女王の力
いつもお読みいただき有難うございます
「さてと、リヴィ。始めましょうか。」
「はい……えっと、どうすればよいのでしょうか??」
砲台のある塔や反王家連合軍のいる場所がわずかに確認できるバルコニーの端まで来ると、2人は打ち合わせを始めた。
「そうね、リヴィは能力のレッスンをまだ受けていないから…うん、でもまあ、私の子だし、ぶっつけ本番でも出来るでしょう。では、端的に説明するわね。まあ、ざっくりと言えば、想像して、お願いして、頭の中に浮かんでくる言葉をなぞり復唱するだけなのよ。その時に力を凝縮して作られた宝石の装飾された鞭をしならせて、地面を強く叩き着けると効果は抜群になる。広範囲に力を使う時は鞭の音が力の助長を促してくれるの。これが本当によく効くのよね。そうね、狙うは|銃を持つ兵士が押し寄せてきている場所と砲台のある場所の二か所に、滝のように大量の雨を一気に降らせなければならないわ。私の力だけではちょっと足りないのよ。だから、リヴィの力を貸してね。リヴィは砲台に大量の水を掛ける。大雨を降らせるイメージをしてみて。私は反王家連合軍の上をやるから。」
それだけ言うと母リナは連合軍の方へ体を向けた。
「えっ、それだけ!?えっと、はい、あちらですね。大砲に水を掛ける、大量に水を、雨、大量の雨?大雨ってこと?大雨ならば激しい雨ですかね…や、やってみます。」
自信なさそうであるが、オリヴィアはイメージを始めた。
「最初だからコントロールが難しいかもだけれど、なるべく大砲の真上に大量の水が集中するように、それを意識して、それからこれが肝心!心からお願いするのよ。きちんとお願いすると必ず返信があるはず。言葉が浮かんだら、それをそのまま声に出して大きな声で言うのよ。見慣れていない言語だろうけれど、あなたにならば理解して発する事が出来るはずだから。さあ、やってみて。」
大雑把すぎる母親の指導にを頑張って理解し、こなしていく。
「はい……ん!?あっ、見えた。見えましたし、聞こえました。あ、読み方も教えてくれました。」
あんな説明でもオリヴィアは出来た様だ。
「じゃあ、せーので一緒に言うわよ。」
リナが言うと、
「はい!!」
緊張した声で、でも力強くオリヴィアは返した。
「せーの!」
「$$△」
「☆#&$&%%#☆」
2人が奇妙な言葉を口走り、鞭を振るった後、頭上の天気が一変する。
辺りに黒い雲が立ち込め、ゴロゴロと雷鳴が鳴り出し、ポツポツと雨粒が落ち始める。
あっという間に雨は土砂降りとなり、もはや皆ずぶ濡れの状態で服や髪の毛が肌にくっついている。
雨が肌に痛みを与えるほど、打ち付けてくる。
敵軍が大慌て手で武器が濡れないように服に隠したりシートを掛けたりと動いているが、すでにずぶ濡れなので手遅れであろう。
大砲の周りには、唖然と空を見上げる兵士が立っている。
その時、頭上で雷鳴が鳴り響いた。
直後に、塔のてっぺんへと、稲妻が飛来する。
ドゴーンと言う、大きな衝撃音が響くと同時に、地面が揺れたような感覚が体へと伝わった。
塔のてっぺんに黒い煙が立つ。
煙が履けると、そこには、真っ二つになった砲台が、無残な姿で横たわっていた。
「「「……」」」
それを目撃した者達は息をするのを忘れていた。
一瞬、時が止まった。
「リヴィ…これはやりすぎですよ…」
沈黙を破り、リナが息を勢いよく吸い込みながら、声を出す。
「こんなつもりではなくて…ええ??どうして?」
オリヴィアは自分が想像したよりも遥かに過激に生じた事態に混乱しているようだ。
大きくひとつ溜息をリナは尽きてから、オリヴィアを優しく宥める。
「リヴィ、落ち着いて。初めてだからしかたがないわ。大丈夫、大丈夫だから。一先ず、この大雨を止めましょう。今度は雨が上がる事を想像して。雨上がりを想像するだけよ。」
「あ、うん。ええ、やってみるわ。」
沈黙し、オリヴィアは再度挑戦した。
「声は聞こえた?じゃあ、行くわよ。」
母親の言葉に、コクンとオリヴィアは頷いた。
「せーの。」
「「%#▽%$」」
パァン!!という鞭の音と今度は揃った言葉が発せられたと同時に、雨はピタリと止んだ。
七色の虹が頭上に浮かぶ。
「今度は上手くいったわね!」
「ヤッター!!私にも出来たわ。」
親子は両手を合わせ、喜び合った。
「これは…どういうことなのですか?」
ヘンリーが大きく目を見開き、喜び合う2人を見つめながら、隣に立つ国王へ問う。
きっと、隠されていた秘密と繋がっていることなのだろうと、直感的にそう思ったのだ。
父は言葉を選びながら話し始めた。
オリヴィアの血筋、凄い力持ってます