一泡吹かせる
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突っかかってきていたジョージの元カノことカドカン伯爵令嬢は、根が優しい良い人である。
そして、想像力が極度に富んだ御方であった。
この時、彼女の脳内に突拍子もない考えが浮かんだ。
なんたって目の前に居る美少年は自国の国王に兎にも角にも似ているのだ。
第二王子を親しく呼ぶ間柄であることから、もしかしたら、世間には公表出来ない王家と深く関りのあるとてつもなく複雑な事情を抱えた人物なのではないかと。
妄想を最大限に膨らましたのち、オリヴィアの事を一階の貴族令嬢がこれ以上深く追求してはならないと決めたらしい。
それにより、カドカン令嬢は、優しい気遣いの言葉をオリヴィアへと掛けてくれた。
「我々はこれ以上、貴方を追及いたしません。色々と複雑なご事情があるようなので…貴殿は大層ご苦労をなさってきたのですね。ここにいる皆、貴殿の味方ですわ。ですが、お名前がないのは少しばかり不便ですわ。貴殿を何とお呼びしたらよろしいかしら?」
カドカン令嬢は涙を浮かべながらそう話す。
すっかりオリヴィアに気を許したのであった。
「ご令嬢…本当にありがとう。そうですね。私の事は好きに呼んでいただいてかまいません。私に似合う呼び名で、ご自由に。」
眩しいほどの爽やか笑顔を向けてオリヴィアが返すと、
「白、薔薇…白薔薇様と呼んでもよろしいでしょうか!?」
そう令嬢からの返事が来た。
「えっ、白薔薇!?あ、はい、ではそれで。」
一瞬戸惑ったが、許可した途端。
「「「「「白薔薇様!!」」」」」
いっせいに呼ばれた。
その後、オリヴィアは、殿下の話を織り交ぜて彼女達と話す。
ここに居る方々は、皆、殿下とお付き合い経験がおありですよね!と、殿下と自分はかなり親しく、色々聞いているのですよと、情報有りますアピールをしたのだ。
すると、ジョージの元カノたちが食いつてきた。
その話を聞いていた噂好きの令嬢やオリヴィアに惚れてしまった令嬢達も後からゾロゾロとついて行く。
という事で、元カノ達も回収し、奥のテーブルへと大きな塊となり、オリヴィアは再び進むのであった。
結果、なんやかんやで、会場内のほとんどの令嬢をオリヴィアは奥のテーブル付近へと連れて来ることに成功した。
1つのテーブルに座ることの出来ないくらいの令嬢達が、オリヴィアを囲むように集まる形となっている。
もっと傍で話を聞きたいと、椅子だけオリヴィアの近くに持ち寄る強者も沢山いた。
これは上から見るとまるで華やかな花のブーケのようだ。
この美しい光景を作っている場面に、ノコノコと…いや、かなり急いだ様子で、使えない例のお友達と共に慌ててお出ましなこの男、ジョージ殿下の登場である。
「んな!?こ、これは…いったい…どうなっているのか…」
ぷ~クスクス。
やってやったぞぉぉぉお。
私の大勝利だ!あの顔が見たかった。
ガッハハハハー。
庭園入口付近でジョージが地団太を踏んで無茶苦茶怒っているのをチラチラと視線を動かして確認し、令嬢達と会話をしながら、心の中で大笑いをする。
あ~最高に楽しい!!チョー楽しい。
負け犬王子が大きく腕を振るいながら大股でこっちにやってくる。
「これはいったいどういう事だ!?私の誕生16年を祝う会のはずだぞ!私が誰だか分からぬのか!?俺だ、俺が第一王子ジョージだ!おい、本物はこっちだぞ!」
ジョージが顔を真っ赤にして怒鳴りながら進んでくる。
おそらく、ここにいる全員が私を第一王子だと思いこんでいると、彼は勘違いしている。
そして、自分の顔がこんなにも認識されていなかったのかと言う衝撃と、オリヴィアが国王に激似なことで自分は似ていないと比べ続けられたことによる昔からのコンプレックスを、再度刺激してしまったようだ。
真っ赤な顔で大噴火である。
それを見て、私は、復讐完了の悪い顔をしたいのをグッと堪え、飄々と席を立ち、彼へと爽やかに声を掛けた。
「ジョージ殿下~遅かったじゃないですか〜さあ、盛大なネタバラシをしてください!と言っても、私が第一王子ではないことは、すでに皆にはバレてしまっていますけどね。」
