012.再びの邂逅
「いやぁ、やっぱり占い一位だっただけはあるね!おかげで慎也くんと同じクラスみたいだよ!」
俺に鞄を当てた少女・・・優愛さんが嬉しそうにしている。
「何言ってるの。優愛は最下位だったでしょ」
「えへへ。そうでした・・・一位はお姉ちゃんだったね」
後ろから姉である優衣佳さんが現れる。
二人は膝下まである深い紺色のスカートに、上部は白色と紺色を基調としたセーラー服・・・つまり我が校の制服を身に纏い立っていた。
優衣佳さんは委員長や生徒会長を彷彿とさせる凛々しさが溢れ出しており、優愛さんは綺麗な髪色と紺色の襟が綺麗にマッチして、いかにも元気な子という印象が見て取れる。佳人にはどんな服装を着せても似合うというのは本当のようだ。
二人がここに居るということはもしかして・・・・・・
か・・・・・か・・・・あった!川瀬!
俺は扉に向き直り名簿をくまなく見る。そこには『川瀬(愛)』と『川瀬(衣)』の文字が。
「おはよう二人とも。科学コース受けていたんだね。」
平静を装って挨拶をする。行くとしても教養コースだと踏んでいたがまさか科学コースだとは。
「私はどこでも良かったんだけど、お姉ちゃんがここじゃないと嫌だって」
「なっ・・・・・・!たしかに最初は私が言い出したけどその後は優愛のほうが乗り気だったじゃない!」
「ここなら地毛でさえ証明できれば髪の色とやかく言われないんだから当然じゃない!」
二人はその場で言い争いを始めてしまった。
まだ俺たちは名簿前から一歩も歩いていない。つまり扉を塞いで周りから白い目で見られている状況に気がついた。
「言い争いはここじゃ邪魔になるからせめて教室でね」
二人とも扉前だと言うことをすっかり忘れていたのだろう。気づいたとたん小さくなってしまった。
そんな二人を連れ、更に忘れていた智也も連れ教室に入る。
教室には七割ほど席が埋まっていた。黒板には何も書かれていないがみんな出席番号順に座っている。たしかに一番問題の起きにくい座り方だろう。
自身の机に荷物を置くと真っ先に智也が近づいてくる。
「あの美人姉妹は内進生じゃなかったよな。小学の友達か?」
「いや、ちょっと前に会っただけだ。・・・それよりも美人って言ってたこと彼女さんに伝えておくからな?」
彼女さんの連絡先どころか顔も名前も知らないけど。
「・・・・・・まぁ、慎也にも春が来たってことか」
「ちがっ・・・・・・・・!」
否定しようとしたところで席に戻っていってしまう。
智也は色々と目ざといが聞くだけ聞いて、俺から話そうとしないことはちっとも深堀りしない。その潔さが心地よくって今まで仲良くしてこれたんだと思う。その癖困ったときには助けてくれるから本当にチートじゃないかと。なおその時はツンデレが加速するが。
「美人姉妹なんて嬉しいこと言ってくれるわね。慎也君もそう思う?」
席に着いたところで智也と入れ替わるように件の二人がやってきて優衣佳さんが問いかける。
「世間一般的にはそうなんじゃないかな?」
「世間一般よりも、慎也君の感性はどう思ってるのかしら?」
優衣佳さんのイタズラな笑み・・・これは逃げられないか・・・・・・・・
素直にゆっくり首を縦に振る。するといつもの柔和な笑みに戻った。なんとか許されたようだ。
「当然だけど私達知ってる人いないからさ。ちょっとだけ力借りたいんだけど、いいかな?」
優愛さんは自身の目の前で手を合わせてお願いしてくる。
周りを見渡すと、たしかに大半居る内進生は固まっていて、外進生にとって居辛そうなのが見て取れる。
「それくらい全然いいよ。じゃあ最初は・・・」
適当に人を探そうとしたところでチャイムが鳴る。
「ごめん。これから入学式だからまた放課後でいいかな?」
「ううん。いいよ。ありがとっ!またあとでね!」
そう二人は踵を返していった。
さて、最初が肝心だ。誰を紹介するか―――――――
 




