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幻影道R 第九巻   作者: SAKI
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老馬の智の章「初心に戻るべからず」その5

 全てのお仕事を終えて商業区の噴水広場のベンチに腰を掛ける。


 病院内のリハビリや外で運動は欠かさなかったのに前より息が上がり速度が上がっている。


 いつもはユイさんに連れられて二kmなんて余裕だったのに・・・やっぱり適度の運動だけでは普段の量は賄えないか・・・


「お疲れ様でした、良かったらキリさんが創った錬金ボトルを飲んでみまけんか?」


 ゼーナちゃんは隣に座ってそれを渡してきた。手渡された物は何だか金属のような冷たさと液体が入っているのか重い。


 いつも使っている革製よりも若干重い、寒い時なんかはあまりも運びしたくないかも。


「ありがとう〜ごく、ごく・・・・・・・・・・・うっぷ!?」


 口の中に流し込んだそれはとてもサラサラしていてドロドロで液体一歩手前の何とも言えない絶妙な気持ち悪いぐらいの舌触りに思わずびっくりする。


 甘いような苦いような、エグみが深くてまるで生物を粉々にしてジュースと一緒にぶち込んだのかってぐらいにドロドロで反射的に吐かなかった私を褒めて欲しい。


「ど、どうしました!?」


 私の反応にゼーナちゃんは優しく背中を擦りながら慌てている。よくもこんな物飲ませたな・・・なんて言えない。


「ぐっぷ、ゼーナちゃん、つかぬことをお聞きしますが、これ何かヤバイ物でも入ってたりしませんかね?」


 私の今にも泣きそうな程口の中は敢えて例えるなら・・・カエルを生で食べて咀嚼しながらぐちゃぐちゃの液体と苦い汁が充満した表現が一番しっくりくるかな?


 だがゼーナちゃんは味を確かめる為に返したゲキヤバ飲み物いとも簡単に飲み干して幸せそうな表情をする。


「エグみがキツイですが健康になれるぐらいの栄養ある物を沢山詰め込んだのですがお気に召しませんでした?」


 ゼーナちゃんの小動物のようなつぶらな瞳を輝かせて今にも泣きそうな姿を見せられると私はゲキヤバ口内を根性と努力と涙で無理矢理塞ぎ飲み下すと一瞬だけ見たことのない川が見えた気がする。


「うっ―――― 中々独創的な味――― だね」


 ゼーナちゃんはもしかしてゲテモノ料理とか好きなんだろうか?それか環境のせいで慣れてしまっているだけなのか?答えは明白だった。


「ふふ、これは色んな栄養素がたっぷり詰まった名付けるならフレッシュパンチですね!」


 確かにフレッシュだしパンチも効き過ぎて寧ろその独特の味が他の配合を邪魔してトンデモないマズイドリンクになってますが・・・ゼーナちゃんは物凄く興奮してるし成分何が入ってるんだろう?


「大変貴重なのですが主様がお気に召したのなら二本プレゼントです♪」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ?」


「ぬ、主様?」


 あっ、つい本音が・・・私は誤魔化すためにビンに例のドリンクを二本とも受け取る。


「あ、ありがとう〜こんな貴重な物くれるなんて太っ腹だね!」


「この度のお礼と受け取ってください、主様・・・もし・・・話す気になったら聞いてくれますか?」


 ゼーナちゃんはあの話になるとキラキラした表情から急に翳(かげ)る。それほど話したくないのか触れてほしくないのか励まさないとイケない気がして手を握った。


「うん、でも本当にゆっくりでいいからね?」


 「・・・気にかけてくださりありがとうございます、ゼーナはまだ精進しないといけないようです」


 少しだけ笑うとゼーナちゃんは最後に一礼するとその場を後にした。その背中はとても寂しそうだった。


「さて、私はどうしようかな?」


 また適当にぶらついてたら誰かに会えるかな?ゼーナちゃんはそっとしておいて取り敢えずノア先輩の所に行こうかな?


 老馬の智の章 第一章 完

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