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秘密  作者: 宵雨咲 美乃


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CASE2 スピリチュアル

 人はなぜ占いを信じてしまうのでしょう。もちろん占いを否定しているわけではありません。しかしながら、全てを占いと結びつけ運命や占いなどといったもののせいにするのはお門違いと言うものです。信じたのは自分であるということから目をそらしてはいけませんよ。


「10月15日の午後2時から1時間コースで予約が入りましたのでこちらに目を通しておいてください。」

そう言ってバインダーを作業机に置くのは秘密の館で受付を担当してくれている広報担当の廣波(ひろなみ)さんだった。彼女は広報の中でもSNSを担当しており、秘密の館の予約管理や予約完了メッセージの送信の他、本業の方での広報活動の一環で会社のアカウント運営なども担当している。そしてこのように秘密の館の予約が入った場合は予約者のニックネームや予約完了時に送信したメッセージの内容等、予約時のやり取りを印刷しホッチキスで留め、バインダーに挟んで私の机まで届けてくれる。情報を守るためにも極力アナログな方法をとるのがここでのルールだ。デジタル管理はこの情報化社会において便利な一面を持ちながら添付資料のファイル形式を確認せずに開くと命取りになるなど情報管理においてはまだまだ十分だとは言えない。対策を練りに練った結果がこのアナログでの管理だった。利用者の情報はできるだけこちらも把握しないそれがこの会社の個人情報管理対策の結果だった。個人情報を知らなければ個人情報が漏れることもない。従業員の個人情報もできるだけ本人で管理し、普段は本名とは別の名前を入社時に自分で付けてもらう方針でこの会社は少しずつ大きくなっていった。電話応対でのストレスが減ったとか、売り場での対応のストレスが少しだけ緩和されたとか、働きやすい環境に少しだけ近づけたようで離職率も低い値で推移していた。


 10月15日午後2時10分、来客を知らせる鈴が響く。少しして電話が鳴った。一連のやり取りを終え、案内役が彼女を連れてきたのは午後2時20分頃だった。彼女はスピさんというニックネームで予約をしていた。今日は何という名で行こうか。

「私はルーラと申します。本日はお越しいただきありがとうございます。あなたの秘密をお教えください。」

「スピと申します。秘密はスピリチュアルです。」

「スピリチュアルというと神社や占いやお寺などですか?」

「ええ、主に神社や占いにお金を使いすぎてしまうのでどうしたら良いものかと...」

「神仏や占いが悪いものとは思いません。現に私も願掛けに神社に行ったりしますし、その際おみくじを引いたりもします。様々な悩み事を抱えその悩みに沿った神社にお参りしますよね。例えば好きな人がいるけれど告白する勇気がない。でもその想い人と恋人になりたいという人がいたとして恋愛成就祈願の願掛けに神社に行くとして、スピさんはどのような神社に参拝されてるんですか?」

「そうですね...私は縁結びの神社や、開運、金運などの神社に行くことが多いです。」

「占いも、恋愛や金運や開運といったものを占ってもらうんですか?」

「ええ...」

「でもおかしいですね。あなたは神社や占いお金を使いすぎてしまうことが悩みであると先いほど仰ってましたが、占いが主な出費でその占いの殆どは恋愛なのではないでしょうか」

「どうしてわかるのですか?」

「きっと無料部分で開示されているものが10あったとしてそのうち1つが当てはまっていると感じて課金で開示される情報が気になり、いつの間にかその課金額が多くなってしまって困っているというのがスピさんの秘密なのでは?」

「実はそうなのです。でも止めたくても止められないのです。」

「占いを信じている人に対して酷ともいえる話をしますが、占いを否定するわけではないことを承知で聞いていただけると幸いです。私も占いは好きな方です。しかし、ある日気付いてしまったのです。私の誕生日で占ってもらった結果が私にとって良い結果であるならば、想い人の誕生日で占った結果はどうなのだろうと思ってしまったのです。想い人の誕生日で占った結果はどうだったと思いますか?」

「わかりません...。悪い結果だったのですか?」

「私の誕生日で占った結果と一言一句一緒だったのです。その後も適当に生年月日の情報を変え結果を確認しましたが、全て同じだったのです。そこから占いは信じられなくなりました。科学的根拠もありませんし、当てはまっていると思っているものも確証バイアスが働いていた結果だったということも。実際、当てはまっていないことの方が多かったのですが、当てはまっていると思ってしまっていたのです。といったところで、スピさんが課金をすぐに止められるとも思いません。」

「確証バイアスってなんですか?」

「確証バイアスは例えば占いにおいて、自分に都合の良い結果だったとして、その占いの殆どが外れていても、少しでも当てはまっている部分があると外れている部分を無視してしまい、人は当たっていると結論付けてしまうのですよ。そういうものを確証バイアスというのです。自分に都合の良いものは当たっていると思いたいもので、当たっているものを記憶からピックアップします。無視されている部分が多いことに焦点を当てないようにしてしまうんです。物事を多方面から見てみてください。美しいものに潜んでいる醜いものからも目をそらしてしまわないように。ちゃんと全部見てみてください」

と言い終えたところで時間がやってきたようで、案内係が

「お時間です」

とスピさんを迎えに来た。

「スピさんが決めて歩む未来はどんなに険しくても明るいですよ。」

そこで相談は終わった。

今日も上手くできただろうか。

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