老馬の智の章「初心に戻るべからず」その4
「デートデートデートデートデートデートデートデートデートデートデート」
人と一緒に何かを行うのは初めてでいつも孤立して生きていたらお父様やお母様に報酬を貰えていました。
でも今の主様は全ていらず単純に私と遊びに行く。
主様の行動を見て何が正解なのか見極めないと嫌われてしまう。
二時間前に座りながら頭の中で計画を考えて集合時間ギリギリになって主様は走って来ました。
「ごめんごめん、服を選んでたら時間掛かっちゃった♪」
可愛らしい服装に私はデートと知って早速エミさんに言われた言葉を使いました。
「主様、エロいです!」
「ふえ!?ど、どこが!??」
「エミさんに女の子は皆喜ぶっ・・・」
「可愛いは喜ぶけどエロは引くよ!?エミちゃんめ余計な事教えて!!」
違った?なら別の褒め言葉は??
「主様を見てるとムラムラが止まらなくて今すぐエッチな気持ちになります!」
「よーし、エミちゃんは後でボコボコにしよう!純粋な女性を弄んだから気絶するまでやろう!」
その後、主様に叱責され失敗してしまいました。
でもその後はとても幸福で主様とお洋服を選んだりこーで?して貰ったり美味しい物を二人で仲良く食しその度に幸せそうに笑うと主様に胸を打たれながら有意義な一時を過ごしました。
最後は酒場で一杯と夢のような一日がもう夜の帷が降りる頃に近くの酔った三十代後半の男性が相席している知り合いに思いもよらぬ話が舞い込んできました。
「そういえば風星に特殊な種族がいるの知ってる?」
「食人族だっけ?」
「人を食う種族、風星で一番危険だから風星のお偉い方が見つけ次第殺害するように言われてるらしいな」
「特徴は?」
「生肉を見せると興奮したり人の肉の匂いを感じ取れるらしいぜ」
「もしかして結構いるのか?」
「普通はいないさ、密告とか奴隷とかなら居るんじゃね?」
「なら冒険者に紛れてるとか!?」
「ありえそうだながははは!!」
その言葉を聞いて私は折角の幸せな一時が崩れ落ちた。
手の震えが止まらず冷や汗がどっと流れる。
「ゼーナちゃん?」
私はその場で酔いが回ってきたからと嘘を吐いて一旦外の空気を吸う為に外に出る。
体の震えが止まらず息が荒くなる。
早く忘れようとしたその時、何故か主様が私に会いに来ました。
「大丈夫?」
余程顔色が悪かったのか主様は心配の眼差しでこちらにゆっくり私に近付いてきました、私は主様を直視するのは避けたくてつい突き放してしまいました。
「すみません主様、ゼーナののと・・・少しだけ一人にさせてください、嫌な記憶を呼び起こしてしまったので」
食人族として育てられあの頃を思い出す度に忘却したい記憶の数々、中でも私は女の子の胸や尻、太腿が好物だった。
だから・・・主様が・・・美味しそうに見えて狂気に陥りそうです。
本当なら主様の指を切り落として骨になるまでしゃぶったり、胸を削ぎ落とし、下半身を丸焼きにして豪快に頂きたい。
だからあの記憶は忘れないと、食人族としての健啖さが蘇ってしまう。
主様にはそのような事をしていけない、自尊心を保っていなければ。
「そっか、わかったよ!もし気分が変わったら戻っておいで!」
「じゅるり・・・ありがとうございます」
マズイ・・・主様が美味しそうに見えてきました。
狂気に取り憑かれそうなので私は少し火照った身体を冷やし今日もちゃんと欲望に打ち勝ちました。
主様・・・いつか貴女を食してみたいです。卑しい私をいつか話せる時が来るのを願って、今日の本当の夜食は女性の脳味噌です。バレないように食べる私でした。
老馬の智の章 第一章 終




