第六章 キセキ視点 戻り始めた日常
私がのんびりとテレビを見ている間に、看護師さんが朝ごはんを持って来てくれた。病室にも小さなテレビはあるけど、やっぱり大画面で見ればニュースやバラエティでも臨場感が増す。
しかも字幕も大きくて簡単に読み取れる。私は視力が悪いわけではないけど、それでもやっぱり字が小さかったり字が潰れていれば読めない。それは本でも同じ事が言える。
特に画面が小さいテレビだと、小さい文字は殆ど潰れて表示されてしまうから、一体何をトーク番組の話題にしているのか、さっぱり分からなかった時もある。
そんな時、大概の人は画面に顔を近づけてしまう、私もそうだ。でもそれはさすがに目に悪い。だから入院中は、殆どテレビが見れない状態だった。もっとも、私は体が動かせ無かったから、近づきたくても近づけなかったし、音量も最大限の配慮を心掛けないといけない環境だったから、テレビは完全にインテリア状態。
でもまず、今私が一番心掛けなければいけないのは、ご飯を残さず食べて、いつでも談話室の大画面テレビを見られるようになる事。私はお茶を一口飲んだ後、テレビからは一旦視線を外して食事に専念する。
痛みが無くなったとはいえ、片手しか使えないのは変わらない。だから私は入院した当初から、スプーンでご飯をすくって食べ、あらかじめ一口サイズに切られたおかずを食べている。片手だと大きなおかずは上手く割けないからだ。
でも、さすがにずっと猫背状態で食事すれば体が痛くなる。これは私にとってはいつもの事だけど、周りで一緒に朝ごはんを食べている患者さんは、心配そうな目で私を見ていた。
これを機に、改めて自分の体の治療に専念しなければいけない。そう思っていると、ソウボが早足で食堂へ駆け込んで来た。寝坊したのか、髪が少しはねている。私を見つけたソウボはすぐに駆け寄って来る、そして私の食堂デビューを祝ってくれた。
ソウボの朝ごはんを持って来た看護士さんは、「何度も言うけど・・・」と言いかけたけど、それよりも先にソウボが謝った。多分、病院内ではゆっくり歩く様に、彼は何度も注意されてるんだと思う。慌てて歩いたり走ったりすれば、最悪点滴持ちの患者さんと正面衝突してしまい、取り返しのつかない事態にもなりかねない。
ソウボの事だたら、そこまではちゃんと配慮してるんじゃないかと私は思うけど、一応私もソウボに一言注意してあげた。ソウボ曰く、モーニングコールで看護士さんが起こしてくれたにも関わらず、看護士さんが病室から出てすぐ、二度寝してしまったらしい。
私も今日二度寝してしまった身ではあるけど、ソウボとはタイミングなどが全く違う。私の場合、二度寝しないと怒られそうな状況だったけど、ソウボの場合は不要な二度寝だった。
この時から既に
「非日常」が忍び寄って来ている。
それに気づく人は、誰一人いなかった。気づく筈がなかった。




