第二章 キセキ視点 同期
仲間がいるだけでも、気持ちは楽になる。
RPGでも、日常でも。
ガラララッ
「キセキー、来たよー。」
「あぁ、ソウボ君。入って入ってー。」
彼は私と同時期に、この治太海病院に入院した、私と同い年の石森 創牡。
彼は私よりも下の階、三階に入院しているのだが、診察室でよく見かけていたので、いつの間にか仲良くなっていた。彼も私と同じく気さくで明るい性格なので、彼が私の病室に来ると、一気に5階が賑やかになる。
ソウボはよく教科書とノートを持って来るけど、今日は持って来てない、どうやら話がしたかっただけみたいだ。ソウボも入院する前はちゃんと高校に通っていたらしい。よくソウボが自分の通っていた高校の話をしてくれる。
話によると、ソウボはバドミントン部のエースで、大きな大会に出場した経験もあるらしい。でもその言葉通り、ソウボの体つきは、普通の男子高校生と比べると非常に整っている。よれているパジャマの隙間からはうっすらと筋肉が見えるし、動作も私より早い。飛び交うシャトルを必死になって追いかけていた証拠だ。
でも皮肉にも、そのバドミントンが原因で、ソウボは『右目』は失ってしまったらしい。
今から数ヶ月前、ケンボは大きな大会で優勝する為に、必死になって部活に励んでいた。けれどその時、シャトルが右の眼球に直撃、痛みがあるにも関わらず、そのまま練習を続けてしまったソウボ。大会の前日、急にケンボの右目が激しく痛み、病院で診てもらうと、右の眼球がバイ菌に侵食されて、失明してしまったらしい。でも、幸い右の眼球しか被害はなかったから、手術をして右目を取り除き、今は左目で日常生活が送れるリハビリをしているのだ。
でも私が見ただけでも、ソウボは普通の生活が送れている様子だ、漫画本のページをめくったり、日差しが眩しい時には自分の足で歩いてカーテンを閉めたり、自由に体を動かせるソウボに嫉妬してしまう、そんな自分が恥ずかしい。
ソウボはこのままリハビリが順調に進めば、数ヶ月後には退院できるらしい。でもソウボは、体が不自由な私を、色々と気遣ってくれた。私の病室に遊びに来る時には、必ずパックジュースを二つ持って来てくれるし、私のベッド周りを綺麗にしてくれる。
他の人から見れば、若干お節介な気もするかもしれないが、今の私にとって、ソウボの優しい気遣いが、身に染みるほど嬉しかった。ソウボの事は父も知っている、よく父が私をお見舞いに来てくれる時、ケンボが私の病室に居る事が多いからだ。それほどソウボが私の病室に頻繁に出入りしている事にもなるけど、いつの間にか父もソウボと親しくなった。
私はソウボの両親とも面識がある、前にケンボの両親が彼の病室を訪れても姿がなく、看護師さんが私の部屋に案内すると、案の定ソウボがいた。その時から、ソウボの両親も私の病室へお見舞いに来てくれるようになったのだ。たった2・3回しか会った事はないが、とても優しげで、明るい人だった