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異世界最強の農家様 〜俺は『農家』であって魔王じゃねえ!〜  作者: 農民ヤズー


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聖国行きの日取りについて

「っ! も、もしかして、今回の事はその聖樹に異常がっ!?」

「さあな。だが、聖樹に異常は出てるんじゃないかと俺達は考えてる。ま、当たり前の話だよな。何せ、お前達聖国は聖樹を切り倒したんだから。異常がないわけがない」

「……え?」


 植物達にとっての神様的存在を切り倒したと聞いて、勇者はぴたりと動きを止めた。


 そして、真っ直ぐ俺のことを見つめた後、ゆっくりと錆びついたような動きで後ろへと振り返った。


 それは勇者だけではなく、リナも同じだ。

 リナは聖樹の存在を知っていたようだけど、特に気にしていなかったんだろう。あるいは、ただの素材としか見ていなかったとか。まあ、植物に関係ない存在にとっては、聖樹なんて力の込もっているだけの大きな樹でしかないしな。

 俺が聖樹のことを言っても、「そういえばそんなものもあったな」くらいの反応しか見せなかった。

 だが、それを切り倒したと言われて勇者と同じように目を見開き、カノンのことを凝視した。


「き、切り倒したって……本当なのか?」


 錆びついた動きでお仲間のことを見た勇者だったが、再び俺に顔を戻すとそんなふうに問いかけてきた。

 でも、それは俺に聞くべきじゃなくて仲間に聞くべきだろ。


「それは俺じゃなくて後ろにいる神殿の騎士様と教会の象徴とも呼べる聖女様にお聞きするべきじゃないか? 俺なんかよりも、よおーく知ってることだろうよ」

「カノン、ダラド……」


 俺の言葉を受けて、勇者は再びカノンとダラドへと振り返るが、前を向いたり後ろを向いたりして忙しいことだ。

 そんな勇者の様子は、はたから見ているとだいぶ滑稽に見えるが、当人にとっては真剣なものだろう。


「……詳しくは、私も存じません。ですが、そのようなことがあったと文献で読んだことはあります」

「私も、聖国には聖樹など存在しないとだけしか知らん」


 やっぱり知っていたようで、カノンは僅かに目を伏しがちにしながら簡単に説明した。


 だが、ダラドはそもそも聖樹の存在などどうでもいいものと考えているようで、バッサリと言い捨てるように口にした。


 そんな二人の態度から、聖樹の存在と、それを切り倒した事実は本当なんだろうと理解したようだ。勇者は何を思ったのか、拳を握りしめて悔しげな表情を見せた。


 そして、俺のことをまっすぐ見つめながら口を開いた。


「お前なら、それがどうにかできるのか?」

「さあな? 直接見ないことにはどうしようもない。が、聖樹は神とさえ崇められるような存在だぞ? そんな存在を簡単にどうこうできるとは思うな。俺ができるとしたら、そっちで起こってる異常が聖樹由来のものかどうか判断するくらいだ」


 まあ、もしかしたらなんらかの対処はできるかもしれないが、それはやっぱり実際に見て見ないとわからない。


「で、どうする? 俺はお前達の国にあった聖樹を確認しに行ってもいいのか?」

「……わかった」

「ユウキ。勝手に決められては……カラカスの者が国内を動き回っていると知られれば、民へ不安が広がることになります。まずは聖下や国王様に話を通し、それから——」

「でもっ! こいつを連れて行って何かわかるなら、その方が多くの人を助けられるはずだ! 実際、こいつは俺たちじゃ何も分からなかったのに、その理由に見当をつけることができている。ここで悩んで時間をかけている間に断られるなんてことになったらダメだ」


 カノンとしては、ここはすぐに決めないで一旦下がって教皇とかなんかその辺に話をしておきたいんだろうけど、勇者の言葉が正論であるだけに真っ向から否定することもできないでいるんだろう。

 勇者の言葉に困ったような表情を浮かべているカノンだが、その瞳には苛立ちの色が見えた。


「それに、元々こいつらを聖国に連れて行くことは決まってたんだ。なら、多少どこかに連れて行くくらい、大した違いもないんじゃないか?」

「……そうですね。ええ、ではそうしましょう」


 カノンはまだ不満げな様子ではあるが、断るための理由を思いつかなかったのか、あるいは思いついても勇者の対応をするのが面倒だったのか、俺が聖国の聖樹に向かうことを承諾した。


 さっきの三百人を連れて行くって話もそうだけど、こいつがそんなことを決めていいのか?

 まあ、こんなところに来るくらいだし、勇者の子守をしなくちゃいけないんだからある程度は権限が与えられてるんだろうな。いやはや、大変だなぁ聖女様って。


「話は決まったみたいだな。それで? 俺はいつそっちに向かえばいい?」

「え、ああ、はい。我々としてはできる限り早い方が喜ばしいのですが……」

「じゃあ明日にしよう」

「えっ!?」


 カノンの言葉に俺が答えると、カノンは驚いた様子でこちらを見つめてきた。

 でも、そうだろうな。行くことは決まったとしても、だからといってじゃあ明日、なんてのは普通の王族ではあり得ないことだ。


「なんだ、不満か? 早い方がいいって言ってたから」

「なに、俺としても助けられる命があるのなら助けたいとは思ってるだけの話だ」


 胡散臭そうな目をしている。だが、それは正解だ。俺が人助けのことを考えているのは半分くらいだ。……いや、二割くらい……一割くらいか?

