87 私の魔力は普通のスライムすらレジェンド化させる程度の能力のようです。
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『え――。これ以上レジェンドモンスター様と契約するなんて恐れ多いですよ』
『契約したら面白い事を教えやろう。ほれ、契約だ』
そう言うともうごり押しとだと言わんかりに契約の印を出されたので、渋々契約をする事となった。
これには職員さんとドマが驚いていたけれど、そのまま念話は続く。
『あそこの飯を食わなくなったスライム貰っていくといい。奴は鉱石しか食わぬが自分の生成した物は食えぬらしい。生成するのは銅、鉄、銀、プラチナ、他にはミスリルやオリハルコンだ』
『うぇ……値段高くなりません?』
『バレていない。まだ職員にもバレておらぬ。ヌシよ、今こそが選び時だ。ただのスライムだが飼うだけの価値はあろう』
『もー。仕方ないなぁハクは』
『我の名はハクか、よいよい。この白い毛並みは我の自慢よ』
「この子から契約を求められちゃったので貰って帰りますが、そこのスライムも貰って行って良いですか?」
「飯を食わんぞ?」
「食べる餌は色々試してみます」
「ふむ……まぁ死んだとしてもスライムだしな。良いぜ、銅貨3枚でスライム、ホワイトタイガーはもう契約しちまったからな。金貨50枚だ」
そう言うと私は金貨50枚と銅貨3枚を出し、更に従魔契約書を作って貰いホワイトタイガーのレジェンドモンスター様を『ハク』と言う名にして、スライムの方はと言うと、意思疎通は出来るけどタキのように言葉は分からず、ただ嬉しそうなオーラを感じたので『岩田』と名付けた。ネーミングセンスが無いのは理解しているけれど、「イワタ……変わった名前を付けるんだな」と言われて恥ずかしかった。
こうして岩田とハクを連れて馬車に乗り込みドアを閉めると――。
「ハクドノ、オケガヲ ナオシマショウゾ」
「うむ、よろしく頼むぞ」
「え!? 姉様よもやこのハクと言うのは」
「レジェンドモンスター様です……」
「姉様……」
「うう、契約の押し売りです!!」
「ああ……」
思わず可哀そうな人を見る目でドマに見られてしまった……致し方ないけれど悲しい。
そしてドマの膝の上にいる岩田は普通のスライムだけど、若干性質が違うスライムだと伝えると驚かれた。
「この岩田も違うんですか?」
「岩田君は、餌は自分で生成した以外の鉱石。その上、銅、鉄、銀、プラチナ、その上ミスリルやオリハルコンが出せるそうです」
「は!?」
「くっ! 私では出せないミスリルやオリハルコンを出すスライム……私はスライムに負けた気がします!! 最早私の上位互換!!」
「いやいやいや、これもただのスライムじゃないですね!?」
「イワタモ アイジョウ ソソゲバ シャベレルヨウニナルヨ」
「で、レジェンドモンスターになったりしません?」
「ンー……。ケッコウ トクシュ ダカラ ヘンカ スルカモ!!」
「「岩田……」」
そう私とドマが口にすると、プルン♪ と揺れて嬉しそうだ。
取り敢えずアイテム生成してプラチナを上げると喜んで食べていたので、この子は意外とグルメなのかも知れないと思いつつ二号店に帰宅。
また新たに二匹の魔物を連れて来たので「両方レジェンドモンスターなの?」と普通に聞いてくるこの家も凄いけど――。
「今レジェンドモンスターは我のみよ。岩田は今後の成長次第だな」
「わ! 凄いイケメンボイス!!」
「いい声してるねぇ……」
「所でヌシよ、我は腹が減った。手ずから何かを食わせてはくれんか? 我は何でも食すが肉が何より好きだ」
「えーっと。じゃあ契約した記念と言う事で【お取り寄せ】で……」
そこで和牛ステーキ肉を取り出し手づから食べさせると、目を見開いてバクバクと食べている。きっと美味しいんだろうな~。それ高かったもん。
「うむ! うむ!! 実に、実にうまい肉であった!!」
「本当は焼いた方が美味しいんですよ? お爺ちゃん達が食べている料理も食べて下さいね?」
「料理? ああ、人間どもがしているな。施設にいる間にチラリと見た事がある。楽しみにしておこうではないか」
「ご飯に文句はつけない事! いいですね?」
「うむ!」
「しかしホワイトタイガーの赤子に擬態してるのか。ははは、意外と可愛いんだな」
そう言って【魔物の悪魔】の異名を持つエンジュさんはハクの頭をナデナデしている。
ハクもされるが儘だし、エンジュさんが抱き上げて抱っこすると、ハクは「この者と番か?」と聞いてきたので「そうですよ」と言うと「うむ、理解出来る」と納得されてしまった。
「どちらも聖なる力をもっておるな……」
「聖なる力ですか?」
