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レイコとバケオのとある夏  作者: 青井在子
第六話 送り火
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 家に帰ると私は縁側に腰を降ろし、バケオは縁側に背を預けるようにして飛び石の上で胡坐を掻きながら、暮れていく空を眺めていた。祖母が人から譲り受け、年中吊るしっぱなしだった風鈴が風に歌っている。普段は気にも留めていなかったその音が、美しいと感じた。


へっくしゅん。くしゃみが出て鼻を啜った。


「せっかく風鈴の音きれいだなーと思って聞いてたのに、レイコちゃんのくしゃみのせいで笑えてきた」


バケオが可笑しそうに言う。なにそれ、と口では毒づきながら、同じように風鈴の音を聞いていたことが嬉しかった。それにしても未だに風邪気味だし、これからの大事な時期に寝込むわけにもいかない。大人しくパーカーをはおることにした。そのついでに冷凍庫にいれっぱなしのいつかのアイスを二本取ってきた。


「はい」


一本をバケオに手渡すと、どう反応するべきか考えあぐねているようだった。


「俺、食べれないけど……」

「知ってるけど、あげる」


そう言ってバケオが凭れる縁側に、そっと置いた。


「おすすめなんでしょ? これ」

「うん。本当に美味しいよ」


ビニール袋を破いてチョコレートのアイスバーを取り出す。齧ろうと思ったけれど、あまりの堅さに断念した。しばらく舐めているとアイスの中から生チョコが出てきた。アイスとはまた違い、ほろ苦さのあるチョコレートが癖になる。


「ほんとだ。美味しい」

「ほらね」


ゆったりと時間が流れていった。夕飯を終えたあと、仏壇からチャッカマンを持ちだして庭に出た。


「それで火点けるの?」

「そうだけど」

「もっとロウソク立てるとかさー」

「もったいないからいいの!」


袋を破り、花火を台紙に括りつける針金を解く。全部を解体し終わるとバケツに水を汲み、準備が完了した。


「よしっ! やろー!」


実際に火を点けるのは私なのだが、私以上にはしゃぐバケオを見て思わず笑みが零れる。


「バケオ、どれがいい?」

「一番ハデそうなやつ!」

「そんなのわかんないよ!」

「さきっぽにひらひら付いてるやつ、それそれ!」


バケオに指定された花火を左手に持ち、右手でチャッカマンに火を灯す。


「そのひらひらに火点けるんだよ」

「わかった」


じゅっと言ったかと思えば、すぐにばちばちと音を立てながら緑色の光が弾ける。まるで滝のように光が流れていく。そして緑から白へと色を変えた。


「わあ、見て!」

「すげー」


一本ずつ、次々に火を付けていく。噴き出すように火花を上げるものもあれば、跳ねるように光るものもあった。色も緑からピンクから実にさまざまだった。


火を点けるたびに、どちらからともなく歓声が上がる。バケオも楽しんでいるようだった。

花火の音と火のせいかそれとも私の声のせいか、今日はコオロギが静かだ。夏の終わりの夜の中で、私とバケオだけが強い光に照らされていた。


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