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あの人に死を  作者: 月見うどん
第3章 おっさん覚醒する
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41.ソフィーとの縁

「先ぱい、悪いんだけどお豊をちょっと預かってくれ」

「そう、わかったわ」

「ソフィーいくぞ」

 ソフィーを連れて俺の部屋に転移した、話をしなければならない。



「よ!俺、元気でやってたか?」

 返答など無いのだが自分の肉体に声を掛けた、懐かしいからな。



 応接用に置いてあるソファにソフィーと対面になるように座る。

「それじゃあ、話そうか」

「はい」

「お前がいつから俺を見ていたのか知らんが、ずっと監視していたのだろうな。

 ならば、俺が言いたいことを理解出来ているのだろう?」


 ソフィーは暫し沈黙した後、口を開く。

「愚かなことをしたのだと、仰りたいのでしょう」

 この娘は俺の思考をトレース出来るのだろう、一体いつから監視していたのか?

「その通りだ。だが、それは俺の責任だ」

「それは違います!決してあなたの責任ではありません。

 祖母にも諦めなさいと諭されましたが、私は断固として聞き入れませんでした。私が決めたのです」

「それでも俺の責任なんだよ。俺があそこに行かなければ、話をしなければ、こうはならなかったはずだ」

 うすうす感付いてはいたが、この娘頑固だな。


「責任の所在についてはもういい。それでお前の望みは何だ?ただ傍に居るだけで満足なのか」

 彼女が答えるまで待つ。


「……わ、私の望みは、あなたのお嫁さんになることです」

 耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにしている。

 やっぱりそう来たか、大体分かっていたが彼女に云わせた。卑怯な手口ではある。

「理由は?」

 聞かなくても分かるが、一応な。

「…一目惚れです」

 スケスケの東洋人に一目惚れする意味が若干どころか、かなり不明なのだが…。


 しかし、どうしたものか…俺も別にそこまで頑なに再婚したくない!と思っている訳ではない。

 寧ろ彼女は性格から容姿を含めて好みではある。はっきり言ってドストライクだ、あのキツイ目なんか最高だ!俺は、昔っからキツイ性格の女の子が大好きなのだ。

 もっと違う方向で責任を果たそうと思っていたのだが……、俺はいつ光源氏になったんだ?

 彼女は静かに答えを待っている。


 俺は右手の中に指輪を生成する、とても地味な指輪を一つだけ。

「ソフィー、左手を出せ」

 彼女の手を取り、薬指に生成した指輪を嵌める。この指輪は完全に俺の力の結晶で摩訶不思議な素材だ。

「よろしく頼む」

 されるがままに大人しくしていた彼女の目に涙が浮かんでいる、にっこりと微笑むその笑顔はとても嬉しそうだ。それがまた眩しいくらいに美しい。

「ありがとうございます、もうダメだって言っても離れませんからね」

 笑顔であたふたする彼女をただ見つめることしか出来ない、触れることも、抱き締めることのできないこの身を悔やむ。 




 お嫁さん発言で強引に方向転換された気もする、本当はもっと真剣な話をするつもりだったのだが…。

 上げて落とすような話の振り方になってしまうが、この話はどうしてもしておきたい。

 切り出すとするか。


「ソフィー。とても大事な話がある聞いてほしい」

 彼女は対面に居たはずが、俺の横に座ってる。

「はい」

 そんな笑顔されると話し辛い。


「まずはその指輪の話だ。その指輪は俺の分体だ、距離的な制限があるだろうが、俺と常に繋がっていると思ってくれ」

 彼女は自身の指輪を凝視し、軽く撫でている。


「次に俺自身のこと。

 今日まで神になったことを受け入れたつもりだったが、結局俺は何も受け入れてなどいなかったようだ。お前の正体を知ったことで、それを明確に理解した。

 神にはなったがそこに責任の一つもない、だから甘えてたんだ。いつか夢から醒めると、いつか人間に戻れるのではないか?と、だが俺はもう決して人間には戻れないし、それ以前に生物ですらない。


 俺はそういった甘えを捨てる、やらねばならないことが出来た。

 俺はいつになるかわからないが、お前を普通の人間に戻してやる。例えその先に死が待っていようともな」


 ソフィーに伝えるべきかどうか、正直迷ったのだが伝えることにした。

 娶ることが無ければ、恐らく話さなかっただろう。この娘は察しが良いから、黙っていてもいずれ気付かれただろうが。

 何より本人に訊かないとのろいの詳細が不明だ。保険として分体を指輪型にしてみたが、どこまで探れるか…。


 彼女はじっと俺を見つめている、次の発言を待っているかのようだ。

「最後にソフィーに質問だ。その呪いはどういうものだ? 教えてもらいたい」

 この質問こそ、俺が最も話しておきたかったことだ。


「祖母の話では、先祖代々森の管理と共に幾つかの術式を守って来たのだそうです。

 あの家には頑強な地下室がありました、そこには幾つかの書物があり術式が記載されて、その詳細もまた記されていました。

 ただこの『原点回帰の術式』に関しての書物は無く『不老不死の呪い』であるという紙片のみが存在しており他に詳細も何もわからない物でした」


「よくそんな危険なものを使う気になったな?」


「恋は盲目と云うではありませんか、可能性があるなら賭けてみたいと思ったのです」

 目が真剣だから変なことは言えんな。

「書物がないとはいえ、千年も経過しているんだ何かあるだろ?」


「はい、術式の構成等は不明ですが、どのように作用するのかはわかりました。

 私は二十三から二十八まで歳をとります。正確には二十八歳になると同時に『原点回帰の術式』が作用し二十三歳に戻ります。五年周期で年齢がリセットされるのです。

 また、五年周期の間に起きる肉体の欠損等は即座に治癒し修復されました。

 最初に術式を起動した二十三歳の頃の肉体を記憶していて、何らかの異常があればその記憶に戻るといった具合でしょうか」


「随分とまた便利な代物だな、まあそれだけ分かれば十分だ」

 恐らくなのだが、微塵に吹き飛ばしても再生するのでないだろうか?新婚の嫁を木っ端みじんに吹き飛ばすとかどんなDVなんだよ。やらないよ。


 想像以上に厄介な代物だな、これは知恵を借りるしかないか…。

読んでくれて、ありがとうございます。


今回から1日1話の投稿になります。

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