↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/260

77

 木箱を作るのに大変な手間がかかり、今日は何度か縮小の文字を練習したところで終了した。老師にも自分の仕事があるので早朝にと言う事情もあるのだ。


 足取りも軽く神殿に向かう。久しぶりにグレッグ先生と精霊さんにお会いできるのだ。浮かないようにするので精いっぱいである。ただ歩幅がいつもよりだいぶ広いので、既にちょっと浮き気味ではあるかもしれない。


 神殿の主神像の前、カリスマさんと確認した場所に青い光の球が浮いている。これを触ると街移動が無料で出来るのである。停止することもあるらしいが、普段はまず起こらない現象らしく安心して使える。球に触れると、ウィンドウが現れる。


『行き先を選択してください イチの街 ニーの街 』


 イチの街を選択。新しい街に行って登録したら選択肢が増えるのだろう。ウィンドウには随分な余白があった。しかしまあ、少年少女と言う固定客がいる今無理に移動するつもりもないし、当分先の事になるであろう。


 つらつら考えているうちに、徐々に光が強まり一瞬視界が遮られた。瞬きすればそこはイチの街の噴水前であった。魔法のようである、と言うか実際魔法と言う扱いなのだろう。


「さてと。悪いが先にグレッグ先生のとこに行くからな」


 すぐ脇道に逸れて違うことをし始める私としては、先に目標を達成しておきたい。帰りに行こうと思って忘れたら目も当てられない。


「了解ですよ」


 囁き声が返ってきて、私はすっかり田舎町の姿を取り戻したイチの街を歩き始める。冒険者はすでにほとんどおらず、南門に固まっているのはほとんどがゴーの街に行きたい上級者のようだ。行ける条件がわかっていないのか、一様に渋い顔で話し合っている。頑張れよ。


 ニーの街よりだいぶ小さいだけあって店にはすぐに着いた。ああ懐かしきモグリ薬品店。お元気ですか先生。


「こんにちは」


 営業中の札を確認して中に入った。グレッグ先生がうつらうつらしている。どうしました先生! 転寝《うたたね》するような方じゃなかったのに。


「せ、先生……?」


 恐る恐るグレッグ先生の肩を触る。反応がないので、揺すってみるとようやっと目が薄く開いた。一瞬の間を開けて先生ががばっと起き上がる。


「はぅあっ! すみません、いらっしゃいま……おや辰砂君。久しぶりだね」


 寝起き自体は良くていらっしゃるようだが、口の端から垂れている涎は拭いてほしい。指摘すると先生は恥ずかしそうにハンカチを取り出したのであった。


「いやすまないね。恥ずかしいところを見せてしまったよ……」


「お気になさらずに。しかし先生、ずいぶんとお疲れでいらっしゃるようですが……」


 あまり見ていい物ではない気がするが、机の上の籠の中に目もシャキ! と思しき瓶が積み上げられているのが気になる。眠気覚ましをあれだけ使うと言うのはちょっと尋常ではない。


「ああ……冒険者たちがね。開店直後にポーション類を根こそぎ買って行くんだ。毎日、大鍋一杯作っているのに……毎日採集に行かなければならなくてねえ。ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)睡眠不足だよ」


 他の物はともかく、運搬できる限界量の都合上が1日100本と言う在庫の理由であった。以前は1週間に一度で商品全てを賄えたのに、今はポーション類用の薬草だけをひたすら集めまくる日々を送っているそうだ。昼中に営業して夕方から採集に行って夜中に調合しているのか……明らかにオーバーワークである。


 先生は空間魔法の類をお持ちでないし、魔法鞄《マジックバッグ》が作れる職人はこの街にはいない為に手に入れることも出来ていないそうだ。かといって店を休んで余所の街に行こうなんてことをしたら暴動が起きそうで恐ろしい、と言う事であった。


「……魔法鞄の方には多分伝手があります、先生。少し時間はかかるかもしれませんが作成してもらうことはできます。代わりに注文してきましょう。それから薬草類ですが、今少しだぶついた在庫があるのでお譲りします」


 近頃はもっぱらスーパーシリーズの作成ばかり励んでいる。スーパーで安定して品質Cが作れるようになったので、次は品質Bを目指す段階に来ている。と言うわけで残念ながらストレージの肥やしになっているポーション用の薬草たちに活躍の場を与えてやりたい。


「えっ、良いのかい? 辰砂君は顔が広いんだね。いつも一人だけど、お友達がちゃんといるようで安心したよ。薬草の方は、そうか、スーパーポーションに手を付けているんだね。必要ないならぜひお願いしたいな」


 先生の安堵した顔が心に刺さる。すみません、一人しか仲の良い人はいないんです。流石先生だけあって薬草が余る理由も的確に見抜いてくださった。了承を得たので早速ストレージから薬草袋を取り出す。出しても出しても出てくる、使わないのについ集めてしまう貧乏性ここに極まれり、だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。