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異世界最強の農家様 〜俺は『農家』であって魔王じゃねえ!〜  作者: 農民ヤズー


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溜め池作成

 

「で、肝心のリリアだけど……」


 そうして、本命である存在を探そうとしたのだが……


「よーし! それじゃああとは残ってる小屋をいくつか建てておしまいよ! みんな頑張っていこー!」

「「「おおーーー!」」」


 探すまでもなく見つかった。

 どうやら何かの台の上に乗って指揮をとっているらしいが、それももう終わるようだ。


「ふふん。なかなかいい感じになったわね。これでいっぱい遊べるわ〜」

「その前に説教があるけどな」

「っ! 何やつ!?」

「何やつって、何だよその言葉遣い。俺だよ」


 周りのエルフ達に指示を出したリリアは、台の上に座って足をぶらつかせていた。

 そんなリリアの背後からそっと近寄って声をかけてやれば、リリアはビクッと体を跳ねさせたあと慌てて立ち上がり、振り返った。

 そして、後ろにいたのが俺だと理解すると、目を見開いて驚き、指を突きつけてきた。


「あ、あんた! 何でこんなところに!? 秘密にしてたのに!」

「植物達が教えてくれたからな。それよりも、秘密にしてたのは事故でもうっかりでもなく、故意だったか」


 分かっていたけど、わざとだったか。


「えっ!? ……ち、違うわよお? ちょーっとうっかりしてただけなの」

「もうおせえよ。さっき自分で秘密にしてたって言っただろうが」

「くっ……。なんたる誘導! 流石としか言えないわ……」

「お前が馬鹿なだけだ。マヌケ」


 相変わらずのバカさに、思わずため息を吐き出すしかない。


「で、何だってこんなことしてんだ。内容によっちゃあ、お前は遊ぶ間も無く森に帰されることになるぞ」

「ちょ、ちょっと待ってよ! 今回は私誰にも迷惑かけてないでしょ!? これを作るのだって頑張って考えて作ったのよ! 遊んだっていいじゃない!」


 こんなものを作って自分が使えないというのはよほど嫌なのだろう。リリアは慌てた様子で俺を説得しようと叫ぶ。


「みてよこれ——」


 そして両手を広げて俺に訴えかけてきたリリアだが、そのまま大穴へと振り替えろうとし……


「えええええええっ!?」


 足を滑らせて穴に落ちた。


「えぎゅ」


 べちゃ、という音とともに何か悲鳴のような鳴き声のような何かが聞こえたが、まあ気のせいだろう。


「遊んでないでさっさと登ってこいよー」


 縁に立ち、大穴に落ちたリリアを見下ろしながら声をかける。


「少しは心配してくれてもいいじゃないのよ〜」

「お前が落ちるのはいつものことだろ。そこは信頼してる。よかったな。魔王からの信頼だぞ」

「嬉しくな〜い!」


 そんな風に軽く話た後、ぴょんっとジャンプして戻ってきたリリアだが、少し涙目になっている。


「ソフィア、浄化して〜」


 自分の体が汚れていることに気がついたリリアは、ソフィアの方へと近寄っていき、《浄化》スキルを使うように頼み、ソフィアは特に文句を言うことなくそれに応えた。


「ありがとう〜」

「もう落ちないように気をつけてくださいね?」

「大丈夫よ! 同じ過ちは二度と繰り返さないから!」

「二度目どころかもう数え切れないくらい同じ間違いをしている気がするのですが?」

「こ、この穴に落ちたのは初めてだから!」


 二度同じって、そういう意味かよ。もう穴には落ちないようにするとか、もっと根本的なところでどうにかしろよ。


 まあそれはどうでもいい。だって何を言ったところでどうせリリアだし。


「そんなボケてないで、説明しろ。何だってこんなもんを作ってんだ?」


 それよりも、なんでこんなものを作ったのか話を聞く事を優先するべきだ。


