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044.優衣佳とのデート~その1~

もはや前編とすら記せなくなってきました…

4話予定です。

「ねえ、慎也くん。・・・・・・ここどこ?」

「うん・・・・・・どこだろう・・・・・・。俺もわかんない」

「お互い、やっちゃったわね・・・」

「そうだね。やっちゃったね・・・」


 真っ暗になってしまった空の下、俺たちは微かに照らされた灯りの下で2人ため息をついた。

 どうしてこうなったのだろう、俺は昼頃のことを思い出す。


 ―――――――――――――――――

 ―――――――――――

 ―――――――


 優衣佳さんの誕生日会の翌日、昨日の約束を果たすため俺は自宅のエントランスで1人優衣佳さんを待っていた。

 時刻は事前に来るといわれていた時間ピッタシ、スマホを確認するも何の連絡も来ていない。優衣佳さんにしては珍しいなと思いつつ俺はもうしばらく待つことにした。


 それから待つこと更に5分。道の向こうから1人の女の子が走ってくるのが見えた。優衣佳さんだ。


「はぁ・・・はぁ・・・・・・ごめんなさい・・・待たせてしまって・・・」


 相当急いで来たのだろう。息も絶え絶えになりながらお詫びの言葉を口にする。


「ううん、全然待ってないよ。それより大丈夫?何か用事でも切り上げてきた?」

「いえ・・・・・・そんなことはないわ・・・。ただ、優愛に今日は何しに行くかと・・・・問い詰められて・・・・」

「そっか・・・よく切り抜けることができたね。あ、お茶ならあるけど飲む?飲みかけで悪いんだけど」

「!! 頂くわ!!」


 彼女は俺の差し出したペットボトルにいち早く反応して一気に飲み始める。


「んっ・・・んっ・・・はぁ・・・ありがとう。助かったわ」

「構わないよ。それよりその量で足りた?アレならもう一本買ってくるよ?」


 空になったペットボトルを受け取り、カバンに入れながら確認をする。


「大丈夫よ、行きましょ。早く行かないとお店閉まっちゃうわ・・・まず駅まで行くのかしら?」

「あっ、うん。だからバスに乗らなきゃだね」

「駅まで15分くらいでしょう?それくらいなら一緒に歩きましょっ!」


 そう言って俺の腕を両手で絡ませてくる。彼女の・・・その、とある一部分は後輩のそれよりも大きいものだからより柔らかな感触が伝わってきて表情に出さないよう意識を集中させる。


「遅れた理由だけど、私が普段と格好を変えたことに目ざとく気づいたのよね。それでなんとか誤魔化そうとしてたんだけどできなくって・・・・・・正直に言ったら開放してくれたわ。ほら、貴方のスマホにもメッセージが届いているはずよ」

「へっ?あぁ・・・たしかに」


 優衣佳さんにそう言われ俺はスマホを確認する。そこには優愛さんからのメッセージが。


『今回はお姉ちゃんに譲るけど、今度私とも2人きりでどこかにいこうねっ!!』

『ありがとう。今日は優愛さんのお姉さんをお借りするね。次は一緒にどこか食べに行こうか』


 と、絵文字たっぷりスタンプたっぷりのメッセージが。俺は次回食べに行く提案をしてスマホをしまい込む。


「優愛は今日宿題を片付けるそうよ。今まで一つも手を付けていなかったって・・・」

「あの量を1日で消化するのはなかなか大変そうだね・・・」


 宿題を前に涙を流す優愛さんが目に浮かぶようだ。

 俺はいま一度彼女の格好を確認する。本日の優衣佳さんは長い黒髪をハーフアップにして白色のスニーカー、腰をリボンで結んだ淡いピンクのハイウエストショートパンツにトップスは肩が少し透けたサマーニットを着ている。


「今日の優衣佳さんはいつも下ろしている髪をハーフアップにしたんだね。それにくびれを見せたショートパンツで綺麗な脚を見せてスタイルの良さが際立って・・・その、凄くセクシーで綺麗な格好だね」

