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元カノ警報発令中

続きを読んでくださっている方々、感謝申し上げます!


 オリヴィアは心の中で、この進路を選択してしまった事を酷く後悔していた。


 いると分かった時点で、令嬢と一切目を合わせないように慎重に進んでいたオリヴィアであったが、声を掛けられてしまった以上は、彼女の真横で止まり、顔を向けるしかない。

 とりあえず微笑んでみた。


 笑顔の底で生唾を飲み込みつつ、心の中では泣き言で溢れかえっていた。


 うえええぇぇぇえん!!ジョ、ジョォォージィーー。

 あんた、本当に何やってくれてんのよ!!

 この作戦を成功させる気サラサラないじゃない!?

 だって、だってあれ、声かけてきた令嬢って、あんたの元カノじゃん!?


 声を掛けてきたのは、あんたの学院の同級生でモテ期突入して生意気な学院時代過ごしていた時の有名の恋人だったご令嬢だよ。

 先日から第一王子(ジョージ)とお付き合いしておりますって公言して、世の中をビックバンさせたカドカン伯爵令嬢じゃん!!


 お顔立ちのふくよかな体型の年齢とかけ離れた見た目の母性が溢れだしている素朴な女性。

 あの見た目でも、殿下はお付き合いなさると…。

 彼は見た目で選んでないのだわって、この人とのお付き合いで殿下の女性の許容範囲がかなり広域だと、社交界に広まったんだからね。

 ねえ、ジョージ、知っているよね?

 この人のお陰で、社交界に出てこないあなたの評判が上がったのよ。

 お付き合いの期間は短かったけれど、彼女はあなたのモテキの立役者で、社交界では無駄に有名となってしまった人なのよ。


 あ、あれ?よく見るとさ、その両脇にいる令嬢達もジョージの元カノじゃない!?

 えっ、気のせいかな?このテーブル、歴代揃い組よね??


 ん??ちょっと待ってよ。

 この人達、ジョージの顔をバッチリ知っているわよ!?


 えっ、なんで?なんでジョージはこんな計画立てたの??

 だって歴代彼女たちをここに呼んでいるのに???

 付き合っていたならば、顔を知らない訳ないじゃない。

 無理、もう無理…超難関問題を軽いノリで出された気分だわ。


 ああ神様、私を助けてください。


「は、初めまして、小鳥ちゃん。な、何かご用かな?」

 引き攣りそうな口元と目頭を精一杯抑え、飛び切りな笑顔でカドカン伯爵令嬢へと必死で返事をするオリヴィア。


「くぅぅ、イケメェンン(小声)」

 カドカン伯爵令嬢、間地かで男装オリヴィアを見て、思わず声が出してしまう。


 そんなカドカン令嬢は、イケメンな空気に流されてはいけないと咳払いをして気を取り直す。


「オホン、申し訳ないのですが、私は貴殿の茶番には付き合いませんわ。貴殿はいったい何者ですの?私の知っているジョージ殿下は、貴殿ではありませんわ!!殿下の名をかたる不届き者!今すぐ どこの誰なのか、名乗りなさい!!」


 オリヴィアを見て、頬をポッと赤く染めていた周りの令嬢(元カノ)達も、彼女の言葉に正気に返り、力強く賛同しているのだと頷いてみせる。


 それにしても、元カノ軍団、よく同じテーブルに居られるなあ…。

 あっ、そうか、ジョージの元カノがこんなに仲良くしてられるのも、私のお陰だったわね。


 学院に入学して一年半、私はこのジョージの女関係の尻拭いをずっとしてきたのだから。


 手紙やプレゼントの代筆、代理や手配、デートの検索や二股三股のブッキング回避、別れてからの後処理(フォロー)も、はたまた学院内での殿下と女性絡みの様々なトラブル処理など、女のお前ならば容易いよなと、全ての問題を私に押し付けてきて、それを私は必死でやってきたのですから、全ては学院の真の平和のために。


 という事で忙しすぎて、私の成績がかなりヤバいことになっているのだけれどね。

 あ~、早くジョージ卒業してくれないかなって常日頃から考えている。

 今だって現実逃避したいけれど、今は駄目よね。

 真剣に取り組まなければ!


 グッと我慢して脳を再起動。ブゥゥゥン。

 そう、今はそれどころじゃない!!


