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異世界最強の農家様 〜俺は『農家』であって魔王じゃねえ!〜  作者: 農民ヤズー


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異形vsカイルとヴェスナー

 

「ところで、お前らアレはなんだと思う?」

「おそらくですが、錬金術師ではないでしょうか?」


 先ほどまではいなかったソフィアが俺の問いかけに答えた。

 ソフィアは最初に俺とリリアを浄化した後は、戦闘に加わらずに突然の襲撃で怪我をした者達の介抱をしていたみたいだったが、こっちの状況が落ち着いたのを見てこちらにやってきたようだ。


「ソフィア。さっきはありがとな」

「いえ、お役に立てたのであれば幸いです」

「で、錬金術師だったか? でも、薬師って可能性もあるんじゃないか?」


『錬金術師』と『薬師』の領分ってのは結構曖昧だ。

 薬、という分野に限って言えば、薬師に作れる薬を錬金術師が作れることもあるし、その逆もあり得る。

 ただ、錬金術師は薬以外の不思議なもの、特殊効果のあるものを作ることができるし、薬師は薬に関しては突き抜けた効果のものを作ることもできると言う違いはある。俗に言う『奇跡の薬』や『秘薬』と呼ばれるものは全部薬師の作品だ。

 そうした違いはあるが、この状況ではどっちが関わっているのか分かりづらい。どっちの天職でも作ろうと思えば作れるだろうから。


 だが、ソフィアははっきりと口にした。その理由はなんだろうか?


「はい。確かに薬師という可能性もありますし、これは私の予想にすぎません。ですが、アレほど突然で大きな変化となると、どちらかと言ったら錬金術師ではないかと」


 言われてみればそんな感じはしないでもない……かな? 

 薬師はあくまでも『薬』を作るのに対して、錬金術師は薬効を持った『魔法道具』を作り出す。

 これだけの変異現象を薬と魔法のどっちで引き起こしたのかと言ったら、魔法の方が近いだろうという考えは十分に理解できるものだ。


「なるほどな。でも、じゃあそれなりに高位のやつだよな? 一般人やちょっと腕が良い程度のレベルじゃあ無理だろ」

「おそらくは」


 色々と不利な要素が重なっているとはいえ、それでもカラカスの者達が倒し来てていないほどに強化する薬となると、そこらへんのものに作れるとは思えない。

 最低でも第八位階以上、もしかしたら第十位階が関わっているかもしれないとすら思える。


「——っと、追加が来たぞ!」


 俺たちが戦場を見ながら話をしていると、一体の異形が襲いっかかってきた。


「かってえ!」

「殴りは効かないか。剣も……微妙そうだな」


 襲いかかってきたその異形をカイルが思い切り殴りつけて迎撃したが、殺すことはできず、異形を吹き飛ばすだけで終わった。表面を見た感じだと肉肉しい見た目をしてて柔らかそうに思えるのに、その見た目に反して固いようだ。

 まあ、俺の《収穫》を三回も耐えたくらいなんだから、それも当然といえば当然か。


 その後、起き上がった異形とカイルは戦い始めるが、流石に今のカイルでは倒すことはできないか。だが、カイルの年齢でアレを相手に戦えているんだから、上出来と言っても良いだろう。

 ……それはそれとして、なんで殴り合いで金属音みたいな音がするんだろうな?


「いかがされますか?」

「んー……勇者に押し付けるとか? あとは聖国の騎士達? アレ一応俺たちの護衛って名目だし」


 正直倒せないわけではないが、自分たちで相手をするのはだいぶめんどくさい。

 なのでできることならどこかに押し付けてやりたい。


「ですが、アレはあちらの相手で手一杯の様子ですが」


 ソフィアの言葉を受けて俺は勇者へと視線を合わせるが、あの勇者達はいまだに戦いを続けている。

 まあ、あっちは同時に四体も相手しているんだから苦戦するのも分かるが、苦戦している根本的な理由はそこではない。敵の数が多いとか、敵が強いとかではなく……


「勇者のくせに……ああ、殺さないようにしてんのか」


 そう。あの勇者、この状況でもまだ敵を『敵』だとは思わずに『人』だと思って戦ってやがる。

 そのせいで今一つ踏み切ることができないのだろう。決定打を与えることができずにいる。


「まあ俺がやるかな。いくら硬くても、触ればそれで終わりだし」


 直接触ってスキルを発動させればそれでおしまいだ。戦いの最中に相手に触れるのは難しいし、動きが激しい時に使えば自分が作った肥料を浴びることになるのであまりやりたくはないけど、仕方ない。やるしかないのなら、やるしかないんだろう。


「そういえば、リリアはどうした? こういう時、真っ先に目立とうとする気がするんだけど」

「リリアでしたら、あちらに」


 ソフィアが指さした方向を見ると、そこには負傷者らしき者達が集まっており、その中心にはリリアがいた。

 そんなところでなにをしているのかと言ったら……


「はーい。怪我した人はこっちきてねー! みーんな元気になーれ!」


 まあいつもの如く怪我人の治療だ。もっと目立ちたいがために大々的に戦闘に参加すると思っていたんだが、戦うことではなく怪我人を優先するってのは、あいつらしいなと思う。