「そっ、そうかしら・・・そう言ってもらえると嬉しいわ・・・。あとアレも使ったのよ?昨日慎也君に貰ったヘアオイル。とってもよかったわ、ありがとう」


そう言って優衣佳さんは自身の髪を軽くかき上げる。その際仄かな甘い香りが俺の鼻孔をくすぐった。


「それはあげた側も冥利に尽きるよ。それにこれは・・・・・・雫があげた日焼け止めかな?」


 首元を見ると何やら白いクリームの塗り残しが見えたから無意識でそれを引き伸ばす。


「きゃっ!!・・・慎也君、突然どうしたの!?」

「あっ!ごめん!!つい首にクリームの塗り残しが見えたからつい・・・」

「そうだったのね・・・えぇ、日焼け止めよ。それにしてもいきなり触れなくても拒んだりしないわ。一言いってくれればいつでも触らせてあげるのに」

「えっと・・・つい無意識で・・・」


 俺がどう言えばいいか迷っていると彼女がフフッと息を吐く。


「冗談よ。ほら、駅に着いたはいいけれどどの電車に乗ったらいいのかしら?」

「あ、うん・・・・・あった。もうすぐ電車が来るみたいだね。ここから40分くらい揺られることになるけど大丈夫?」

「えぇもちろんよ。それじゃ、エスコートよろしくね」


 そう言って改札を通った優衣佳さんはまたもや俺の腕に絡みついて上目遣い気味で答えるのだった。





「慎也くん」

「どうしたの?優衣佳さん」

「ホントにこの駅で間違いなかった?」

「もちろん。ここからもう15分くらい歩くことになるけどね」

「15分・・・・・・」


 そう彼女が漏らすのも無理はない。あれから40分ほど電車に揺られ、降りた先は一面田んぼだらけの地域であった。


「はっ!もしかして慎也君はこんな開放的で誰も来そうにない場所を選んで私にアンナコトやコンナコトをするのね!!」

「しないから!一体誰に吹き込まれたのそんなこと?」


 唐突に優衣佳さんらしからぬ言葉が飛び出してきたので反射的に否定する。こんなことを自然に言うのは俺の周りでは1人しか心当たりがない。

 優衣佳さんはチラチラとこちらの様子を伺った後クスクスと笑みをこぼす。


「雫さんよ?」

「やっぱり・・・」


 全く雫め・・・・・・今度会った時は文句の一つでも言っておこう。


「それにしてもこんな長閑で気持ちいい風の吹く場所があったなんてね・・・」

「うん。秋なんかもっと凄いよ。この一面の田んぼが黄金色に光って凄く綺麗なんだ」


 去年1人で買いに来た時はその光景に圧巻されたものだ。


「それは是非とも見たいわね。その時にはまた私を連れてきてくれるかしら?」

「もちろん。優衣佳さんがこれから行く店を気に入ったら、1人で通うことにもなりそうだけどね」

「あら、風情の無いことを言うのね。誰かと一緒だからいいんじゃない こういうのは」

「そうだね。ごめんごめん」


 俺たちはまだ田植えの始まっていない舗装されたあぜ道を通っていく。

 しばらく歩いていくと田んぼの終わりにある住宅地にたどり着いた。


「ここって普通の住宅地よね?あまり店があるような感じじゃないんだけれど・・・」

「大丈夫。もうすぐ着くから。・・・・・・あった。あの瓦の屋根の建物だよ」


 俺は目的地を指差す。優衣佳さんはまだ怪訝そうな顔をしていた。


「慎也君。どう考えても普通の家にしか見えないのだけれど」

「俺も最初はそう思ってた。ほら見て、入り口に『OPEN』の立て札があるでしょ。ここで間違いないよ」

「いえ、でも・・・・・・あ、ちょっと!!」


 俺は優衣佳さんが戸惑うのを無視して扉を開ける。玄関で靴を脱ぎ廊下の突きあたりにある部屋に入ると一気にコーヒーの匂いに襲われた。


「いらっしゃい・・・・・・あら、慎也、久しぶりね」

「おばあちゃん、久しぶり」

「こ、こんにちわ」


 そこにいたのは1人のおばあちゃんだった。いくつもあるコーヒーケースに囲まれて1人テレビを見ているようだった。

 俺の隣にいる優衣佳さんが少し不安そうに挨拶をする。


「あら、新しい子だね。慎也、高校に入ってすぐ彼女を作ったのかい?」

「そうじゃないから。同じクラスの子でコーヒー好きみたいだったから連れてきたんだ」

「はじめまして。川瀬優衣佳です。あの・・・慎也くんのお祖母様、ですか?」


 優衣佳さんはそう言って頭を下げる。彼女の言葉を聞いたおばあちゃんは目を丸くしてこちらに向き、大声で笑い出す。


「あっはっは!あたしはコレの実の祖母じゃないよ。コレが子供の頃から母親に連れられて来てるものだから自然とそう呼ぶようになったのさ」

