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真っ白だったこの家が、彩りにあふれる頃には  作者: 春野 安芸
第2章

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042.お誕生日会~中編~


「じゃじゃ~ん!まずは私からっ!お姉ちゃん、おめでとう!!」


 プレゼント渡しの1番手は優愛さんだ。彼女は廊下に出たと思ったらすぐさま人の頭を超えるほどの布袋を持って戻ってきた。そのプレゼントを優衣佳さんに渡し、エヘン!と胸を張る。


「あ、ありがとう。思ったより大きいのね・・・開けてもいいかしら?」

「もっちろん!お姉ちゃんはきっと役立つと思うよっ!」


 そう言って自信満々にしている優愛さん。優衣佳さんは少し訝しげにしながらもその袋から中身を取り出す。

 中に入っていたのはコの字型にほど近いクッションであった。


「これは・・・・・・クッションかしら?それにしては不思議な形してるわね・・・」

「ふふ~ん!それは昼寝用枕です!お姉ちゃんいっつも休日は家事し終わったらテーブルで寝ちゃうから・・・・せめて枕があったら気持ちよく寝られるかな~って」

「あら、昼寝用のだったのね・・・ありがとう、早速この休日中にも使うわね」

「うんっ!」


 優衣佳さんは何度かその場で試し使いをしてから膝の上に枕を乗せる。

 プレゼントがお気に召したようで優愛さんも満足そうだ。なんだか優衣佳さんの休日って完全に主婦のような・・・


「優愛、一応聞くけど、優愛も家事、してる?」

「もちろんしてるよっ!最近は料理もお姉ちゃんに教わってるんだけど逆に離れていってる気しかしないのが悩みなんだ・・・」


 優愛さんはそう言って頭をかく。俺も優衣佳さんの料理スキルはとんでもないと思うし、近くにいるからこそ強く感じるところもあるだろう。


「そっか・・・でも優衣佳はすごすぎるから、仕方ない」

「私は小学校の頃からずっとやってたから。優愛も長いこと続ければ上手になるわ」

「うんっ!頑張るね!」


 そう言って優愛さんは枕を入れていた袋を持って廊下に出ていってしまう。その後優衣佳さんから「私と違って袋とか大事に取っておくタイプなのよ」と補足された。


「それじゃあ次は俺――――――」

「ん。私が行く」


 俺が渡そうとしたところで翔子さんに止められた。


「慎也くんは、最後」

「そうですね。慎さんは最後です」


 2人により順番が確定されてしまったので俺は持っていたカバンを床に下ろす。

 自分の番になった翔子さんはカバンからA4サイズにも満たない、薄いプレゼントを取り出して優衣佳さんに手渡した。


「さっき大きいの見たからこれはコンパクトに見えるわね・・・翔子さん、いいかしら?」

「もちろん」

「ありがとう。それじゃあ開けさせてもらうわね」


 そう言って取り出したものは木目のあしらわれたブックカバーだった。彼女はそれをマジマジと見つめたり手触りを確かめたりしている。


「驚いたわ・・・これ、木で出来ているのね・・・嬉しいわ、ありがとう。これからこのカバーをして読もことにするわね」

「ん。良かった・・・・それじゃあ、次、雫」

「え!?元会長さん簡潔過ぎませんか!?」


 翔子さんは渡した後出番とばかりに雫背中を押して優衣佳さんの前に立たせる。雫は慌ててカバンから取り出した後優衣佳さんの前に立つ。


「それじゃあ、恐縮ですが私からも贈り物を!どうぞ!優衣佳先輩!!」

「雫さん、ありがとう。会って間もないのに集まってくれたことも、お礼を言うわ」

「いえいえ!先輩方とは私としてもお近づきになりたかったですし、あんな美味しい料理を振る舞って下さりありがとうございます!」

「喜んでくれたのなら頑張って作ったかいがあったわ。それで雫さん、これ、いいかしら?」

「あ、はい!どうぞお開けください!」


 雫が渡したのは翔子さんのものよりも更に小さな小包だった。その包みから中身をゆっくり取り出す。


「あぁ、日焼け止めクリームね。夏も近いし助かったわ。そういえば雫さんは水泳部のマネージャーなのよね?ということはこのクリームは貴方も?」

「はいっ!私も炎天下で作業することもあるのですがこのクリームを塗ってからは日焼けを気にしなくなくなりました!優衣佳先輩も綺麗な肌をしてるので、きっと役に立つかなと」


 優衣佳さんも雫も、もっと言えばここの女性陣はみな綺麗な白い肌をしている。去年の雫が夏も日焼けしてなかったのはこういう見えないところでケアをしっかりしていたのだろう。


