですか、じゃあリューンさんと呼びます。言われてみればリューンさんは若いですね。ユーリーン婆とあまり変わらない歳ですよね。そうか、じじばば扱いするのが良くないのか、今度2人を名前だけで呼んでみたら若く見えるかな。今度からそうしてみようかな。ところで、レンはどっちが本物でしょうね。僕としては怪しいのはどっちもなんです」
「どっちも怪しいとは、悩むよな。だがセーンは勘が良いな。どっちもレンではない。お前の勘の正解だ」
「へぇ、じゃあ本物はどうしているんですか。まさかくたばっちゃいないですよね」
「あはは、お前と居たら楽しそうだな。俺ん所にしばらく居るって言うのはどうだ」
「えーと、ありがたいお誘いですが、ヤモを今日は瞬間移動するので、置いて来たんです。懐いているので、放っておけなくて」
「壁の上ヤモちゃん一家か。さぞ懐いているだろうな。使い魔と言うよりペット扱いじゃないか。聞きたい話じゃないかもしれないが、使い魔は使い魔らしく扱ってやれ。あまり情をかけると、お互い苦しくなってくるぞ。平和なご時世ではないからな。しかし、いらん事言ったかな。涙を流すのも癒しになるし」
「なんだか意味深なこと言いますね」
「いやはや、柄にもない事言っちまったな。少し酔っ払ったようだ。ジュールが母親の方について行ったから、俺は何となくレンを見ていたんだが、面倒を見たって言えるほど、構ってはいないんだが。セーンは信じられないかもしれないが、レンは小さい頃から、心根の良い正義感にあふれた奴だった。信じられないか、そうだろうな。だが良い子だったで間違いはない。ニキがな、長男の生まれたのを喜びすぎて、目の中に入れても痛くないって感じだな。この言い方、聞いたことあるか。知らないのか、やれやれ、とにかく可愛がっていた。長男はもちろん、これまた優しくて良い子だった。レンについての話と違うとこ分かっているか。そうか、とにかく優しい。人にも動物にも生き物は皆可愛がる。ニキはユーリーンとの結婚の契約書に、次男が生まれたら次男にソルスロ家を継がせると書いたが、ああ言う契約の仕方は不味かったんだ。グルード家は一番できの良い子に継がせ、ソルスロ家は次に出来が良い子に継がせるって契約が良かったんだが、当時はそうは出来無かったろうな。レンは良い子だったから、自分の能力を隠してしまった。長男のグルード家を継ぐ奴より能力があってはならないと思ったんだな、正義感あふれる良い子だったから」
「それ、ほんとですか。レンは自分の事を、ユーリーンよりも弱いとか言っていたけど、嘘なんですね。でも、嘘つきって言う所は合ってますよね。で、どのくらい能力があるんですか。リューンさんなら分かっていますよね」
「ああ、レンに口止めされた。当時俺も愚かだったから、若いのの言い分を通してしまった。だから、今もニキとユーリーンにあわせる顔がない。だからここに住んでいるしかない。あいつの能力は、ほぼ存在していると考えられる属性はすべて持っているし、そのランクも測ったことがないから不明と言っておくのが無難だろう。考えたくないレベルだ。癒し能力も10前後はある。普通、この癒しだけあれば、恐れる物無しのレベルなんだよ。つまり天才なんだ。ニキは最近勘付いているかもしれないな」
「そうなの、良く知らないけど、じゃあ、後継ぎはレンで良いんじゃないのか、あ、レンが僕を後継ぎにしろって言ったらしいな。それでニキ爺さんは僕を迎えに来たんだった。わぁ、がっかりだ。なんでこうなった。俺セピアに帰りてーよー。ぐすっ」
「なんだ、セーンは泣き上戸か。面白くない奴だな。泣くな、一緒に飲んでつまらないのは相手が泣き上戸だった時だな。それ、癖にならないようにしないと」
「なんで、自分は天才だって発表しないんだ。長男が出て行ったのなら、そのタイミングででも言えばいいと思う」
「その時はレンとニキは中が悪くなっていたからな」
「どうして」
「それはな、俺の息子のジュールの事があってな。あいつら相当反発し出した」
「それ、俺も気になっていたんだ。誰にも聞けなかったけれど、なんだかクーラ叔母さんの気鬱の話の原因と違う?」
「そうだ、ジュールもレンと似たり寄ったりの性格だった。従兄弟同士で幼い頃から気が合っていたな。だがレンは適当に世渡りしていたが、ジュールは融通の利かない芯の通り過ぎた奴でな。母親がまた融通の利かない世間知らずで、息子可愛いの一本調子の奴でね」
ため息をつくリューンに、言葉をかけられないセーンである。まだ話さないけれど、いやな雰囲気になっている。
そしてリューンは近衛兵について、ニキ爺さんの言った事と似通った事を言った。
「ジュールは母親の強い願いで近衛兵の騎士になった。あそこは俺ら一家とは不仲な家の出の奴が多い」