 

 只今、難関問題が出題させたよ。

 第一問 ピロリーン♪

 ジョージの元カノが確信ついてきたよ!さあ、あなたならばどうする!?

 さあ、この難問を突破せよ。

 ジャジャーン♪


 もう、本当に何をやっているのさ、ジョージィィ!?

 半泣きになりそうなのをグッと堪えて、頭をフル回転させる。


 あっ、そうだ!この手でいこう。


「やはり、私がジョージ殿下ではないとうことは、彼を知っている貴女方ならば、分かってしまいますね。そうです、私は、残念ながらジョージ殿下ではないのです。」


 第一幕“ 私はジョージ殿下ではない "の公演が始まります。

 オリヴィアの迫真の演技に全令嬢がスタンディングオベーション!!になるかも?


 そう、ここは舞台の中央。

 そして、天井からの光が私へと差し込んでいる。

 今がこの公演のクライマックス!!

 頑張れ、頑張るのよ、オリヴィア!!


 オリヴィアの言葉に、周りを囲っていた令嬢達が数歩下がり、オリヴィアを警戒して距離を開けた。


「その事はすでに知っているわ。貴殿はいったいどこの誰なのかって聞いているのよ。」

 カドカン伯爵令嬢が苛立ち、口調が荒くなる。


 その間、周囲の令嬢がオリヴィアを不審な目で見始める。

 これまで奥のテーブルへと誘導出来ていたオリヴィアに対する好意的な雰囲気は、微塵も無くなってしまっていた。


 まるで犯罪者を見るような目、囁かれる悪意を持つ言葉が、オリヴィアの悲しみの感情を刺激する。

 その感情に蓋をし、冷静に対応する。

 オリヴィアはうつむき、そっと目を閉じた。


 寝たのではない。

 次の手を出すための、神経を研ぎ澄まして空気を読んでいるのだ。


 初端の唐突な質問で一度失敗したので、次の難題には、もっとよく考慮し対処しなければと、頭をフル回転させ絞り出した結果だ。

 そして、思い描いたシナリオを演じ始めている。


 ほんの一瞬、令嬢達のざわつく声が途切れた一瞬である。

 オリヴィアが、顔を上げ一言告げる。


  IT’S SHOW TIME♪


「皆、すまなかった…。」


 一気に通ったその声に場が静まり返る。

 暗闇の中、ポツンと一人佇み、スポットライトがオリヴィアの頭上から1つ、彼女だけを照らすかのような孤立感。


 令嬢達の視線の先に居るオリヴィアは、とても悲しみに満ち、心痛な表情を浮かべていた。

 今にも泣き出しそうな美しく後悔の滲むその表情に、令嬢達の胸は強く締め付けられる。


 それに、あの方から笑顔を奪ったのは、私達なのだ!!!と…何故だか、罪悪感が湧いてくる。


 オリヴィアは続けた。

「すまない。君達を傷つけてしまった…だが私は…私は、嘘は言ってはいない。そして、皆を騙すつもりはなかった。しかし、自分の事を隠したままであるが故に、結果として、同じ想いを皆にさせてしまっていた…すまなかった。」


 言い終えると、胸に手を当て握り、頭を軽く下げる。

 目尻にキラリと涙を滲ませて…。


「私は…私の名は…ギリッ。今ここで名乗ることが出来ないのだ。すまない…すまない…」

 自分の正体を話すことの出来ない影のある美少年に、令嬢達が彼の複雑であろう生い立ちを妄想し、何故か同情しだす。

 陰のある彼に再度魅了され、心を持っていかれ、彼へと向けていた憎悪が次第に消えていく。


「ただ一つだけ言えることは、私の素性は、そこに居るチャールズが保証してくれるということ。私は悪党でもないし、王子と会話できるくらいの身分であることは間違いないのだ。名乗れなくて、本当にすまない…」


 いったい彼は誰なのかという事よりも、名前を言えないと苦しんでいる彼を自分が救ってあげたい…そんな使命感が令嬢達に押し寄せるのであった。


「私からも、彼は王家に近しい信用できる人物だと宣言する。私の昔からの友人だ。名乗れないのは…ふ、複雑な事情があるのだ。だから、私からも彼の素性を話すことはままならない。彼を責めないでやってほしい。」

 チャールズが助け船を出した。


 

この一言が、再び令嬢達の歓迎モードへの変換を加速させた。



次回、遂にジョージが入場。




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