第一章 喜世姫(きせき)視点 突然変わった日常
変わってしまった日常と、「当たり前」
私の名前は大神 喜世姫、17歳の女子高生です。私の母は日本人なんだけど、父は外人。つまり私はハーフ。しかし両親は、私が七歳の頃に亡くなってしまう。
二人は外国にボランティア活動へ行く為に、信号無視した車にはねられて、そのまま即死してしまう。それから私は、父の親友である男性の元で育った。とても優しい人だったので、すぐに新たな生活に慣れたのだが、育ての父は主に外国で仕事をしている人だった。
私が小さい時は、日本で一緒に住んでいたけれど、中学校に入学した事を機に、父は今まで溜めていた外国での仕事を再開して、私は日本で一人暮らしをする事に。
一週間に一回は必ず、海外に繋がる電話で近況報告をしたり、父が日本に帰って来る時には、必ず私に顔を合わせてくれるので、あまり寂しい思いはしていない。学校には友達も大勢いるし、時々日本に滞在している父の友人が、私の様子を見に来る時もある。
そして事件が起こったのは、父が近々日本に帰って来る予定だったので、浮かれた気分で学校から帰る時の事。私はいつも通っている歩道を歩いていた時、急に大きな音が耳元で鳴り響いた直後、目の前が真っ暗になって、そのまま意識を失ってしまった。
そして目が覚めた時、私はぼんやりと真っ白い天井を眺めながら、秒針の様になる機械音に気づき、体を起こそうとした。でも、体を動かそうとした直後、急に全身に激痛が走り、口からは枯れ果てた声しか出なかった。
私が慌てている音に気付いたのか、白い帽子を被った看護師さんが、私をベッドの上に寝かせてから、近くにあった鏡を持って来てくれた。でも、自分の変わり果てた姿を見て、ようやく自分の身に何が起こったのか、薄々察した。
私の右手と左足は強固なギブスを装着されて、包帯が何重にも巻かれていた。頬には大きな絆創膏、右足の指も数本、包帯で巻かれた状態。体を動かそうとしてもうまく動けなかったのは、包帯が体を縛っていたから、そして全身に走った激痛も、自分の今の姿を見てようやく理解した。そしてすぐ、私の処置をしてくれた医師が駆けつけて、簡潔に事情を説明してくれた。
どうやら私は家に帰る最中、トラックにはねられてそのまま意識を失ってしまったのだ。私以外にも数名の被害者はいたけど、一番重傷を負ってしまったのは私だったらしい。
でも命に別状は無く、事故が起こった場所が病院の近くだった事も重なり、右腕と左足の骨折、そして右足の指が数本折れただけで済んだ。治療には一年程かかってしまうが、それでも完治はできるらしい。