「ユウキ! 何をしているのですか!? 加減などせずに早く殺すのです!」


 なんて思っていると、勇者達の方から『聖女』の声が聞こえてきたが……


「敵を殺すことを優先する聖女と、人を生かすことを優先する一般人か。……どっちが『聖女』に相応しいのかわかったもんじゃないな」


 聖女なんて言っても、『功績を残したから呼ばれるようになった聖女』ではなく『教会の権威のために存在している職業としての聖女』である。

 そしてその主な仕事はイベント事で笑顔を振り撒くことと、金をもらって治癒を施すこと。それから、魔王や人を苦しめている魔物、賊を退治することなんだから、カノンに与えられている役割として考えれば間違いではない。


 けど、聖女としてみればやっぱりリリアの方が……、と思わなくもない。本人には言わないし、他の誰にも言うつもりもないけど。


「とりあえず状況はわかった。ベルはリリアの護衛についてくれ。他にもエルフ達がついてるけど、リリアが勝手に動いた時に止められるかっていうと微妙だからな」

「わかりました」


 俺が指示を出すとベルは頷き、すぐさま動き出した。

 これでリリアの安全はそれなりに確保できるだろう。勝手な行動をすればベルが止めるし、敵が襲ってきてもベルだけでは倒せないだろうが、時間を稼ぐことはできるだろうからその間に他のエルフ達が参戦する。


「さて、それじゃあ俺達はあれの対処と行くか」


 心配事がなくなったので、俺は敵を倒すべく襲ってきた異形とそれと戦っているカイルの元へと向かっていった。


「カイル。そいつの動きを止めろ! できれば五秒くらいで頼む」

「はあ? こいつを五秒も止めるって、結構無茶だぞ!?」

「いいから頑張れ、護衛だろ」

「くそっ、無茶言いやがって!」


 文句を口にしながらも、カイルはそれまで動き回っていた足を止め、俺の言った通りその場で留まっての殴り合いへと移行する。


「変異後の姿にも効いてくれるといいんだけど……」


 さっきの男は変異する前の時点で攻撃していたので難なく相手の体内に種を打ち込むことができたが、今回はすでに変異している相手だ。《収穫》による首狩りも防がれたし種だけでは貫けない気もしている。


「やっぱり皮膚は貫けないか。……でも、目玉と口に入れば十分だ」


 想像通り、ただ種を打ち込んだだけでは皮膚に弾かれてしまった。ぶよぶよしている肉の塊のように見えて意外と硬い。これがヤシの種とか胡桃とかを使ったら貫けたのかもしれないが、あれは一応奥の手の一つだ。こんな誰かが見ているような場所で使いたくはない。

 それに、そもそもそこまでやる必要があるような相手でもないしな。


「こっちにはいくらでもお前らを殺す手段はあるんだ。初手で俺を殺せなかった時点で、勝敗なんて決まってたんだよ」


 そう口にしながらも、異形の体内に潜り込んだ植物を《生長》させ、目や口から植物を生やしている異形を観察する。

 顔から生えている植物を引っこ抜こうと手や触手で掴んで引き抜いているが、異形が植物を引き抜くよりも、植物達の生長速度の方が早く、十数秒もすれば頭部を覆い隠してしまった。

 それでもまだ動いているんだから生きていると言うことなんだろう。その生命力は、はっきり言って脅威だ。


 俺が異形のことを観察していると、その懐にカイルが潜り込み……


「——《轟天》」


 直後、雷が落ちたかのような轟音が響き渡り、それに伴って突風のような衝撃はが俺たちの方まで届いてきた。


 突然の音に驚き、反射的にビクッと体を跳ねさせてしまうが……魔王なんて呼ばれてるやつがこんな姿を見せるだなんて、ちょっと恥ずかしい。


 それはそれとして、音の発生源である異形とカイルへと意識を向けると、そこには拳を突き出したカイルと、腹に大穴を開けている異形がいた。


 今のは『格闘家』の……第七だったか? まあその辺のスキルだったはずだ。かなり高位のスキルだけあって、その威力は目を見張るものがある。


「お疲れ」


 異形を倒したことで息を吐き出しているカイルへと近寄り声をかけると、カイルはこちらに振り返ってきた。


「ほとんどお前がやったようなもんだけどな。俺があんなに苦労してたのに、ああもあっけなくやられると護衛としての立場がねえなぁ」

「相性の問題だろ。動きの速い相手だったら攻撃を当てることができないだろうし、俺じゃあ難しい」

「その場合でもどうにかできる手段があるくせに。……ま、今はいいさ。いずれお前よりも強くなってみせるだけの話だ」

「期待してるぞ、未来の第十位階」


 カイルはまだ第十位階にはなっていないが、今はまだ十八歳。この程度の年齢で第七位階になっているんだったら、何かあって修練の時間が取れなかったとしても、後五年以内には第十位階になっているだろう。


 こんな簡単に第十位階になれていいのか、と思うかもしれないが、これはカイルの努力があってこそだ。

 まあ、俺としてはそもそも周りの奴らがみんな努力しなさすぎる、って感じもするけどな。

 だって、第五位階が高位階だなんて言われてるのはどう考えてもおかしいだろ。一般の奴らはなにやってんだ?

 聖国はスキルを与えてくれる神様を祀っているだけあって平均位階が他の国よりも高いらしいけど、それでも微妙な感じはする。だって、この国って第十位階が三人しかいないんだぞ? 

 たった三人。それで本当に神様敬ってんのか、って感じはする。まあ、国土の割には多いといえないこともないけど、それでもなぁ……。

 まあ、俺たちとしては聖国の連中が弱いことは願ったりだけど。

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