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君だけだった〜今も君の歌を探している〜短編集  作者: Wataru


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7/7

D-SOUNDS 1/2②

スタジオへ戻る。


リハーサルの続きが始まる。


玲は、もう考えないことにした。


本当は。


哲也の歌声を何度聴いても、どこか納得できなかった。


でも。


秀治に言われた言葉が頭を離れない。


『奏の声探してるんだろ』


違う。


違う。


――コイツは、奏じゃない。


演奏をしながら。


玲は何度も自分に言い聞かせた。


数分の曲が、やけに長く感じる。


頭の中では。


気づけば奏の歌声ばかりが流れていた。


(……会いたい)


その想いだけは、どうしても消えなかった。



無事にリハーサルが終わる。


「お先に失礼します」


代役の二人が頭を下げてスタジオを出ていく。


「お疲れー」


楽器を片付けながら、秀治と玲は二人を見送った。


しばらく無言だった。


「……哲也の声、よかったっしょ?」


「……まあ」


秀治が苦笑いする。


「納得してねーな?」


「……してる」


「嘘つけ」


玲は黙った。


「哲也、別に悪くねぇじゃん」


しばらく黙っていた玲が、小さく口を開く。


「……なんか妙に、奏に会いたくなって」


少しだけ笑う。


「変かな?」


秀治はドラムスティックをケースへしまいながら答えた。


「俺もさ」


玲が顔を上げる。


「たまに思うよ」


「ここ、奏ならこう歌うなって」


玲は少し驚いた。


「……お前も?」


「当たり前じゃん」


秀治は笑う。


「五年も一緒にやってきたんだぞ」


「比べることくらいある」


玲は少しだけ安心したように息を吐く。


「……だよな」


「でもさ」


秀治の表情が少し真面目になる。


「俺は会いたいとは思わねぇ」


玲の動きが止まる。


「……え?」


「今は今だから」


秀治は機材バッグを肩に掛けた。


「奏とやってた時間は大事だよ」


「でも、もう終わったことだし」


「思い出すことはあっても、会いたいとは思わねぇな」


玲は何も言えなかった。


秀治は玲を見た。


「お前は違うみたいだけど」


「……」


玲は答えられない。


会いたい。


さっきから頭の中にあるのは、その気持ちだけだった。


秀治はそれ以上聞かなかった。


「じゃ、お先」


軽く手を上げてスタジオを出ていく。


ドアが閉まる。


静まり返ったスタジオ。


玲はケースを持ったまま立ち尽くしていた。


(俺だけ……?)


秀治も奏と比べている。


それでも。


会いたいとは思わない。


なのに俺は。


会いたい。


声が聞きたい。


もう一度、一緒に音を鳴らしたい。


それだけじゃない。


顔が見たい。


笑ってほしい。


くだらない話をして。


また隣で笑っていてほしい。


玲はゆっくり目を閉じた。


「……なんなんだよ」


自分でも分からなかった。


どうして、こんなにも会いたいのか。


その呟きは、誰もいないスタジオに静かに溶けていった。

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