「そうだったのですね。では私もお婆さま、とお呼びしてよろしいですか?」

「今となっちゃあコレも孫みたいなものさ、アンタも好きにお呼び。それで慎也、いつものようにイタリーで良かったのかえ?」


 おばあちゃんはいつもの動作でいつもの豆を取り出そうとする。


「いや、今回はブラックマウンテンでお願い。量はいつもどおりで」

「そうかい、ブラックマウンテンね。そっちの・・・優衣佳ちゃんだっけ?アンタは何か買うのかえ?」

「はい、私も慎也君と同じようにお願いします。お婆さま」


 優衣佳さんも同じものにするようだ。お婆さんは淡々と袋に豆を詰めていく。その間に価格を伝え会計の準備をしてもらう。


「はいよ、お待ち。ブラックマウンテン2袋を二人分。持っていきな」

「あれ?おばあちゃん、お金は?」

「・・・・・・高校の入学祝だよ。持っていきな」

「そっか、ありがとう。おばあちゃん」

「あの、お婆さま。私の分もよろしいのですか?」

「いちいちしつこいね。そんなに言うんだったら一つ私に付き合ってもらおうじゃないか」


 そう言っておばあちゃんは俺たちを一つ隣の部屋に押し込んでいく。そこは長机が一つある和室だった。

 お婆ちゃんは俺たちを部屋に押し込んだ後「待ってな」と一言だけ言い部屋を出ていってしまう。


「慎也君・・・私余計なこと言ってしまったかしら?」

「おばあちゃんは気まぐれでサプライズ好きだから、きっと悪いことにはならないよ。今回も何があるかのんびり待ってよう?」

「そう・・・それだといいけれど・・・」


 優衣佳さんはそれでも少し不安そうだ。昨日言われた伝家の宝刀を使うしか無いか・・・

 俺は優衣佳さんの髪にそっと手を触れる。


「俺は何度もこの部屋に来てお菓子貰ってたから、今回も絶対大丈夫。おばあちゃんも気を悪くしてるわけじゃないよ」

「・・・ありがとう」


 そう短く答えて優衣佳さんは素直に髪を撫でられる。ほんの少しの間そうしているといきなり部屋の襖が開かれた。


「・・・・・・イチャイチャさせるために入れたわけじゃないんだけどねぇ。まぁいい。ほら食いな」


 おばあちゃんが差し出したのはチーズケーキ一切れずつとアイスコーヒーだった。


「・・・これは?」

「アンタが今回もイタリーを買うと思って多めに用意したのに、買わなかったからここで消費するんだよ。チーズケーキは好きに食いな」

「おばあちゃん、いつもありがとね」

「お婆さま・・・・・・ありがとうございます」

「・・・あたしは店にいるから終わったら一声かけるんだよ」


 おばあちゃんはそう言って襖を閉じて出ていった。残されたのは俺たち二人になる。


「それじゃあありがたくいただこうか」

「えぇ・・・そうね」


 俺たちは期せずして少し遅めのおやつと相成った。


「あら・・・イタリーたっけ?これも美味しいわね・・・それにしても良かったのかしら、私まで頂いちゃって。これ本当は・・・」


 食事中、優衣佳さんがポツリと漏らした。


「もともとおばあちゃんが食べようとしてたケーキかも知れないってこと?」

「ええ・・・」

「そっか・・・ところでそのコーヒーはどうかな?美味しい?」

「え?とっても美味しいわよ。毎日飲みたいくらい」

「それならまた今度ここに買いに来なよ、今度は優愛さんも連れてさ。それがおばあちゃんが一番喜ぶことだから」


 おばあちゃんはいつもツンケンしているが、なんだかんだいってこうやって本当の祖母みたいに接してくれる。きっと優衣佳さんや優愛さんにもそうしてくれるだろう。


「・・・そうね、そうするわ。でも、その時は慎也君も一緒によ?」

「そうだね。今度は是非3人で」


 優衣佳さんも元気になったようだ。俺たちはケーキを食べ進めた。




「お婆さま、ケーキとっても美味しかったです。ありがとうございます」


 食後、店に戻ってお婆ちゃんに一言挨拶に来ていた。


「そうかい・・・・・・・どうだったかい?ウチのコーヒーは?」

「はい。とっても美味しかったです。この豆が無くなったらまた買いに来ますね」

「なら、いいさね。慎也!」

「はい?」

「優衣佳ちゃんを次も連れてくるんだよ」

「うん。今度は優衣佳さんの妹の優愛さんも加えて3人で来るよ」

「妹までいるのかい!?全くコレときたら・・・・・・」


 俺たちはお婆ちゃんに再度お礼を言い、店を後にした。 

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