「えー? えーっとねー、この間、あんたが言ったじゃない? 部下を増やしたかったら今いるみんなで何かおっきなことをしろー、って」

「別に大きなことをしろとは言っていないが、まあ似たようなことは言ったな」

「でしょ? で、わたし何をすればいいか考えたのよ」

「それがこれか」

「そう! ここってみんなが遊べる場所がないじゃない? 助けて連れてきた子達も元気がないし、遊ぶ場所があれば元気になるかなって思ったのよ」


 元気がない子ってのは、奴隷として捕まり、精神に問題ができてしまった者達のことだろう。

 一応ここは聖樹のそばで、周りにはエルフしかいないから安心できるとはいえ、だからといって完全に元通りになれるってわけでもない。長ければ数十年単位で捕まっていた者達だ。それは仕方のないことだろう。


 そんな者達を元気付けるために、こうして保養地を作っている、というのは、思った以上にまともな理由だし、こいつらしいとも思えた。


 けど、リリアの話はそこで止まった。他の説明はどうしたんだ?

 心の治療のためなんだったら、わざわざ溜め池ではなく花畑とかの方が〝らしい〟と思う。

 それでもなお溜め池を作る事を選んだんだから、他にもソフィアが言ったような理由があって然るべきだろ?


「それだけか?」

「そうだけど?」


 だが、それだけだったようだ。


「溺れているやつ云々は関係なかったな」

「……はい。そのようですね」


 ソフィアの方へと振り返って言ってやれば、リリアのやったことに対して真面目な理由を考えてはっきりと告げたのが恥ずかしくなったのか、ソフィアは頬を赤く染めてわずかに顔を逸らした。


「溺れてるやつ? そんな人がいたの?」


 そんなソフィアの様子を微笑ましく思っていると、リリアがそんな事を聞いてきた。

 だが、お前……そんな事を聞いてくるってことは、まさかとは思うが……気づいてなかったのか?


「いたのって……いつもいるだろ、その辺に。だからそいつらが溺れるにしても一箇所で溺れてくれれば対処が楽になるからこんな場所を作ったんじゃないか、って予想してたんだ。ソフィアがな」

「え? そんなわけ……あっ! そ、そうよ! そのためにここを作ろうとしたの。よく見抜いたわね!」

「言うのが遅えし、今更それで納得するわけないだろうが」


 そう言ってやれば、リリアは不貞腐れたように唇を尖らせてブーブー言っているが、今のはどう考えても嘘だとわかる。というか、嘘だとしか思えない。


「まあ、作った理由はいいとしよう。思ってたのとは違ったが、それなりに真っ当な理由だったからな」


 思っていたものとは違うとはいえ、リリアにしてはまともな理由からの作成だったし、リリアの思惑以外にも俺たちが考えたような感じで使えないわけじゃない。

 なので、この溜め池自体は良しとしてやろう。なんだったらここには川の水で薄めない原液の《潅水》を入れてやってもいいかもしれない。


「じゃあじゃあ、わたしここで遊んでいいの!?」


 部下集めをするための事業じゃなかったのか? 別に部下集めとかして欲しいわけじゃないから、遊んでても構わないけどさ。


 ただ、遊ぶのは構わないが、その前に聞いておきたいことがある。


「もう一つ正直に答えたらな」

「なにを?」

「何で俺に内緒でやったんだ?」

「えっ!? そ、それはあ……」


 人差し指を立てて空にむけ、クルクルと動かしながら視線を泳がせ程るリリア。

 だが、俺が見つめ続けてやれば、観念したのか話し始めた。


「えっとー……気分?」

 が、ろくな理由じゃなかった。


「よし、森に帰るか?」

「待って待って! 今の嘘! 嘘だからあ!」

「ならふざけてないで正直に答えろよ」

「えー、だってわたしだって頑張ればちゃんとできるんだぞって見せつけたかったんだもん。何にも知らせないで次の日には遊び場ができてたら、こんなことができるなんて思わなかった! リリアはすごいな! って、あんただってわたしのことを褒めてくれるでしょ?」

