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“王太子ざまぁ”を目指したはずが、家族と第二王子が過激すぎて大勝利になりました  作者: ぱる子


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第4話 父(狂犬公爵)の武力介入!?③

 王宮の会議室――といっても、簡易的に開かれた“貴族たちの集まり”に過ぎない場で、王太子アルフレッドの声がやたらと響いていた。

 しだいに貴族たちの冷たい視線が注がれる中、彼はまるで子どものように机を叩きながら喚く。


「いいか、おまえたち! あの公爵家は危険なんだ! 俺が婚約を解消してやった途端、何かと圧をかけてきやがる。暴力的で乱暴者だって聞くだろう? そんな輩は排除するに限る!」


 威勢のいい言葉とは裏腹に、貴族の面々は「また始まったよ」とげんなりした表情を浮かべていた。アルフレッドが何か気に食わないことを見つけるたびに、このような会合を勝手に召集して大騒ぎするのは、もはや日常茶飯事だからである。


「……殿下、それはあくまで噂でして。公爵家は以前から国の柱として功績を――」

「黙れ! あいつらは危険なんだ! ええと、そう、父上からも聞いてる! あの公爵は戦場で狂犬みたいな呼ばれ方をしていたと……とにかくヤバいだろう!?」


 言いがかり同然の主張に、周囲の貴族たちは視線を交わして困惑していた。確かに公爵は恐れられている部分があるものの、それ以上に彼の功績や影響力は国にとって欠かせない。王太子がこんな形で排除を叫ぶのは、さすがに筋が通っていない。


「殿下、しかしながら公爵家が全面的に国へ敵対するなんて話は聞きませんし、むしろ殿下が一方的に――」

「うるさい! 俺をバカにするのか!」


 アルフレッドは怒りを露わにして声を張り上げ、机に両手を突く。貴族たちがますます引き気味になっていると、そこにひょいと現れたのがコーデリア・フローランだった。きらびやかなドレスを身につけ、気取った足取りで殿下の隣に立つと、やたら高圧的な調子で口を開く。


「そうですわ、殿下のおっしゃるとおり! あの公爵家なんて、今や粗暴な噂ばかりですもの。皆さま、これ以上の被害が広がる前に排除すべきではなくって?」

「そ、そうだろう!? コーデリアが言うように、あいつらは危険な暴力集団なんだ!」


 まるで漫才コンビのようなやり取りに、貴族たちはただ苦い顔をするしかない。中には「誰がそんな話してるんだ」「そりゃ公爵がちょっと怖いのは否定しないが……」という声も上がるが、アルフレッドとコーデリアは全く聞く耳を持たない。


「な、なあ! 公爵家なんて、ろくでもないじゃないか! ほら……あれだ、確か過去に戦場で血の海を作ったとか……」

「ええ、殿下。その話、私も耳にしておりますわ。だからこそ私たちこそ正義なのです。ここでしっかり締めておかないと、国が危うくなるかもしれません!」


 コーデリアは必死にアピールするが、その言葉が本気で響いているようには見えない。周囲の貴族たちはそもそも、この場が正式な会議と呼べるかも怪しいのに「なぜ呼び出されたんだ……」という顔をしている者が大半だった。


「正義とか言われても……公爵家は、むしろ国を守ってきた実績のほうが多い気がするが……」

「そうだよなあ。少なくとも殿下が彼らを毛嫌いするほどの理由は聞かないな」


 ひそひそと交わされる囁きに、コーデリアは苛立ちを隠せない。ここでうまく殿下に取り入って、自分こそ新しい王太子妃にふさわしい存在だと思わせたいのに、イマイチ周囲が乗ってこない。


「殿下、皆さま! 今こそ声を上げるべきですわ。公爵家の影響力は脅威になるかもしれません。まさに私たちにとって大きな……」

「…………」


 しかし、あまりにもヒステリックなコーデリアの訴えに、貴族たちの視線は冷たい。アルフレッドは自分の主張を補強してもらいたい一心で、「そうだそうだ」と頷くだけ。そんな二人の様子を見れば見るほど、傍観する貴族たちは「このコンビ、大丈夫か……?」と不安を募らせる。


「殿下、そろそろ時間も……」

「誰が時間を気にしろと言った! 俺が話したいだけ話すんだ!」


 殿下が怒鳴り声を上げるたび、周囲のモブ貴族が目を逸らす。彼らの胸中には、もはや「王太子があれでは国が不安すぎる」「公爵家がどうとかより、王家のほうがよほど問題なのでは」などの感想が渦巻いていた。


 コーデリアも「私たちこそ正義……」と繰り返すが、貴族の誰一人として本気で賛同する様子はない。むしろ「このお嬢さん、いつから殿下にすり寄ってるんだ?」と苦笑されるばかりで、当人は気づいていないのか、殿下に媚を売り続ける。


「なあ、コーデリア! 公爵家を排除する方法を一緒に考えてくれよ!」

「ええ、殿下のためでしたら、私も全力を尽くしますわ!」


 この微妙な掛け合いに対し、貴族の何人かは露骨にため息をつく。周囲からのリアクションを感じ取ったのかどうか、コーデリアは焦り始めたように見えるが、アルフレッドは相変わらず気づく気配もなく息巻いている。


「くそ、誰も俺を支持してくれないのか? そうだ、いいか、誰だってわかったら俺に報告するんだぞ? 今なら多少の褒美はやる!」

「は、はあ……(まさかこんな場で褒美までちらつかせるとは……)」


 見れば誰も手を挙げる気配はない。殿下がバカをやっていることに触れたくないのだろう。むしろ「この人、どこまで自爆するのか」と生温い目で見ている者のほうが多いようだ。


 結局、この“貴族会議”もどきは、アルフレッドが公爵家への危険性を主張し続け、コーデリアが「殿下は正しいのですわ!」と相槌を打つだけで終わってしまった。現場にいるほとんどの者は「何をしに呼ばれたんだろう……」と落胆しながら、会場から早々に退出する。


 そんな状況にも気づかず、アルフレッドとコーデリアはまだ騒ぎ立てている。二人の声は虚しく会議室に響くだけで、周りの者はもう相手にもしていない。まるで一人芝居のような場面に、そこかしこで小さな失笑がこぼれ始めていた。


「ほんとに大丈夫か、あの殿下……?」

「なんだか先行き不安だな……」


 貴族たちのひそひそ話は、やがて一つの結論に落ち着く。

 ――公爵家うんぬんよりも、王太子がこれでは国がどうなるのかと。

 この日、アルフレッドは公爵家排除を謳って吠え続けたものの、誰からの支持も得られず、むしろ周囲の不安をより深めただけで終わったのだった。気づかないのは彼と、その取り巻きになりきれないコーデリアだけ。そんなズレたコンビの“自爆”に、場は見事なまでに醒めきっていた。

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