「商業区防衛戦・後編」その13
「死んでるってどういうことよ、ユイ?」
最初に投げ掛けて来たのはサナエだった。兄妹の事はこの際どうでもいいみたいだけど少し気になってはいそう。
「確か五年前当時最強と呼ばれた傭兵軍隊【汚れた捕食者】の第一位よ」
その言葉にサナエは息を呑んだ、サナエなら知っててもおかしくないかも、他は頭になにそれ?的な顔をしている、ノア先輩は知ってるからにこやかなな笑顔を見せている。
「でもそいつの名前ってエンディンって名前だったわよね?偽名?」
「ああ、大体クラフトが作った偽名だな」
「作った偽名の数は数え切れないな、リーダーは覚えてるか?」
「クラフトは今まで撃った弾丸の数を覚えてんのか?」
「いや?」
「そういうことだな」
つまりは覚えてないのね、私があんなに苦労したのにお兄ちゃんは随分とお気楽に生きていたようね。
「確かあの時光星の水源である湖の調査の為に船を出したのに謎の感染症が全員を死に至らしめて最後は火薬も無いのに爆発して沈没したって言う謎だらけに終わった話ね、感染症は後に肉の破片から分かった事だけどリーダー諸共死亡は確定したはずよ?」
違う、あの事件はそんな簡単な話じゃない、裏の話だともっと凄惨な事件だった。
その後、お兄ちゃんから大量のお金が毎月送られてくるようになった。お兄ちゃんは元から私を裕福にする為に仲間だと思い込ませ、リーダーとして顔を立てて、冒険者や騎士団からも信頼できる最強の傭兵を演じていただけ。
私は知っている、お兄ちゃんは元からそんなゴミみたいな称号に興味なんて無い。お兄ちゃんは私と裕福に寒くも無い、苦痛を味わうこと無く幸せでのんびりと生きたいと私に言ってくれた。
その為なら仲間とて躊躇いなく手に掛けるとまで狂気的に笑ってくれた。
「全部演技でしょ?」
私は包み隠すこと無くその場にいる皆に聞こえるぐらい発言するとお兄ちゃんはふっと当然だと手振りをする。
「あんなのは髪と俺と証明できるものがあれば何でも良かったのさ、感染症は面白い発想だろ?俺は禁忌を冒して面白い能力を得てわざと感染症が蔓延する地に赴き大量に冷た瓶の蓋を寝ている奴等にばら撒いて死ななかった奴は痺れ薬を塗った飲み物を渡して俺を反逆者と豪語していた奴等は・・・死んだ」
自慢気に話しているけど皆はおどろおどろしい顛末を聞いて顔面蒼白よ、こんな人が仲間に入ったらまた同じことが起きるかもね。
「そして最後は錬金術師に作らせた威力の高い水と爆発を同時に引き起こして全ておじゃんだ」
お兄ちゃんは、ははっと笑いながら満足そうね。
「な、何でそんな事・・・・」
エミの恐る恐る聞く質問にお兄ちゃんは私を見て穏やかな表情を浮かべた。
「俺は何もしてやれない情けない兄だからな、あんな莫大な資産を築けたならもう潮時だと思ってな、アイツ等の金も秘宝も宝物も全ては俺の責務の為に犠牲なった奴等は俺を怨むこともなく消えて行った。憐れな事故に遭った人達の中で全員が一緒の灰になった訳だ素晴らしいだろ?」
悍ましくもお兄ちゃんだからこそ成し遂げる偉業、お兄ちゃんは最初からその目的だけに必死になって現実にした。
一般人なら理解なんて出来やしない、私とお兄ちゃんだけは素直に喜んでしまいそうになる。
「さて、与田話はここまでにしてどうだ?お前達は今は簡単な質問に応じるだけでユカリを助けられる、俺を引き入れて過去や事件なんか忘れればいい、こんなに単調で釣り合わない旨い話は無いぞ?」
お兄ちゃんは催促をウナ促すが皆の反応は完全に拒絶している。特にサナエは、危険なんかじゃ収まらない、最悪また同じ事をするかもしれない男を容易に頷くなんて出来なかった。
そんな緊迫した状況をぶち壊してしまった我らのリーダーがのほほんとした表情で中に入ってきた。