「……俺としては、普通に計画書を出して事前に相談してくれた方が嬉しいし、そうだったら素直にすごいと褒めてやれるんだけどな」

「えー! それだと面白くないじゃない! さぷらいずってやつよ!」

「いらねえサプライズだなあ」


 こんなサプライズはいらないから普通にしてくれ。普通に申請してくれれば、俺だって許可したし、成長したなあと褒めてやることができた。


「でもぉ……じゃあ褒めてくんないの……?」


 そう言って少し悲しげにしているリリアだが、やったことは褒めるようなことではない。むしろ叱るべきことだろう。

 ただ、成長してるってのも事実なわけで……。


「……この場所を運営するものとしては、勝手に何かをやったやつのことは褒められない。計画の相談もなしに勝手にこんな大掛かりなものを作るなんて、もしこの場所で俺が何かをしようとしてたら邪魔になるところだった。褒めるどころか、罰することさえある。むしろそれが妥当だろう。……でもまあ、この場所自体はよく作ったな。すごいぞ」


 叱るべき、罰するべきではあるが、ここで褒めないのもなんかな、って感じがした。こいつが前より成長してるのは事実で、やった内容としては褒めてもいいようなことなんだから。

 それに、叱ってばかりで本人の行動を否定し続けていると、そのうち何もしない自主性のない大人になるからな。


「で……でっしょ〜〜! わたしってばすごいのよ!」


 俺が褒めてやれば、リリアはパアッと嬉しそうに笑みを浮かべた。

 これが子育てか……。別にあいつは俺の子供でもねえけど。


 ただまあ、後で説教もするけど。ついでに、何か大掛かりな事をする際に必要な書類の類や手順も教えておこう。前にも教えたと思うけど、改めて教えて、できたら褒めてやれば頑張るだろ。ついでにお菓子や水を褒美で出してもいいかもしれない。


 ……なんか、子供ってかペットの躾みたいだな。芸を覚えさせる、みたいな感じで。


「御子様! 最後の建物の建築が終わりました!」

「あ、ほんとっ? いよーしっ! それじゃあ、最後にお水と繋げるわよ!」


 俺たちが話しているうちに全ての工程が終わったようで、エルフの一人がリリアのことをよび、リリアは元気に走っていった。


 そんなリリアの背を見てから、改めて周囲に視線を巡らせるが、これだけの大穴と建物を用意するなんて、すごいと言わざるを得ない。


「……一日でこれだけのものを作るなんて、一夜城みたいだな」


 いや、一晩どころか今朝から作り始めて今完成なんだから、もっと早いか。


 そうして作った大穴——溜め池と水路とが繋がり、溜池に水が流れ込み始めた。

 せっかくだし、ここに《潅水》しておいてやろう。


「これでみんな笑ってくれるわよね!」

「そうだといいな」

「そうに決まってんでしょ! だってわたし達みんなで作ったんだもん!」


 水はまだ溜まりきっていないが、それでも待ち切れないのかエルフ達はぼちゃぼちゃと水の中に落ちていき、浮かび始めた。


 ……なんか間違ってる気がするけど、何がどう間違っているのかは言えず、俺とソフィアが微妙な表情になってしまったのは仕方ないことだろう。


 だが、そんな俺達とは違い、リリアは水に落ちていく同族を見ながら満足そうに頷いている。


「けど、勝手にやったことは間違いじゃないし、罰しないわけにも行かないから、お前にはなんか罰をやらせるから」

「えええ〜〜〜〜〜っ!」

「とりあえず、今日は遊ぶの禁止な」


 俺はそう言ってからリリアの首根っこを掴んで確保すると、そのまま行きずって溜め池周辺の様子を確認するために歩き出した。


「「「うわあああ〜〜〜〜!」」」

「うわああ〜〜〜ん!」


 エルフたちの歓声とともになんかちょっと違う叫びが聞こえた気がするけど、気のせいだろ。


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[気になる点] 誤字報告も出しましたが、今まで「《スキル名》」だったのが、今回は「〈スキル名〉」となっています。 誤字報告した際に見落としがあったかもしれませんのでこちらでも報告しておきます。 [一…
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