軽々しく発せられたオリヴィアの言葉に、ジョージが素っ頓狂な声を上げた。
「ふぇっ??バ、バレているの!?どういう事だ?」
「どういう事って…殿下の正面に居るご令嬢をよく見てくださいよ。見覚えは、もちろんありますよね?理由は明確でしょう。」
オリヴィアが元カノ軍団の方に手先を向け、ジョージに軽い嫌味を言った。
ジョージには相変わらず、嫌味は伝わっていないが、オリヴィアが言いたいことを、元カノ達を見て理解した様だ。
アッと小さく声を漏らし、口を半開きにしたまま停止している。
たった今、彼女達がここに居ることに気が付いたようだ。
まったく、アッじゃないわよ。
元カノ達が招待されているということは、意地悪ではなく、ただ単に抜け落ちていただけみたいね…本当におバカなんだから。
ようやく、これでこの作戦の落とし穴に気づいたジョージは、オリヴィアを見て、罰が悪そうにしている。
私にサッサと謝れ~。
オリヴィアはジョージの顔に内心イラっとしていたが、感情を抑え、早くこの茶番を終わらせるために彼のもとへ近づき、皆に聞こえるようにジョージに話し掛けた。
「さあさあ、殿下。サプライズの時間ですよ。」
当初の予定通り、ここでオリヴィアであるとネタバラシがされた。
ジョージがサプライズで行った演出だと告げられると、令嬢達は面白い反応を見せる。
オリヴィアの男装姿に、はまってしまったという声が続出したのであった。
もっと白薔薇様として会うような機会を作ってほしいとまで要望された。
友好的で和やかな雰囲気に会場中が包まれていたので、怒っていたハートフィル侯爵の子息達もこの場ではと口を挟まず、第二王子と弟たちはやっと計画が終わったのかと、案著としたのであった。
ここから、オリヴィアの悪だくみの仕上げである。
ジョージへ顔を寄せて、オリヴィアは小声で話す。
「ああ、そうでした。ちなみに、私の周りに集まらなかった優秀な婚約者候補のご令嬢ですが、あちらにいらっしゃるシュゼイン公爵令嬢エレノア様だけとなっております。殿下、お相手は決まりましたね!」
ジョージが彼女を視界に入れ、彼女の座っているテーブルを確認する。
そして、私の方を勢いよく振り返った。
彼の表情が悔しさで溢れている。
オリヴィアは知っていた。
ジョージはエレノアの事が苦手なのだ。
年上で、頭がよく、品があり、礼儀に厳しく、美しい、そして優秀、手の非の打ちどころのない令嬢だからだ。
まるで、彼らの母親である王妃様のようだと噂される逸材だ。
ジョージは、自分の両親が優れた者達であることに、かなりの劣等感を抱いている。
幼少期から周囲に両親がいかに優れているのか刷り込まれ、自分が彼らの様になれると信じ沢山の努力をしてきたが成果は上がらない、ここ最近は彼らに並ぶことは、ままならないのだと気づき始めていた。
という理由からか、御存じの通り、努力するのを辞めて、良からぬ友人を作り、つるんで馬鹿をしては楽しくやっている。
幼馴染であるオリヴィアは、その事をよく知っていた。
それに、幼少期から、シュゼイン公爵家から彼女を王子妃にとプッシュが強く、恋愛結婚に憧れる彼はそれを快く思っていない。
色々な事が重なり、ジョージは彼女を遠ざけているのだ。
「もうそれはいい!お前は第一王子でないのは、バレているのだろう?それならば、ここに集まっている者は、権力目的ではない。そうだろう?」
「ええまあ、そうなりますね。それでは、あなたを小鳥ちゃん達のもとへお連れしますから話をしてみてください。私から紹介します。」
小鳥ちゃん???と、頭にクエッションマークを乗せたジョージ殿下をオリヴィアは誘導する。
オリヴィアがニコニコと笑みを浮かべながら、皆の居る方へ向き直り、元気よく声かける。
「小鳥ちゃんたち~ジョージ殿下が皆とお話をしたいそうだよ。」
その言葉に、令嬢達がジョージへと黄色い歓声を上げる。
その反応にはジョージも満足げである。
嬉しそうなその顔の横で、笑顔を崩さず、オリヴィアがジョージに小声で告げる。
まだ復讐は続いているのです。
続きは、金曜昼頃に。




