彼の名はハロルド・アーハイム
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翌日の早朝、クロスター公爵家には、オリヴィアの迎えに、ある人物が尋ねてきていた。
彼の名は、ハロルド・アーハイム。
ウェルト王国で宰相の任に就いている優秀な逸材で、部下からはかなり厳しい性格だと評判の人物、アーハイム公爵である。
今回の第一王子の国葬では、オリヴィアはヘンリーの婚約者という立場で、王族の席には関われない為、隣国のウェルト王国代表の王弟フォード公爵令嬢として、父と共に参列するはずであった。
彼の話によると、フォード公爵が式に出席するはずであったのだが、直前に緊急の王命がくだり、こちらへ来ることが出来なくなったとのこと。
そのため、急遽、ウェルト王国の宰相であるアーハイム公爵が駆り出されたのだと、彼は顔を合わせるや否や複雑そうな笑みを浮かべ説明し出した。
「あなたがフォード嬢ですね……初めまして、ウェルト国宰相を勤めております。ハロルド・アーハイムと申します。えーーーっと、君がとても若くて美しいご令嬢という事で、君の父上は私に任せることを酷く嫌がっていましたが、そのフォード公爵がこちらへ来られなくなってしまったので、私が彼の代役に徹するよう王から命を受けて参上いたしました。私は、私情を仕事に持ち込まない性ですので、あなたの父上に嫌われていようとも王命をきちんと遂行いたしますので、ご安心ください。とてもその、若いご令嬢である其方を、私は全力でお守りいたします。それから、一つ助言をいたしますと、若い貴女にはとてもお似合いのその靴ですが、出来れば、ヒールの高くない靴と交換する事をお勧めいたします。それから、その手に持っているレースの着いたお帽子、若い方にしてはとても珍しいアイテムですね。顔が隠れるのでとても良いアイテムだと思います。あなたは安易に顔を見せていけません。」
そう言って、優しく笑った。
この公爵、父と何やら確執があるらしいなどと考える隙も無く、最後の素敵な笑顔により一瞬で薔薇色の空気を大放出した。
話している言葉は淡々とした喋りが鼻に着くのに、なぜだか色気が駄々洩れしている。
こんな色気ムンムンな男としばらく一緒に行動することになるなんて…気まずいわ。
お父様ったら何を考えているのかしら??
私は婚約者の居る娘なのよ!?
それなのに、こんなにハンサムな殿方を傍へ寄こすなんて。
気を抜いたら色香に流されてしまいそうになるじゃない…不安よ。
この色気に酔わないようにしっかり意識を保たなければいけないわね。
気を抜けば、顔を赤らめてしまいそうよ。
かなり年が上の癖に、要注意だわ~!!
ウェルト王国で過ごしている時に、アーハイム公爵の噂はジョージや城で働く者達、社交の場で一般的なものは耳にしたことがある。
それはそれは本当に同一人物の話なのかと言った様々なものであったので、どな様な人物なのかはよくわからなかった。
父親くらいの年齢だと聞いていたのに…この人のこの色気はいったいどうなっているのだろうか!?
美形なのは父親と同じだが、父親とは醸し出している色香の種類が全く違うのだ。
大人の色気がプンプンププンと半端なく、セクスゥィィィィ~ボンバァァァイェェエイィィ~で、本当にやばい…
オジサマの癖になぜ??
誰だよ、厳格すぎて性格悪、薄ら禿野郎とか大きな声で王城の回廊で叫んでいた奴、話が全然違うじゃないかーーー!?
噂が信憑性無かったから、唯一、近しい人物から得られた情報だったのに、全く違うじゃないか!!どうなっている??
もう居るだけで鼻血出そうなお色気をそこら辺に匂わせているよ。
扇子じゃ、扇子を持て、全力扇ぎ消し去るのじゃ!!
出会い頭に危うく色香に惑わされるところであったぞ。
私は絶対に惑わされないわ!!
実はさっきの挨拶言葉で、若い若いお若いと何度も言われて子供扱いされているのだと感じていて、オリヴィアはとても不愉快であった。
顔を隠すのが良いと言われたために国王似の顔を卑下されたのだろうと受け取り、オリヴィアは内心かなりイラついていた。
それにて、彼に出会った際の困惑した感情を、色香に惑わされることなく、かなり冷静に対処することが出来たのである。
心を穏やかに保ち自分のテンションを戻すために意味不明な妄想へと走っているが、彼へとオリヴィアの心が向く事は、今のところ無いよう精神を静寂に保つ。
むしろ、自身への外見発言により、少し苦手と感じたと苦手意識を植え付け、彼への何とも言えない想いを打ち消した。
私には、婚約者がいる!!!
気づかぬ心の底で、無意識に戒める。
それと、彼の漏れだす無作為に色気を振りまくことに対しても、何だか不純だと思い込み、アーハイム公爵に対して一歩引いて接しようと脳が決めた。
これが、オリヴィアの人生を大きく変える男、ハロルド・アーハイム公爵との初対面であった。
ハロルド登場
ハロルドは、オリヴィアの両親の物語【兄さん まずいことになりました】にも出てきます




