5.冗談はおっぱいだけにして
「あなたは神になりました」
「……は!? ちょっちょっちょっちょっと待って、俺そんな高尚な人間じゃねーし、崇められるような人間じゃないよ!そんなもんになろうなんて考えたこともないし、何より俺は無神論者だからね!!
頼むから冗談はおっぱいだけにしておいてくれよ」
もう何言っちゃってんの?このおっぱい。
おっぱいは自身の胸を一瞥しや後、その顔に怪しい笑みをたたえながら口を開く。
「開き直って聞く気になってたのではないのかしら?」
「いやいやいやいやいやいや……ものには限度ってもんがあるでしょう」
目が笑ってない、怪しい笑みから怖い笑みに替わった気がする。おっぱいは嘆息し話を続ける。
「早とちりしちゃ駄目よ、もうせっかちなんだから。
あなたの住んでいた国には、八百萬の神々とか沢山の神が居るって話もあるじゃないの。神といっても一括りにしてるだけで、実際はいろいろあるのよ。
それに、物が長い年月を経ると魂が宿るとかいうお話もあったでしょう?」
確かに、八百萬の神々に関しては日本書紀だったか何だかを学校で習ったような覚えがある。付喪神に至っては昔話とかでよく聞く妖怪談だ。
うん、物凄い親近感が湧くな付喪神って。あれ?なんだか落ち着いちゃったよ。
「あなたは神になりました。OK?」
「……」
「いいわね? あなたはもう神になってしまったのよ」
おっぱいは怖い笑顔のまま、強引に話を続けたいらしい。怖い怖い怖い。
「それでね、神と一概にいっても色々いるのよ。
あなたに分かりやすいのは、宗教上の神かしら。一般的に扱われる神様ってやつね」
宗教上の神様っていうと、世界的に信仰されてる○○教とか△△教とかってのだろう。
「一般的にってこては、俺の場合そこには該当しないんでしょう?」
「そう、あなたと私は例外。あなたは祀って欲しいかったりするの?」
俺はプルプルプルと高速で首を横に振る、本当に冗談はおっぱいだけにしてほしい。
「でもって、例外ってどういうこと?」
「信仰されなくても存在できるってことかしら。要するに、勝手気ままに暮らせるのよ」
勝手気ままにって、真面目に聞いてた俺が馬鹿みたいだ。今まで畏まって聞いてたけど、テーブル頬杖をつく。
おっぱいの怖い顔が優しい笑顔に変わった気がした。
「現状は理解出来たかしら」
「物凄く触りのところしか話して無いよね……?」
「細かいことは話しても理解出来ないでしょう? だから少しずつで良いのよ、時間はたっぷりある訳だしね。
それにあなたは、自身がどういった神なのかを理解しないといけないわ」
「どんなって、そんなの俺の方が訊きたいよ…」
苦虫を噛み潰したような顔をしたのだろう、おっぱいは言う。
「そんな顔しないの。聴いてみたらいいじゃない?あなたの周りに、あなたに集まってくる『それ』に」
そんなことを言いながら俺の体の左右を指さす、俺は指の先を追い首を周囲に巡らせてみる、なんだろう微妙に歪んでる?
「ナニコレ?」首を捻り心底不思議に思う。
「『それ』があなたの在り方に最も近いヒントだと思うわよ」
何言ってるのかさっぱり分からない言葉に戸惑いながらも、優しく微笑むおっぱいに癒された。
「さあ、今日はもう遅いから休みましょうね」
その言葉を最後に今日のお話は終わり、いつの間にか傍に居たリタちゃんに客室へ案内してもらうことになった。
俺、神になったらしい




