表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“王太子ざまぁ”を目指したはずが、家族と第二王子が過激すぎて大勝利になりました  作者: ぱる子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/60

第16話 国王主催の“真相究明”第二幕!?①

 その朝、王宮の執務室では、またしても国王フレデリック・イグナシオがいつもどおりの“気まぐれモード”に入っていた。若い官吏たちが固唾を呑んで待機する中、彼は豪華な椅子に腰を下ろし、やや眠そうな目で書類を眺めては、杖で床をコツコツと打ち鳴らしている。

 そんな国王の隣には、セバスティアンが控えていた。第二王子としての立場をわきまえて静かに佇むが、その深い瞳には好奇の色がうっすら混じっている。父親の耄碌じみた思いつきがどんな形で再び国中を巻き込むのか――彼は心中で期待すら感じていた。


「ふうむ……前回の舞踏会は、あちこちで騒ぎが起きすぎて、わしもろくに眠れんかった。リリエッタとかいう娘や、アルフレッドが何やらごちゃごちゃしたせいで……ん、まあよく覚えとらんが」


 フレデリックが杖をトンと叩きながらぼやく。セバスティアンが小さく口を開きかけると、官吏のひとりが恐る恐る声を上げた。


「陛下、先の舞踏会では王太子殿下の失態が大きく取り沙汰され、公爵家といざこざが……。すでに殿下には謹慎の処分を下されたのではなかったでしょうか?」


「うむ、確かにそうしたはずじゃ。だがな、官吏よ、あれで全て解決と思うか? わしはまだ、あの息子の反省っぷりを目にしておらん。しかも、兄弟のあいだで争いごとがくすぶっておるとか……? 聞くところによれば、第二王子も裏で動いているやもしれんし」


「そ、それは……」


 官吏が返答に窮する横で、セバスティアンは軽い笑みを浮かべる。まさか父がこんな場で「兄弟のいざこざ」について具体的に言及するとは思っていなかったが、いつものように彼は楽しそうだ。


「父上、そんなに気になるなら、ご自分でアルフレッド兄上を呼んで問いただせばいいのでは? わざわざ会議を開くまでもないように思えますが」


 セバスティアンが挑発めいた口調で言うと、フレデリックは「うん?」と眠そうな瞼をこすりながら振り返る。


「いや、そうは言うがな、セバスティアン。わしは前回の舞踏会で不完全燃焼だったんじゃよ。リリエッタだのコーデリアだの、わしに関係ない娘たちも騒いでいて、どうにも収拾がつかんかったではないか。…うむ、ならば改めて正式な場を設けて、王太子の問題をはっきりさせればよかろう」


「……父上、まさかまたそういう突飛なことを? 公務も山積みのはずですが」


 セバスティアンの言葉を待つこともなく、フレデリックは杖を高く突き出して宣言する。


「決めたぞ。王太子の問題を公の場で再度問う! 今度は正式に“王家会議”を開くんじゃ。先の舞踏会と違って、しっかり場を設けてな。……昔の王もこんな方法を使っていたはずじゃ。ん? 違ったかな……とにかく開くぞ!」


「は、陛下……! また大混乱になるのでは、と懸念の声がございます。前回の騒ぎをご覧になって……」


「いいの、いいの。わしは眠いし、あれこれ細かい手続きはおぬしら官吏がやればよかろう? どのみち、アルフレッドも謹慎中といいつつ本当に反省しているか分からんし、第二王子もなにか動いてるらしいし、いっそまとめてこの場で裁こうではないか。ん、わしの若い頃ならどうしてたか……忘れたがな!」


 官吏たちが「また始まったよ」と苦い顔で視線を交わす。だが反論できる者はいない。この国の国王がこうと決めたら、たとえ耄碌じみた思いつきでも進んでしまうのだ。それこそ舞踏会騒動が再び繰り返されようとも、フレデリックはやる気らしい。


「父上、本当にそんなことを? 王太子の謹慎が形骸化しているなら、おとなしく尻尾を巻くのを待つほうが得策かと思いますが」


 セバスティアンがあえて困惑を装って口を挟む。だがフレデリックは眉をひそめ、ハッとした顔で半分寝ていたような瞳を少し見開いた。


「何を言う、セバスティアン。おまえは賢いと思っとったが、今回は消極的ではないか? ここで王太子をはっきりさせておかねば、先々面倒になる。公爵家とやらも最近なにやらうるさいし……その娘は……リリエッタだっけか? まあよく知らんが、また騒ぎを起こすんじゃろ?」