「心が余りにも清らかすぎる。そなた達二人がレジェンドモンスターに愛されるのはその為だろう」
「へ――。ユリは知ってたけどエンジュもかい?」
「エンジュノ ソバハ キモチガイイヨ」
「普通のスライムからはどう感じるのかしら」
そう言って岩田を抱きしめると、プルルンプルルンと動いて喜んでいるのが伝わってくる。
岩田は甘えん坊かな? そう思っていると――。
「イワタカラ ハクヲ タスケテクレテ アリガトウ ッテ」
「岩田が?」
「うむ、岩田は魔物にやられて怪我をしている我に付き添うように地下の岩の隙間から出て来たのだ。それからこの国に来るまで支えてくれてな。ちなみに餌が無くて困っていたらしい。地下にある鉱石は全て食べつくしていたらしいからな」
「わぁ」
って事は金鉱山の下はミスリルやらオリハルコンが沢山あったって事だ。
それを食べつくしたのか。だから生成出来るようになったのね。
タキ曰く、あのまま魔物協会に居たら明日にも死ぬところだったらしく、かなり恩を感じているので早く進化したいとの事だった。
ただ、進化のやり方なんて知らない……どうしろと。
「聖なる力を持つ者の傍や、聖なる泉が時折1分間だけ湧き出る瞬間がある。我もその聖なる水を飲んでレジェンドになったのだが、出る場所はランダムだ。数百年に一度、一分間だけ湧くのでレジェンドモンスターになれるモンスターは少ない。無論生まれながらレジェンドモンスターになるモンスターも極稀にいる。タキのようにな」
「なるほど」
「岩田はヌシとエンジュの傍にいれば何れ進化するだろう。一応まだただのスライムだ。移動の少ない者はこの場合だとエンジュか? エンジュの傍にいれば早くレジェンドモンスターにはなれるだろう」
「魔力を食べるんだろうか?」
「どうでしょう?」
「スライムは何でも食べるが、聖なる力の魔力を食べさせるのは良いかも知れん。だが聖なる魔法は回復魔法となるが、エンジュは使えるのか?」
「簡単な回復魔法なら」
「ヌシは……言わずもがなだったな」
「よし、食べるか試しましょう」
そう言って掌に回復魔法を凝縮した光を出すと、岩田はビョンビョン撥ねて机に戻り、掌の回復魔法を吸い取った。
艶々に光る白いスライムになったが大丈夫か!?
「随分と濃厚な聖なる力を貰ったようだな……明日進化するぞ」
「「「「早!!」」」」
「ナカマ フエルネ!!」
そう言ってタキちゃんは喜んでいたけれど、取り敢えずハクと岩田の鑑定は明日、岩田がレジェンドになった時に見ようと決意する。
今日見るのは心臓に悪い。
「オジイチャンニ アタラシイ ナカマガ フエタコト ツタエルヨ」
「ええ、お願いね」
それから数分後――お爺ちゃんから念話が飛んできた。
それはもう大喜びの様子で、レジェンドはとても数が少ないそうだ。
それが今は、三匹もいるのが嬉しいらしい。
『私の取り合いはしないでね?』
『全員平等に愛せればそれでええんじゃ。ふぉっふぉっふぉ!! やる気がでたわい』
『ハクが言うには金鉱山を散歩中に殆どのモンスターは倒したそうよ』
『ふぉっふぉっふぉ! そりゃええ! ワシも頑張るとするかのう。もしハクの気が向いたらワシの所に来いと言っておいてくれ』
『分かったわ』
こうして念話は終わり、ハクにお爺ちゃんの言葉を伝えると顔のお掃除しながら「うむ、数日したら行こうと思っていた。岩田の進化も見守りたいのでな」と言っていたので、お爺ちゃんの手伝いには行く予定らしい。
濃厚な聖魔法を蓄えた岩田は動かなくなっちゃったし、エンジュさんが頭を撫でて上げつつ様子を窺っている。
取り敢えず明日を待つしかないか。
「イワタハ エンジュノテ スキミタイダネ」
「そうなのか?」
「アンシンシテ ネムッテルカラ アス シンカスルヨ!」
「攻撃系は持ってこなさそうね」
「ドーカナ! タノシミダネ!」
こうして終わりのミーティングでは、新たにレジェンドを手に入れた事と、明日にはレジェンドモンスターになる子がいることを伝えると驚かれたが、ロザリオスさん達三人の事務員は「ユリさんなら何かすると思っていたので想定内ですね」と余り驚かれていなかった。私って一体……。
その夜眠る岩田を他所に手作りの料理を食べたハクは「うまい!!」と叫びつつ料理を食べ終わり、大満足の中お風呂にも入ったし、岩田の方はエンジュさんが「軽くお湯は掛けてくるよ」と温泉に連れて行ってくれた。
嗚呼、私の夫が優しい。
ちなみにハクは温泉好きだった。ネコ科はお風呂嫌いだと思っていたけどそうではないのかな?
そんな事を考えつつ翌朝――。
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