エクストラ「gesamentlike stryd」 その1
「えっ、貴方達は―――― 」
少し遅れたが何とか間に合ったようだ、ユカリ達が踏ん張ったお陰で他の冒険者や騎士団も追いついたようだ。
だが情報よりも身体が赤いな。まるで皮を剥がされた人間のようだな。
出遅れた俺達にユカリは唖然とする、そこにはただ驚いているというより少し期待が入り混じっている。
「そっちは片付いたのか?」
煤けた服をしたユウガが埃を払いながら呑気に言葉を交わしてくる。
「まぁな、戦況は?」
当たり前のように会話する俺達にユカリはポカリと口を開きユウガの裾を引っ張る。
「えっ、知り合い?」
俺は手短に今回の内容と真相を聞かせると傲岸不遜の態度を取る。
「つまりは最初からグルだったんだー」
分かりやすく不機嫌になるとユウガはけろっとした表情で肩を叩く。
「だが俺等は無事だろ?」
「つーん」
完全にそっぽを向くユカリにユウガは愛想笑いをしだすが時間があまり残されていないようだ。
「くそ、何なんだこいつ!?」
「魔法が使えない!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
こんなところで喧嘩している場合じゃないがユカリも血相を変えて此方に目を向けてくる。
「・・・今なら協力出来ますよね?」
彼女の性格には似合っていない冷たい声色に俺達は表情一つ変えずに武器を取り出す。
「元々こっちをやる気は無かったが邪魔な鉄屑に更地にされるのは計画とは違うな」
丁度こいつの出番が欲しかった所だ、良い情報が取れる事を期待しよう。
「・・・・変な武器ですね」
「お前の腕にも似たようなもんあるだろ?」
ユカリは何処で手に入れたのかこの世界で作られたのか分からないぐらいの近代的な武装を右腕に取り付けられている。
外装は黒曜石と道の機械部品で作られ内装は鉄と何かの石で作られたユウガの情報だと撃つたびに弾が変わり内装から銃口が出て来る仕様だ。
はっきり言うなら複雑怪奇、理解不能の武装をユカリは所持している。
更に言うなら彼女から“異様な魔力”を感じる、それは獣と未知の病原体が一つとなりアンバランスな形から相殺され一般が持つ魔力と同じになっている・・・のだが・・・それとは別の禁忌魔法とされる【死の力】も感じる。
「・・・・・・・あの・・・・早く行きませんか?」
全てが歪なのに彼女の風貌は“普通”でしか感じられない、愛嬌が良さそうなお人好し、或いは自己は弱いが人一倍の理性的とも捉えられる。
ユイには全く縁もゆかりも無いが何処で知り合ったのだろうか?
「・・あの!」
少し考えるとユカリは痺れを切らしたのか袖を引っ張って来た。
「・・・手伝ってくれるなら・・・・私なんかより目前の敵を注視してください」
さっきまで敵だった相手に物腰柔らかな少女だ、あまり時間が無いのかそわそわしてるのを窺える。
「リーダー、可愛い女の子が助けて欲しいと訴えているんだ考察は程々にな?」
直後肘が飛んできたのを手で防ぐとクラフトは溜息混じりに文句を言ってきた。
「悪いな、珍しいモノを見ると深く考えてしまう質でな」
「そんなに気になるか?」
「いや、気になるのは彼女の魔力だ」
あの魔力、もしかしたら面白いモノを発揮するかもしれないな。恐らく彼女の“胸は燃えている”、そしてあのロボットからは獣の力を感じる。
それがぶつかり合い彼女の本当の能力を引き出せるかもしれない。
一先ずは此方から先手を打つ事にしよう、少しは良い情報が取れるだろうからな。