 でもどれだけ割合が少なかろうと、俺だって助けられるなら助けたいとは思っている。俺に身の危険がなくて、手間がかからず余計な面倒が起こらないんだったら、だけどな。


 どうせ向こうに行くことは変わりないんだし、早く行こうが遅く行こうがやること自体に変わりはないんだ。

 なら、さっさと行って終わらせたほうがいいだろ?


 それに、できるだけ早く行ったほうが、聖国の者達からの評価が高くなるだろ?

 聖国の者と言っても教会の奴らではなく、一般の国民の奴らだ。

 俺たちが事態を解決することができれば国民は俺たちに感謝するだろうし、相手がカラカスなんだとわかってもそれは変わらないだろう。多少は感謝される量が減るかもしれないけど、それでも総合的に見れば感謝され、評価が上がることに変わりはない。

 そしてその評価だって、早ければ早いほど上がりやすいものだ。

 普通なら、国王が直接動いたり大規模な支援を実行するのにひと月とかはかかるだろうが、相談を受けてからすぐに動いたとなれば、助けた時の恩が大きく感じられるだろう。


 なんだったら、異変を解決できなかった聖国ではなく、救ってくれた俺たちの方へ忠誠や信頼が向けられるかもしれないとも思っている。それだけ『飢餓』というものは辛いのだ。

 人が人として生きられず、自分でも思ってもみなかった行動に出てしまうことだってある。

 世界を呪い、全ての存在に暗い感情を抱いたまま倒れていくことだってあるだろう。


 そんな時に尽きることのない食料を支援し、飢えの原因を取り除いたとなったら、ただ感謝するなんて言葉だけじゃ足りない想いを抱いてくれることだろう。


 そんな想いは、きっと役に立つ。


「それに、聖樹に何かあるのなら他人事じゃないんでな。原因は早いうちに知っておきたい」


 人助けのためって理由がないわけでもないけど、それはあくまでもついで。

 助けたら俺たちの徳になってくれる、って理由も、まあついでだ。

 一番の理由はフローラに頼まれたから。そして、俺自身も聖樹のことが気になったからだ。

 だからこそ俺は明らかに罠が用意されているだろうとわかっていても聖国に向かうことにしたのだ。


 であるのならば、早いほうがいい。ここの聖樹——フローラには何も異常がないけど、今後もそうだとは限らないし、待っていればそのうちこっちにも異常が出てくるかもしれない。

 なのでそうなる前に、異常の出た聖樹の状態を確認だけでもするべく、できるだけ早く聖国に行きたいと考えた。


 そしてこれは俺だけの考えではなく、エドワルド達の考えでもある。どうせ行動に移すんだったら相手に準備の時間を与えない方がいい、となったのだ。


 その意見は理解できる。どうせ俺が向こうに行ったら、色々と終わった後に何かしら仕掛けてくるだろう。その時のために向こうは準備するだろうけど、その準備にかけることができる時間が少ないほうが俺たちにとっては都合がいい。


 その分俺たちの時間も少なくなるけど、まあその辺はもう覚悟の上だ。三日前の時点ですぐに出発するつもりだったからそれ用の準備は進めているし、なんだったら今日出発だと言われてもでて行くことはできる。


 ただ、この話がかなり無茶苦茶言ってるってのも理解している。何せ普通なら何度も何度も手紙だか使者だかのやりとりをしてから決めることだ。それなのにこっちから一方的に日取りを伝え、しかもそれが三日後だなんて、政治や交渉をわかっていないと言われても仕方ないかもしれない。


 それを理解していながらも、俺たちはあえてそうすることにした。


「で、そっちとしては早く解決したいだろうし、出発は明日で構わないよな? せっかくだからそっちに贈り物として食料も積んでいくし、お前だって一日でも早く食べ物を届けたいだろ?」

「い、いえ。こちらとしてもまだやらなければならないこともございますし、他国の王を迎えるとなれば相応の準備をしなければなりませんので……」


 でもそれ、どうせ俺たちを罠にはめるための時間稼ぎだろ?


 本来なら多少であっても食料を手に入れたいところのはずで、一日でも早く話をまとめて食料を買うか交換するかしたいだろうし、異変もできるだけ早く解決したいはずだ。

 他国の王を迎えるための準備、なんてのも確かに大事だろうが、今はそんな場合ではないことはこいつも理解しているはずだ。

 多分これが友好国からの申し出だったら、なんの準備もできていないけどよろしく、って話が進んだと思う。

 それなのに、こうして準備云々って先延ばしにしようとしてるって事は、時間を稼いでいることに他ならない。

 もしくは、流石にそこまでは自分では判断しきれないからいったん話を持ち帰って『上』に相談しようとしているか。


 でも、そんなことはさせない。相手に準備するための時間を与えないのは基本だろ?


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