表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

おしまい


 それは、突然の依頼だった。


---


「第一開発部との合同プロジェクトが立ち上がることになって」


---


(第一開発部)


---


 一瞬で、空気が変わる。


---


「総務側の窓口として、入ってもらえますか?」


---


(戻る……?)


---


 心臓が、少しだけ速くなる。


---


「……はい」


---


 会議室のドアの前で、私は一度深呼吸をした。


---


(観察者じゃない)


(今回は、仕事で来てる)


---


 ドアを開ける。


---


 そこには——


---


(いる)


---


 何も変わっていないようで、

 少しだけ懐かしい光景。


---


「お久しぶりです」


---


 誰かが言う。


 私も軽く頭を下げる。


---


(始まる)


---


 プロジェクトの説明が進む。


 新しいテーマ。

 複数部署の連携。


---


 そして、案の定。


---


「その前提、少し曖昧では?」


---


(出た)


---


 三浦さん。


---


「曖昧っていうか、実務上は問題ない範囲で——」


---


(危ない流れ)


---


 別部署の人が、少し困った顔をする。


---


(あ、この空気……)


---


 理解できない側と、詰める側。


 いつもの構図。


---


(ここで止まるやつだ)


---


 ほんの一瞬、迷う。


---


(私は、どっちでもない)


---


 でも、次の瞬間には口が動いていた。


---


「すみません、少し整理してもいいですか」


---


 全員の視線が、集まる。


---


(言った)


---


「三浦さんが気にされているのは、“どの条件までを保証するか”の範囲ですよね」


---


「……はい」


---


「一方で、こちらのチームは“実務上問題ないか”を基準にしているので、少し視点がずれているかもしれません」


---


 少しだけ間。


---


「なので、“保証する範囲”と“運用上の許容範囲”を分けて定義すると、話が進めやすいと思います」


---


 静かに、空気が整う。


---


(……あ)


---


「なるほど、それなら整理できますね」


「確かに、その方がわかりやすい」


---


(通った)


---


 三浦さんも、小さく頷く。


---


(止まらなかった)


---


 議論が、進む。


---


 少しして。


---


「この挙動、少し“硬すぎる”気がしますね」


---


(詩人型)


---


 長谷川さん。


---


「硬すぎるっていうのは?」


---


(また詰まる)


---


 私は自然に口を開いていた。


---


「自由度が低くて、変化に対して反応しにくい状態、という意味だと思います」


---


「……ああ、そうです」


---


(翻訳できた)


---


「少しパラメータを緩めて、変動の余地を持たせる方向でしょうか」


---


 藤原さんが、静かに頷く。


---


「……それならすぐ試せます」


---


(繋がった)


---


 カタカタ。


---


 数分後。


---


「……このくらいですかね」


---


「うん、今の方が自然です」


---


(全部、繋がってる)


---


 定義。

 比喩。

 実装。


---


 バラバラだったものが、

 一つの流れになる。


---


(これ、前は見てるだけだった)


---


 今は違う。


---


(間にいる)


---


 午後。


 議論は順調に進む。


 驚くほどスムーズに。


---


「今回、話が早いですね」


---


 誰かが言う。


---


「そうですね、整理されてる感じがします」


---


 私は、少しだけ笑う。


---


(そう見えるんだ)


---


 会議の終わり。


 片付けをしていると、


---


「……さっきの説明、助かりました」


---


 声。


---


 秋山さん。


---


(推し)


---


「ありがとうございます」


---


「……ああいう整理、得意なんですか?」


---


 一瞬、考える。


---


(得意……?)


---


 違う。


---


「ここで教えてもらったので」


---


 自然に、そう答えていた。


---


 ほんの少しの沈黙。


---


「……そうですか」


---


 それだけ。


 でも——


---


(ちゃんと、繋がってる)


---


 帰り道。


 私は、久しぶりにメモ帳を開く。


---


> ・“一般的って何ですか?”

> ・“きれいになります”

> ・“音が合っていない”

> ・“5分で試せる”

> ・“特別じゃないとわかると楽になる”


---


 その下に、新しく書き足す。


---


> ・言葉は、渡せる


---


 手を止める。


---


 観察していた言葉たち。


 理解しようとしていた思考。


---


 それは、


---


(ちゃんと、使えるものになってる)


---


 最初は、ただ面白かった。


 インテリが好きだった。


---


 今も、もちろん好きだ。


---


 でも——


---


 少しだけ、変わった。


---


 ご飯も好きだけど。


---


 少しだけ笑って、


---


 私は静かに思う。


---


 インテリの言葉を、つなぐのが好きだ。


お付き合いいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