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真っ白だったこの家が、彩りにあふれる頃には  作者: 春野 安芸
第2章

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49/163

048.幕間3

長くなったので2分割しました。

「マ・・・マネージャー志望の水川 雫です!えっと、その・・・よろしくおねがいします!」


 私が頭を下げたと同時に拍手がパラパラと聞こえ、隣の菜月(なつき)ちゃんが自己紹介を始めた辺りでドクンドクン鳴っていた私の鼓動が段々と弱まっていくのを実感した。


 これは私が中学に入学したばかりの頃の話です。運良く小学校からの友達である菜月ちゃんと同じ中学校に入学することができた私は、彼女に誘われて水泳部に入部することに決めました。

 ちょうど何か部活に入りたいと思っていたし、仲のいい菜月ちゃんに誘われた時は渡りに船と思いました。その時は選手として一緒に泳ごうと誘われましたが泳ぎが得意でない私にとっては競泳なんて続けられる自身がありません。なのでせめてマネージャーとしてとお願いしたら快い返事が貰えました。


 菜月ちゃんは小学校の頃からスイミングスクールに通ってて早いうちに4泳法を会得したそうです。そして本格的に競泳をするため選手コースに入らないかとコーチに打診されたみたいなんですよ!凄いですよね!?でも菜月ちゃんは小学校いっぱいで退会するからってお断りしたそうなんですけど・・・・・・



 ここは学校の空き教室、顧問の先生が顔見せの為にわざわざ借りてくださったそうです。そして私たち5人いる新入生の前には30人くらいいる先輩方が。聞くところによるとここのメンバーで中1から高3までの水泳部全員のようです。単純計算で1学年6人くらいですかね?みなさん肩幅とかガッチリです。


「それじゃあ今日の周回はコレくらいでおわりっ!みんな、明日からよろしくね!」


 この会を仕切ってくれてた部長の号令で先輩方は散り散りになっていきました。どうやら本格的な練習は明日からのようです。


「雫ちゃん!入ってくれてほんっとうにありがとうね!」

「ううん、私もちょうどよかったよ。先輩方も優しそうだし良かったね」

「うんっ!私は小学校から経験あるし、もしかしたら先輩たちみんなゴボウ抜きしちゃうかもね~!」


「私もマネージャーとして応援してるよ」

「雫に応援してもらったら百人力だよ~!でも、もっと笑顔で言ってくれたら力出るんだけどな~!」

「いふぁいいふぁい・・・・・・ほっぺた引っ張らないで」


 この頃の私はとても引っ込み思案な女の子でした。そんな私を引っ張っていってくれたのが菜月ちゃん。彼女が居なければ水泳部とは縁もゆかりも無かったと思います。


「それじゃあ私たちも帰ろっか!今日これからどこか行く?」

「ううん、今日は早く帰ってくるようにお母さんに言われてて・・・」

「そっか~、それじゃ仕方ないね~」


 私は今までとは全く違う、菜月と一緒の中学生活に心踊らせていました。




「雫ちゃんこれ遅刻確定だよ~!初日からこれって先輩たちに怒られるかな~!?」

「しょうが・・・ないよ、正直に言って、謝れば大丈夫だと思う」


 翌日、部活動初日の放課後。私たちは部活に行こうとしたタイミングで先生に頼み事をされ、今まさに遅刻直前の中プールまで小走りで向かっていました。


「雫ちゃん!私の着替え待ってたら絶対間に合わないから先行ってて!ジャージに着替えるだけならすぐでしょ!?」

「たしかにすぐだけど・・・いいの?」

「今は説明するのが先だから、お願い!」

「わかった」


 更衣室に着いた私は急いで水着に着替えている菜月ちゃんを置いてプールサイドに向かいました。そこには既に泳ぎだしている方々とそれをサポートする

先輩方が。


「遅れてすみません!後で菜月ちゃんもきますので・・・ってあれ?」

「あら、えっと・・・・・・雫さんだっけ?お疲れさま。あなたも()()()()だったのね」


 声をかけてくれたのは集会で仕切ってくれていた部長でした。私は何か違和感を覚えましたがそれを確かめる間もなく後ろから菜月ちゃんの声が。


「遅れちゃってすみません~ ちょっとクラスで用事がありまして~」

「あなたは・・・・・・そう、菜月さんね。遅れたのは構わないわ。早くシャワー浴びてプール入ってもらえる?」

「はい~!・・・ってあれ?なぁんだ。遅刻してるの私たちだけじゃなかったんですね~」


 菜月ちゃんがあっけからんと言うので私もピンときました。そう、泳いでいる人数が異様に少なかったんです。集会では30人以上居たのに泳いでいるのは10人くらい、マネージャーらしき人も私を抜いて3人しかいませんでした。