「確かに、次の騒ぎはほぼ確実に起こるでしょう。父上がそこまで言うなら、僕も協力しますよ。兄上と公爵家がまたもめるなら、それを正すのも国王の務めですからね」


 セバスティアンが唇の端をゆるく引き上げて微笑む。官吏たちは怯えたように顔をこわばらせているが、フレデリックにはそこまで視野に入っていないらしい。彼は杖をクルリと回してテーブルに立てかけると、豪快にあくびを噛み殺す。


「よし、なら決まりじゃ。官吏ども、さっそく準備を始めろ。呼び名は……そうだな、『王家会議』だ。皆の前でアルフレッドを問い詰め、何がどうなっているのか聞いてやる。公爵家にも来させろ。第二王子も当然出るじゃろう、もちろんセバスティアン、逃げるなよ?」


「逃げませんよ、父上。むしろ楽しみですね。……ああ、いえ、しっかり兄上の動向を見守ります」


「うむ、やはりわしの血を引くだけあって頼もしいのう……ふぁあ、眠い。もうよいぞ、皆。わしは眠るから、後は勝手に進めてくれ。書類はあとで見てやる」


 フレデリックの無茶苦茶な号令に官吏たちが翻弄される姿は、もはやいつもの光景。誰も逆らえないまま、「では準備を進めます」と深々と頭を下げ、慌ただしく退室していく。 セバスティアンはその姿を見送ると、斜め後ろで杖に寄りかかろうとする父を一瞥し、涼しげに「僕も失礼します」と礼をする。


「うん? どこへ行くんじゃ、セバスティアン。まだ話があるかもしれんぞ?」


「失礼、僕も早速動いてみようかと。父上の思いつきは急ですからね。兄上や公爵家に先手を打たれては面倒ですので」


「ふむ、頼もしい限りだな。……なら好きにするがいい。わしは少し眠る……また後でな……」


 国王が椅子にもたれかかると、セバスティアンはくすっと笑いを噛み殺した。父の耄碌じみた思いつきも、上手に使いこなせば自分の思うとおりに事態を運べるかもしれない。さっきまで眠そうな目だった国王が一瞬だけ鋭い決断力を見せるのも、ある意味では彼ら父子の特徴と言えるだろう。


「では失礼します、父上」


「うむ……ああ、眠い……。官吏ども、うるさくするなよ……」


 フレデリックが杖を倒しそうになりながらうつらうつらとする一方、セバスティアンはその背を見送りつつ目を細める。『王家会議』という正式な場に、コーデリアやアルフレッド、そして公爵家やリリエッタが呼び出される。その混乱を想像するだけで、彼の胸には愉悦が湧き上がっていた。


「なるほど、また面白いことになりそうだ。兄上やコーデリアの動きと合わせて、これでますます祭りが大きくなるだろう」


 そこまで心中で呟くと、セバスティアンは踵を返して廊下へ出る。すれ違う官吏たちが彼を見てぴくりと萎縮するが、当人はむしろおかしそうに微笑みを返すだけだ。 王太子問題をまた公にする――父の方針は突飛だが、利用価値は絶大。今度の舞台ではどんな役回りになるのか、セバスティアンは思案しながらも、そのすべてを楽しむつもりでいる。


「さあ、リリエッタや公爵家、コーデリア、そして兄上……全員がどう動くか。これほど楽しみな舞台もない」


 澄ました顔で廊下を進みつつ、彼は一人ごちる。国王フレデリックの耄碌じみた宣言に、今度こそ国中が巻き込まれるだろう。この“王家会議”とやらが、果たして前回以上に波乱を起こすのは間違いなさそうだ。

 ――こうして、フレデリックの一言による“真相究明”第二幕が幕を開けようとしている。眠気交じりの国王と、腹黒な第二王子。それぞれの思惑が絡み合い、この先またしても大混乱が生まれるのは必至だ。さあ、次に誰が、どんな笑えない失態をさらすのか――王宮に漂う空気は、一気にきな臭く変わっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