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ドルトムントの誤算

いつもお付き合いいただきありがとうございます

ゆっくりですが、最後まで投稿できたらと思っています


「こんなの認められない!!」

そう叫んで立ち上がったのはウィリアムに偏したドルトムントだ。


ドルトムントはすぐに自国の権力を使い、オリヴィアとの結婚を強引に薦めようと企んでいたのだが、一連の流れにより梯子を一気に外されてしまった状態だ。

 ドルトムントの心は、怒りで溢れていた。


「流石だな!リナ・アン・ルトゥ・ルタール=フォード!!いいや、ルトアールの次期女王よ。19年前にウェルト王国を訪れた際、王座の事など気にせず、強引にでもお前に会っておくべきであったと今更ながら悔やむよ。君は、歴代でもかなり優秀な能力の持つ主のようだな。それに、君はマリー王女にとてもよく似ている……あの御方と瓜二つだ。」

 声を震わせ、ドルトムントがリナに語り掛ける。


 リナの名に聞き慣れないミドルネームが追加されており、不思議に思うと同時に、それは何かと考え巡らす者たち。


「ドルトムント!!今すぐにウィリアム・クロスターの変身を解きなさい。無理矢理暴くわよ!」

 リナは強い口調で鞭を握り絞めて、ドルトムントに向かいそう言い放つ。


 この空間にいる者達はこの言葉と状況が全く理解できていない。


 リチャード殿下の失脚までは、意識もはっきりしていたし、理解していた。

 だが、その後のヘンリー王子の婚約を破棄に追い込んだ経由はどうだろうか。


 ここに来る前までは、ヘンリー王子の婚約者への溺愛を知っているので、婚約の破棄など微塵も考えていなかったのに。

 それなのに、彼らの婚約を破棄するということは、国にとって喜ばしい事柄であると認識し、ここにいる皆が皆、そう指名を感じ、彼女が傷つこうとも突き進んだことであった。

 そして、それが叶うと皆が満足した。

 その高揚する気持ちだけがしかりと心に残っている。


 だが、今のヘンリー王子の顔色を見て、正しい行動をしたとは到底思えない…。


 なぜそうしてしまったのかという部分がモヤとなり、突き詰めて考えられないので不安でたまらない。

 そう、今のリナとドルトムントの会話のように、肝心な部分は全く理解できない。

 それなのにこれでいいのだと思えてしまう。

 そんな不可思議な気持ちで心が埋め尽くされている。


 今の自身の状態への情報が少しでも欲しい。

 彼らはそれを持っているのだと直感で嗅ぎ取る。

 室内の者達は彼らの会話を聞き漏らさぬよう静かに聞き耳を立てていた。


 その時、開け放たれた扉から、なだれ込むように人が入ってきた。

 ウェルト王国の騎士服を纏っている。

 先頭にはカイルが居た。


 カイルが急いでリナの元へやって来ると、耳打ちをする。

 リナは黙ったまま二度頷いた。


 ドルトムントへと向き直り、こう言った。

「ウィリアム・クロスターが北棟地下に閉じ込められていたのを発見したそうよ。今、こっちに向かっているわ。さあ、観念して、変身を解きなさい。ドルー。」


 その言葉に、クククっと不敵に笑い、ドルトムントは答える。

「そうか、本人を見つけたか。参ったな~クククッ。だが、ならば降参だ…とはならないという事を、あなたはよくご存知のはず。さて、時間も稼げたようだし、私もこの場から失礼しよう。そもそも、婚姻が出来ないのならば、連れ去ればいいと言うだけのことであったと、たった今、思い至ったよ。君達は元々、私のモノだ。待っていなさい、直ぐに連れ戻す。」


 そうドルトムントが言い終わるか終わらないかに、体から黒い煙が立ち込め、ユラユラと残像を揺らし、全てが煙に変わり、すっと消えたのだ。


 それを目撃した者達が目の前の光景に信じられないと言ったようすで、目を見開き固まっている。


 そこに、1人の兵が勢いよく駆け込んできて叫んだ。

「陛下!!!!敵襲です!城が包囲されております。西門を突破されそうです!!」


 その声に、王様が椅子からガタっと立ち上がった。


 室内がざわつき、一斉に動き出した。

 西門方面を見渡せる広いバルコニーへと王と共に足を運ぶ、そこから遠くかなただが見えたものは、赤い布であった。

 赤い旗があちらこちらで掲げられている。


「あの旗は…クィーンズ公爵家を主体に集まった反王家連合の旗のようです。ルージョン侯爵家、ハングルド伯爵家、他、前よりクィーンズ公爵家の手を借りていた子爵家、それから公国のルーヴィッシュ公爵家が共闘しております。それから、陛下、あちらを…」

 兵が震える指で刺した方向を皆が見る。

 王城西部に位置する監視用に建てられた塔のてっぺんに、それはあった。


「ほ、砲台が見えます。」

 兵のその言葉に、そこに居た者達が固まった。


 確かに党の屋上に砲台が置かれている。

 その後ろには、クィーンズ公爵家の旗が靡いていた。


 この距離ならば、この場にも砲弾を撃ち込める。


「なぜ、今まで気がつかなかったのだ!!何をしていたのか!」

 陛下が怒りを含む声色で、臣下たちに聞く。


 それを聞いた兵士の1人が走り出し、責任者を連れてくる。

 その男が陛下の強い口調に冷汗を流し、しどろもどろになりながら答えた。


「第二騎士団隊長マーシャルが報告します。只今、急ぎ、情報を収集中でして…あの西部塔からの監視を任されている兵たちから話を聞き出しでおりまして、ですが、ここ数日の記憶が曖昧な者が多くいるようでして、聞き取りに難航しております。記憶のハッキリしている者の証言から先日のツインレイの儀式の際に出入り業者を装い運び込まれたのではと推測されています。アレがいつ誰の手で、運ばれたモノなのかはいまだ分かっておりません。ですが、数日前にはあそこに布が被せられ、何かがあると言う認識は記憶の曖昧な者達も含め気に留めてはいたようです。だが、上には報告はされていませんでした。誰も命令をしていないのにも関わらず、あの物体の報告はしなくてよい、放っておくようにという命令があったはずなのだと皆、口を揃えて証言しています。それから、門兵が数人、金銭で買収されておりました。今のところは以上です。」


「何という事だ…」

 陛下が容易に運び込まれていたという事実に落胆し、肩を落とした。


「何をしている!今直ぐあの者達を捕えよ!!」

 陛下が焦りを隠せずに命を出したが、すぐに横に居たヘンリーがそれを止めた。


「父上、お待ちください。まずは我々のいる場所の安全の確保を優先すべきです。御覧の通り、ここから安易にアレが確認できるという事は、彼らは無策ではないのでしょう。それに直ぐにでもこちらに砲を打ち込めるという距離です。ここは慎重に行動すべきではないでしょうか。まずは、塔の周囲に兵を向かわせ探らせましょう。突入はお待ちください。」

 親子で揉めている。


 その時である。

 城の西門が破壊され、敵軍が雪崩れ込んできたとの報告が伝えられた。



反乱軍がきたようです

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