「ええ。とっても嬉しいわ。保湿機能もあるようだし、この夏はこれ一本でいいかも知れないわね」

「良かったです。喜んでもらえて!お互い夏も頑張りましょうね!」

「ただいま~。あれ?雫ちゃんと翔子ちゃんは何あげたの~?」


 優衣佳さんと雫で励まし合ってるところで優愛さんが戻ってきた。


「お帰り、優愛さん。翔子さんはブックカバーに雫は日焼け止めクリームを渡したところだよ」

「お姉ちゃんも喜んでるみたいだし、二人ともいいもの選んだんだね。雫ちゃん!あとでそのクリームについて教えてもらってもいいかな!?」

「あ、はいっ!もちろんです!」


 優愛さんも、見えない努力をしてるんだな・・・ダイエット関係に関しては聞く限り何もしていないようだけど。

 そう思ってたら後ろから翔子さんが俺に近づいてくる。


「女の子は、好きな人に見てもらおうと、自分を磨いてる。もちろん、私も」

「うん・・・そっか・・・・・・」


 その言葉に俺は気の利いた言葉は何一つ思い浮かばない。


「そういう時は、頭をなでてあげると、喜ぶ」


 俺の心を読むかのようにに翔子さんは更に口を開く。


「でも、ただの誤魔化しじゃ・・・?」

「ん。でも、それが最高のご褒美。だから、早く」


 そう言って俺の手を自分の頭に乗せる翔子さん。なるほど、これに持って行きたかったのかと、俺もそれに従って撫で始める。


「ふゆぅ・・・・・・・・・ん、満足」


 撫でたのはほんの一瞬だった。すぐさま翔子さんは俺の背中に手をやり優衣佳さんのもとへと押し込んでいく。


「さっきやったように、今度は優衣佳にも」


 そう言って押し終わったあと自分の椅子に戻って我関せずの状態になる。

 あぁ、勇気づけてくれたんだな。俺は優衣佳さんへと向き直った。


「優衣佳さん、誕生日おめでとう。前の3人に比べたら見劣りしちゃうかもだけど・・・どうぞ開けてみて」


 カバンから取り出した小さな包みを渡す。大きさとしては雫より少し大きいくらいだ。


「あ、ありがとう・・・・・・・これは・・・小瓶?オイルって書いてあるけれど」

「うん。全身にも使えるけど、ヘアオイルだよ。優衣佳さんのその綺麗な黒髪、手入れが大変だろうと思って」


 そう言いながら先程翔子さんに教わったように優衣佳さんの綺麗な髪をそっと撫でる。すると彼女は最初は最初はボーッとした様子だったがだんだんと顔に赤みが増していく。


「えっ・・・あっ・・・その・・・ありが・・・・・・嬉しい・・・・わ」

「あっ、いきなりごめんね。すぐどけるよ」


 パニックになっている優衣佳を見て俺は手を戻そうとしたが驚きの速さでその手が掴まれる。


「まって・・・・もっと、続けて・・・」

「わかった・・・」


「慎也くん。私のこの髪、どう?」

「髪・・・?凄く綺麗な黒髪で、手入れに力入れてるんだなってことがわかって俺は大好きだよ。ってごめんね。髪撫でながら褒めるって気持ち悪く無いかな?」

「そんなことないわ!その、良ければもっと近づいても、いいかしら?」

「う、うん・・・・・・」

「・・・・・・・えへへぇ・・・・・・・」


 彼女はそう言って俺の胸元に頭をくっつける。俺はその間も髪をゆっくりと撫で続けた。


「はぅ・・・・・・えへへぇ・・・・」

「は~い!!そこまで~~~!!!」


 突然肩が掴まれ優衣佳さんとの距離が空く。優愛さんだった。


「優愛!?一体何!?」

「それ以上はキリが無くなるから止めました!お姉ちゃんも小瓶を抱きしめて可愛・・・キャラ崩壊してたよ!」

「それは・・・そうね。慎也君、本当にありがとう。大事に使わせてもらうわ」

「うん。喜んでもらえたなら何よりだよ」

「それと、誕生日にかこつけてもう一つお願いがあるのだけれど」

「え?うん。なにかな?」


 優衣佳さんは一つ前置きをして顔を俺の耳元に近づける。


「明日、前に言ってた慎也君オススメのコーヒー店に連れて行ってほしいの」

「へ?別にそれくらいお願いされるほどもないけれど・・・・・・明日ならみんなでかな?」


 俺がそれを聞いたところで手で制される。俺と優衣佳さん自身を指差した後、その指を自分の口元へ持っていき、俺にしか見えない角度で今日一番の笑顔を見せた。


「それではプレゼント渡しも終わったことですし、人生ゲームを用意しました!みんなでやりましょ~!」


 優衣佳さんの掛け声にみんな集まっていく。優衣佳さんも俺に一つウインクして優衣佳さんの元へ歩いていった―――――――

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