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国葬

楽しんでいただけているでしょうか??

いつも読んでくださりありがとうございます。


 第一王子の国葬は、王都の中心に建つドラグ大聖堂で行われた。

 王城から大聖堂までの道のりには多くの国民が集まり、静かに悲しむ者、泣き叫ぶものなど、それぞれが心から嘆き悲しみ、彼を見送った。

 王太子は、それほどまでに国民に慕われる人物であった。


 大聖堂内へ入り、一番奥へと位置する聖堂中央の台へと丁寧に降ろされ、第一王子の棺は移された。

 その傍で王族が一列に並び、偲ぶ。

 身廊には国内の四大公爵家や有力貴族だけでなく、国外からの第一王子や王家と関りの深い者達が国王によって呼ばれ、着座していた。

 側廊には国内のその他の貴族が立ち、参列している。


 人で溢れていた。


 行方不明になっている第一王子の側近、王子妃の実兄が、第一王子殺害犯で疑われているようであったが、この時にはその噂話はすでに貴族の間で広まってしまっていた。

 第一王子妃は、酷く悪質な視線に晒され、今も聞こえなくはない声で陰口を囁かれている。


 それに次いで、犯人なのではと巷で噂され陰口を囁かれているのが、第二王子。

 第一王子と第二王子の後継者争いは王宮でも有名であり、揉めにもめていたのは周知の事実だからだ。

 

 そして、似たような理由から第三王子にも疑いの目を向ける者は少なからずいた。

 第三王子に関しては、他国の美しい公爵令嬢に唆されて、権力を得るために、兄を陥れたのではと言うデマも流れているという。


 彼らの誰かが王子を殺害したのだと言う噂が広まっており、注目を集めていた。

 オリヴィアにこのことは知らされていなかった。


 とても優秀で、彼がいるならば跡目争いが起こるはずがないと万人の知るところであった第一王子。

 その王子が、何者かの手によって亡くなった。

 憶測から噂は広まり、大いに膨れ上がっている。


 大聖堂での国葬の最中、第二王子、第一王子妃、第三王子そしてオリヴィアは、疑い、やっかみ、憎悪、期待、同情などの様々な視線を浴び続けた。


 式が終わり、墓地への移動が始まる。

 王家の墓地へはここに居る者達の中からさらに国王により厳選され、選ばれた者のみが向かうことになっていた。

 人数は半数ほど減る。

 参列者が続々と大聖堂から出ていく。


 残る人数もまばらになり、オリヴィアも大聖堂から出ようとゆっくり腰を上げ、大扉へと体を近づけた。


 その瞬間、

「この悪女が!!」

 という叫びが上がる。


 背後に居たはずのハロルドがオリヴィアの手を取り、その場から全力で逃げ出した。


 走り去った大扉付近では、腐った卵がいくつも落ちており、自分のすぐ後ろを歩いていた太めのご婦人がそれに当たったようで悲鳴を上げている光景を目にする。

 ああなっていたのはオリヴィアのはずであった。

 アーハイム公爵が朝来た時に、出来れば動きやすい履物でと言っていたのは、こういう事が起こることを想定していたからだっだ。


 あれは、私に浴びせようとしたものに間違いない…いったい誰が?

 卵を投げたであろう方向を確認すると、走り去る者がいた。

 足が速く、後姿のために顔は見えなかったが帽子をかぶり庶民のような服装をしている。

 だが、走っている際に腰から何からぶらりと何かが垂れさがり、それが日の光の反射でキラリと光った。



「ちょ、ちょっと、オリ、君、あっちに行こうとしてないか?だめだよ、まずは君を安全な場所に連れて行くことが最優先だから。真剣に走ってくれ!はぁ、さすがリナの娘だな…」

 アーハイム公爵からお叱りを受けた。


 大聖堂から全力で離れ、警護の者がいる王家に許可された者以外は立ち入りが出来ない地域まで来ると手は離された。

 公爵の息が上がっている。


 全力ダッシュだもんね。

 お父様と同じくらいの年らしいけど若くないのに本気出させてしまって申し訳ないわ。

 お体ご自愛ください。

 そんなことを想っているオリヴィアも肩で息をしている。

 自らは気づがつていないが、強いストレスにより体に影響が出ているようである。


 オリヴィアは呼吸を整えた後、

「あの、私なんかの為に色々とありがとうございました。助かりました。」

 お礼を言う。

 息を整えたハロルドがオリヴィアを睨んで言った。


「私なんかとはなんだ!君は何も悪くないし、こんな目に遭う謂れも無いだろう。君は怒っていいくらいなのだぞ。それから、もっと危機感を持たないといけない。もしかしたら、君はこの国を継ぐ王子の妃、さらにはのちの王妃になる可能性もあるのだから、自信と強い意志をしっかり持たなければいけない。この国は今、君に対し、とても悪意に満ちている。私が君を守るのは身体的にだけだ。精神的には難しい、だから自身で気をしっかり持ちなさい。」

 その言葉にハッとする。


 確かに、そうである。

 以前は、後継者なんて隣国の問題だし、自分には関与できないことと決めつけ、一線を引き、自分は傍観者でしかないと考えていた。


 しかし、この状況、私はこの件では主要な人物の一人となってしまっている。

 自分がこの国を動かす、この国を背負う存在へと…背中が冷える。

 考えが、自分の考えがとても甘かったのだと思い知らされた。


 それも、さっきの様子だと、オリヴィアはこの国の民に良く思われていないのだと、明確に示されたことになる。

 だから、ヘンリーは昨夜、私を守ると力強く言ったのかと、今さら理解した。

 何も分かっていなかった自分が、とても恥ずかしい。


 ハロルドの言葉を重く受け止め、今後どうなるか分からないけれど、今は自分の出来ることをしようと決意する。

 彼へ向けて強く頷き、やってやると合図をする。


「歩けるか?」

「はい、走れます!!」

 スカートの裾を強く掴み、長い布を少し持ち上げる。

 ハロルドは、その返事と行動を見てフフッと声を漏らし、くしゃりと目尻に皺を創り、笑う。


 はあ?何よ、その笑顔。

 突然の可愛いは反則だってば。

 この男はもう何なの?

 この男といると内臓がくすぐられる。

 顔は熱くなり、ソワソワしっぱなしになっちゃうじゃない。


 あああ、もう、本当にこの男は何なの!?


 オリヴィアは衝撃を受けていた。


「さあ、行こうか。」

 ハロルドの声にハッとして、オリヴィアは意識を戻し、彼に従って、周りを警戒しながら慎重に第一王子の埋葬される墓地へと向かった。


オリヴィアの感情にも、少し動きがみられるようです。


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