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第15話‐⑥



『そうか。ならば話しても構わぬか…………お主とはな前の世界で会った事があるのだよ』

「あっちの世界って……日本で?」

『左様。所用で周りを見ていなかった私も悪いのだがな、車とやらに轢かれそうになった時があったのだ。その時、お主が私を助けてくれた』

「車?車ってなんですか葵さん」

「え?あ、車っていうのはガソリンや電気とかで動く乗り物です」

「がそりん?とは何ですか?」

「…………あーごめんなさいアイル、後でいくらでも質問に答えるので少し黙っていて貰えませんか?」

「……葵さんがそう言うのなら」


アイルに抱き締められているのでアイルが話す度に吐息が耳に掛かってくすぐったいのも集中できない原因だし、なにより白虎と話をしている時になんでもかんでも質問してくるのはとてもやりにくい。

知らない事に興味を示すのはとても良いとは思うけれど、今はやめて頂きたい。


「えっとごめんなさい、それであの…あたしが白虎様を助けたと仰いましたけど…えっとあれ?あたしの記憶が確かなら白虎様はあたしのいた日本でも神様として祀られていたんじゃ……」

『ん?そうだがそれがどうかしたのか?』

「え……あー……あの…あたしのいた世界ではですね、普通の人間に神様は見えないものなのですよ?あたしが助けたのならそんな普通の人間に見えない白虎様をいや……神様を見えていないとその話は成立しないのでは?」


葵のいた世界、いや日本という国では神様は崇拝対象として色々な人間に祀り崇められてきた。

その神様という存在は日本人にとってなくてはならない存在であり、七五三やお宮参、安産祈願やお正月など行事の度に神社に足を運び色々なお願いをする場として親しまれていた。

だが、その人の中に神様が見えるという人間は今まで会ったことがない。

天眼という目を持つ者は神様という存在すらも見えると言われていたが、そもそも神様を見るというのは禁忌であり例えそんな天眼を持っていようと見るのはとてもはばかられていた。

そしてそんな天眼の目すら持っていない葵がそんな存在が見えるわけが無い。


その様な理由から葵は疑問を抱かずにはいられなかった。

だが、そんな疑問はあっさりと砕け散った。


『その時の私は普通の人間にも見えるようにしていたからな、お主でも見えて当たり前だぞ』

「……そんな事できるの?いや神様ならなんでも出来る気がする…ちなみにですよ?その時はどんなお姿をしていたのですか?」


ぶつぶつと独り言を呟きながらも、神様だからという理由で無理やり納得させた。


『うむ、その世界での私の姿は狼である。その時は違和感のないように子供の狼の姿をしていたぞ』

「え、狼?ちょっと待って下さい。白虎様は日本では狼の神様として祀られていたんですか?」

『そうだ。ん?話さなかったか?』

「話されていません」


確か、"魔除けや様々な災いから護る一柱"とは聞かされていたが、狼だとは一言も言われていない。

聞いてはいけないのかなと思っていたので聞かなかったが、ただ単に言い忘れていたのかと思うとなんだか拍子抜けだ。


『そうか。私はお主の神社の御祭神として祀られていたのだ』

「……………………は?」


そのとてつもない爆弾発言に大きい目がぱちぱちと激しく瞬きを繰り返し、口が半開きに開いた。


脳内はフル回転MAXで実家の御祭神は確か……と考えながら「え……?は?」や「実家の……御祭神?え?」とぶつぶつ呟く。


「葵さん?大丈夫ですか?」


その様子を見て心配になったのか、アイルは後ろから葵の顔を覗き込む。

だが、その声は聞こえていないのか、急にの覗き込まれたことにビクッと身体を揺らした。


「え、なななななななに!?」

「いえ、凄い驚きように心配になりまして……」

「……あ、ごめんなさい大丈夫……です、はい……多分……」


まだ頭の整理ができていないが、アイルの心配そうな表情を見てとりあえず落ち着こうと深呼吸した。

そして、白虎様に向き直った。


「あの白虎様、あたしの記憶が確かなら……実家の神社の御祭神はおいぬ様と呼ばれて親しまれていました。けれど、実際は狼の神様で……その狼の神様が白虎様?」

『あぁ。確かに人間からはよくおいぬ様と呼ばれているな。正式の名は真神、他にも大きい口をしているから大口真神や御神犬とも呼ばれているが、お主の言う通り犬ではない。私はニホンオオカミが神格化した狼だ』

「狼…………日本では絶滅したと言われていたニホンオオカミ…」


葵は白虎様をまじまじと見つめる。

この世界での姿は白虎だと言っていたので今も当然白虎、虎の姿だが、ニホンオオカミという剥製でしか見たことの無い動物の神様だと本人から改めて言われるとどうも興奮してしまう。


一度オオカミの姿になってくれないかなぁと思っていると顔に出ていたのか、お座りの状態から両前足に顎を乗せてからゆっくりと口を開いた。


『オオカミの姿になっても良いが、だいぶ話が逸れているがいいのか?』

「えっ……」


言われてみれば確かに随分と脱線しているのに気がついた。

葵は「じゃあそのお話はまた後で……」とちゃんと伝えてから、先程の話しに戻ることにした。



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