「え?これで全員よ?」

「またまたご冗談を~。昨日はこの倍居たじゃないですか」


「あぁ、そのことね。 あの人達は全員スクール側。大会に出る時だけウチの名義を借りて出るのよ」

「え!?じゃあその人達は部活の練習は免除ってことですか!? いいな~」


「・・・免除といえば免除ね。けど、スクール側はここより遥かにキツイ練習してるわよ」

「うへ~。じゃあ私は暫くこっちかな~」

「ええ、早く準備してきなさい。 雫さんはこっち、マネージャー業について教えるわ」

「あ、はい。よろしくおねがいします」


 部長は菜月ちゃんをプールに行くよう促した後、私に優しくマネージャー業について教えてくださました。


「それで、ウチはレーン番号が大きくなるほど練習がキツくなっていく仕様なの。だから回れなさそうな子が居たらコースをズレてもらうことになるけれど、雫さんは菜月さんと仲はいいの?」

「あっはい、小学校からの友達で・・・」


「そっか。じゃあ菜月さんが練習をムリしすぎない程度にレーンをずらす役割をお願いしていいかしら?」

「はい・・・」

「おまたせしました!私はどうすれば良いでしょう!?」


 部長から役割を与えられたタイミングで菜月ちゃんがやってきます。


「菜月さんはとりあえず一番簡単な第2レーンの練習からお願いするわ。じゃ、あとはよろしくね雫さん」

「よろしくおねがいします!雫マネージャー!」

「うっ、うん・・・よろしくね、菜月ちゃん」


 まずはお試し、といった様子で菜月さんは第2レーンの練習をこなすこととなりました。







「菜月ちゃん、もうそろそろ休んだほうが・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・何言ってるの雫ちゃん・・・ここ以下がないんだからここで頑張るしか無いでしょ」


 菜月ちゃんが練習を始めて十数分。最初はなんとかついていけていたものの、だんだん難易度が上がっていく練習に菜月ちゃんはついに周回遅れとなってしまいました。


「そこは部長に相談して・・・」

「私はまだ頑張れるよ!それで雫ちゃん、次何本目!?」

「えっと・・・9本目だけど」

「わかった。ありがと」


菜月ちゃんはそれだけ聞いてまた泳いで行ってしまいます。


「どう?雫さん、菜月さんの様子は・・・」

「あっ、部長・・・」


 菜月ちゃんが9本目をスタートしたところで部長が様子を見に来てくれました。


「・・・なにこれ? どうなってるの?」

「これは、その・・・」


「いえ、大体わかったわ。とりあえず菜月さんを止めてプールから上げるように言ってくれる?」

「は、はい・・・」


 私は急いで戻って来た菜月ちゃんに上がるよう言いましたが菜月ちゃんは満身創痍といった様子でプールから上がるのにも相当難儀し、台が低めのプール側面から上がることになりました。



「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・まだ途中・・・だったんですけど・・・・・・」

「だから止めたのよ。菜月さん、全然回れてなかったわね」


「それは・・・・・・でももうちょっとで消化しきれました!」

「・・・菜月さんは第1レーンでお願い。メニューは私が別途考えるわ」

「部長待ってください!私はまだ泳げますから!!」


 菜月ちゃんの言葉に意を返さない部長はサラサラと用紙に練習メニューをかきこんでいきます。


「部長!!」

「・・・菜月さんはよくっても他の人は良くないのよ?」


 メニューを書き終えた部長は鉛筆を置き、話を続けます。


「さっき練習こなせなくてどれだけ他の人に抜かされた?それだけでも事故の元だし他の人の練習の妨げになっているのよ?」

「それは・・・」

「私たちの練習をこなすには早かったわね・・・とりあえずこのメニューなら菜月さんでもこなせると思うから第1レーンでお願いするわ」


 そう言って部長は別のレーンへと去っていき、私と菜月ちゃんだけが残されます。


「菜月ちゃん・・・・・・」

「・・・雫ちゃん、第1レーンで泳ぐから、サポートお願い」

「うん・・・・・・」


 菜月ちゃんはゴーグルを付けていてその時の表情はわかりませんでした。







「それじゃあ今日の練習はここまで!みんな、お疲れさま!」

「「「おつかれさまでした!!」」」


 全員が練習メニューを終えた頃、部長の号令で解散となりました。


「今日の練習は初日だったのか軽かったね~」

「毎日このくらいの練習ならいいのにね~」


 練習を終えて帰っていく先輩方からそんな声が聞こえます。あれで・・・軽い・・・


「二人ともお疲れさま。さっきはキツイ言い方でごめんなさい、あれで怪我をした人もいるし気をつけてほしかったの・・・でも、菜月さんも練習を続けていけばきっとみんなに追いつけるようになるわ!」

「部長、お心遣いありがとうございます。それでは失礼します」


「菜月ちゃん・・・・・・」

「ごめん、雫ちゃん・・・また明日っ・・・!」


 菜月ちゃんは私を置いて更衣室まで走って行ってしまいました。それを黙って見てるしかなかった私の肩に部長の手が置かれます。


「部長・・・」

「最初のうちはみんなこんな感じよ。これから練習していって上手くなっていくの。だから雫さん、菜月さんのサポートお願いね? それじゃ、片付けは任せて先帰っちゃっていいわよ」

「え?でも片付けは後輩の仕事じゃ・・・」

「いいの。先輩に任せてほら、ね?」

「はい・・・お疲れさまでした・・・」


 私は菜月ちゃんが走っていった後ろ姿が脳裏から離れませんでした。


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